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ささなか読書日記 vol.2『夜のだれかの玩具箱』

 前回感想を載せたあさのあつこさん『朝のこどもの玩具箱』と対になっているもう一作です。前回の作品では「心」が一貫して根底にあると言いましたが、今回は「色」がよりいっそう鮮やかに浮かんでくる短編集でした。『夜のだれかの玩具箱』とはいえ決してどんよりと暗い色彩ではなく(そういう作品もありましたが)、濃い色だったと思います。もちろん前作にも色彩はありましたが、淡く暖かい色味でした。今回の作品はそれとは違います。暗かったり、明るかったり、くすんでいたり、鮮やかだったり。ただ、どれもくっきりと濃い。赤、青、黒、紫、白……。ときに優しく、ときに猛々しく、でもそこにしっかりと存在している。そんな色たちが見えました。

 それから、これは二冊通して気づいたことなのですが、「生死」は一貫したテーマであるように思います。どちらの本も生と死、両を描いていますが、『朝のこどもの玩具箱』では生に、『夜のだれかの玩具箱』では死に、フォーカスして書かれていました。前を向いて生きていくための、強い決意の現れた生。穏やかな、恐ろしい、甘美な、死。「生」にはどれも力強さを感じた一方で、「死」には色々な顔がありました。皆さんにもぜひ読んで、それを感じていただきたいと思っております。

 こういった、はっきり見える色彩はあさのさんの大きな特徴だと思います。まるで自分もそこにいるかのように感じられるのです。私の考えるあさのさんの魅力はまたの機会にお話しさせていただこうと思いますが。私の拙い感想文で、少しでも魅力を感じていただけると嬉しいです。

 ではまた。Пока!

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