マガジンのカバー画像

めくるめく季節の淡夢

12
2023年月1連載小説。 BOOTH、文学フリマ京都7にて販売した小説カレンダーに書かれた短文を元に書きました。月が落ちてきた世界で、唯一の光だった彼女を探す少年の話。
運営しているクリエイター

2023年12月の記事一覧

【小説】月の告白に耳を背けて目を覚ます

前話  落ちてきた月が破壊した土地の大きさはどれくらいなのだろう。白月症を恐れた人々が寄り付かなくなったため、その大きさは測られていない。いくつもの街を破壊したのだから並大抵のものではないだろう。平らな命の砂漠はどこまでも続いているように感じられるが、彼女と歩いていればその時間はあっという間に過ぎた。 「イオリが行きたい場所ってどこ?」  隣を歩く彼女の方を見て、彼女は僕よりいくつも背が低いことに気づいた。 「どこだと思う?」  すんなりと答えると思っていたのか、彼女は顔