【小説】灰に祈りを込めて眠る
前話
この湖では雨が降らないと知った。だから彼女に雨の話をしてもきょとんとするし、そもそも雨を見たことないと言うのだ。
「それって、君の力だったりするの? 君の回りでは絶対に雨が降らない、とか」
えー? と少し馬鹿にするような声をあげたが、すぐに表情を変えて、どこか納得したように、あー、と言って言葉を続けた。
「そういうのがあったりするのかな。月で雨が降らないのは、私たちにそういう力があるからなのかもしれない」
考えたことなかった、とこぼす。興味が出てきたのか、顎に指