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ささなか読書日記 Vol.3『不如帰』

 Vol.2から随分と空いてしまいました。おはようございます、こんにちは、こんばんは。桜々中雪生です。

 さて、今回は徳冨蘆花『不如帰』の読了日記です。いやー、長かった! といっても小説自体は短いのです。200頁ほどの文庫本ですから。明治時代の小説ということもあり、言い回しや言葉が現代の小説とはかなり異なっていて、中身を理解しながら進めるのに時間がかかってしまったのです。今まで明治の文学に触れてこなかった私には、些か難解でした。特に、作品に入り込むことが。

 とはいえ、物語が進むにつれてのめり込むようになり、しまいにゃ泣いておりました。そう。悲しい物語なのです、『不如帰』は。これ、「ほととぎす」という名で有名ですが、本人は「ふじょき」と呼んでいたそうですね。日清戦争さなかの、川島武男と片岡浪子の悲恋の物語です。

 ネタバレになってしまうので明言は避けますが、二人は戦争という避けられない運命と、様々な人物の思惑によって引き離されてしまいます。それは二人だけの力では抗いようのないほど大きな力で、彼らのやるせなさやチリチリと胸が焼けるように互いを焦がれる思いが、か細く引き攣れて伝わり、私も苦しくなりました。

 結核に罹ってしまった浪子。徴兵される武男。戦争というものが二人を直接引き裂いたわけではないけれども、それでもこの戦いがなければ、武男は浪子をみすみす遠くへなど行かせなかっただろうにと思うと、戦争とは何と惨いものなのだろう、と考えずにはいられませんでした。

 状況の残酷さに加えて、繊細な筆致で描かれた情景描写が浪子や武男の心情、状態を物語っていて、美しさとともに儚さを感じさせられました。

 もっと歳をくって、人生の酸いも甘いももっと経験した後ならば、また違う感じ方をできそうなので、少し寝かせて、また読んでみようと思います。

 興味のある方、是非読んでみてください。

 ではまた。Пока!

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