マガジンのカバー画像

めくるめく季節の淡夢

12
2023年月1連載小説。 BOOTH、文学フリマ京都7にて販売した小説カレンダーに書かれた短文を元に書きました。月が落ちてきた世界で、唯一の光だった彼女を探す少年の話。
運営しているクリエイター

#10月

【小説】明日君と約束をした偽りの夢

前話  月の遺産とは、その文字の通り、月の残した財産。  それは人類からすればとんでもないものらしく、手に入れれば富も名誉も金も、何でも手に入るらしい。世紀の大発見、と月の遺産のことを教えてくれた彼女が言っていた。 「イオリ、ちゃんと朝ご飯を食べないといけないと教わらなかったか? 私は知っている、セナセの人間は一日に三回食料を蓄えて活動エネルギーを補充しているんだろう。それをしないと体が動かなくなって、死んでしまう」  僕の後ろで饒舌に話す彼女をよそに、ネクタイを結ぶ