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2021/9/14 紛失したピック復活

ボクは7/13〜9/8までオリンピック、パラリンピック関係の仕事をしていました。

仕事の内容はと言うと、選手村で選手やスタッフが毎日実施しなければいけない抗原検査のための検体を受け取り、集まった検体を検査するラボに送るというものでした。

7/13 ボクは正直度肝を抜かれました。

選手村のブースで検体を待っていたのですが、

ある国の人「Hello! pick up!…」

ボク「!!…え?あー、英語ですねぇ。」

仕事を受けた時は、
派遣会社の方「英語はできなくても大丈夫ですよ。」
と案内を受けていたのですが、ガッツリと英語を使うじゃありませんか。

むむぅ。どうしたものか。

僕が困っていると、
女性「OK. Please write this paper. How many days will you stay?」ペラペーラ ペラペーラ

ボク「!!」

助けてくれたのは、ある会社から出向で来ていた女性の方でした。

ボク(天使やん)

よく見ると、隣のブースもその隣も、ペラペーラな女性がたくさん。しかも、みんなめちゃくちゃ美人。

ボク(ピンチすぎて気を失って夢でも見てるのかな。)
とりあえず、ベタにほっぺたをつねってみましたが痛かったので大丈夫そう。

ボク(…なんかよく分からんけど、助かったぁ。それにしても…英語ペラペーラな美人さんだらけのこの職場はいったい…英語ペラペーラ美人祭り…オリンピック特別企画!英語ペラペーラ美人祭り開催中なのか!?)

不思議に思ったボクは、同じ派遣会社のKさんにそれとなく聞いてみたところ、
Kさん「キャビンアテンダントの方たちらしいですよ。」
ボク「英語ペラペーラ美人祭り開催中ってこと?」
Kさん「…はい。」
ボク「…ありがとうございます。」

説明しよう。
キャビンアテンダントとは、飛行機的なものが空を飛ぶときに、鉄の塊が空を飛んでいるという不安を取り除き、(この天使になら命を預けても良い)と思わせる職業の方です。【諸説あります】

ボクは全く英語が出来ないので、英語ペラペーラな彼女たちに受付の仕事を任せて、検体の受け取りと出荷の作業に専念することにしました。

それからというもの、毎日の仕事が楽しくて仕方ありませんでした。
それまでネイティブの英語に触れたことが無かったので、間近で英語の会話を見れるだけで得した気分。
しかも、空いた時間では彼女たちとお話ができる。
もうずっとオリンピック続けば良いのに。

彼女たちの仕事ぶりといったら、英語ペラペーラなだけじゃ無く、親切丁寧。
礼儀正しくて所作が綺麗。
もっとこうした方が。といった提案もできる。
みんな仕事出来るなぁ。
きっと研修とかしっかりされていて、教育が行き届いているんだなぁ。と感心させられてばかりでした。

そんな中、一番仲良くしてくれたのが大阪出身のTさん。
Tさんは、おすすめの食べ物を教えてくれたり、どこの国は治安が悪いから気をつけた方が良いと教えてくれたり、ボクがやっているバンドkeepwalkingのMV観てくれたりして、たくさんコミュニケーションとってくれました。

あっという間に時は経って9月になり、

ボク(9月8日までかぁ。あっという間だなぁ。)

と感傷に浸り、シフト表をパッと見たら。

ん?Tさんが9月7日迄しか居ないぞ。
しかも、ボクは9月7日が休みじゃないか!
ということは9月6日がTさんに会える最後の日だからぁ、ど、どうしよ。
何か渡したいけど、何もないな。
ボクのこと忘れてほしくないんだけど…。

英語デキナーイおじさん、見苦しくパニック状態。
でも、パニック状態と知られたらカッコ悪いので、全然焦ってないフリしてる状態。

そして…9月6日を迎える…

ボクはTさんに自分のことを忘れてほしく無かったので、前日の夜にベースを弾くのに使っていたピックにkeepwalkingと書いた…が、収まりが悪かったのでなんとか洗って消してから、平仮名でボクのアーティスト名「のりたま」と書いてズボンのポケットに入れました。

Tさんが、ボクのピックなんか欲しいとは思わないんだけど、自己満足のためというのが正直なところでした。

9月6日は運悪く、ボクはTさんとは違うブースでお仕事。
無常にも時間は過ぎて、その日の仕事が終わりました。

ボク(まさか、お礼も言えずに終わるのか。)

Tさん「サコウさん。今日でお会いできるのが最後ですね。」

ボク(話しかけてくれましたよー!やったよー!)
平成を取り戻した感じで

ボク「あ、そうなんですね。寂しいですね。ボクのこと忘れないでくださいよ!」

Tさん「私は忘れません。これからはYouTubeとかで一方的に観てますからね。頑張ってくださいね。」

ボク「ほんとですか!ありがとうございます!」
(ここでピックを渡すんだ!)
ん?なんか視線を感じる…。

ボクらを見ていたのは、派遣で来ていたNさんとKさん。なんかヒソヒソと話していて、ニヤニヤしながらこっちを見ている。

ボク(なんか、渡しづらい。渡したいのに。)

結局、そのままお別れとなってしまったのでした。

ボクはいつか奇跡的に逢えた時のために、毎日持ち歩こうと決めました。
いつも持ち歩いているイヤホンケースに入れて。

9/12 妻と子供と自転車でお出かけ中に、

ボク「あれ!?ボクのイヤホンケースが無い!Tさんに渡したいピックを入れてるのに!」

妻「え!?そんな大事なものが無くなったの!?探しに戻る?」

ボクは記憶を遡りました。
鞄のチャックを閉めてたから、自転車漕いでて落としたなんてことはないな。
どこかに忘れてきたんだ。
まさかこの前、葛西のレンタルスペースで撮影した時か?

その日は公園で遊んで、帰ってから葛西のレンタルスペースBASEに電話で問い合わせたものの出なかったので、ホームページから問い合わせました。

もうダメかな。と諦めていた9/14。
レンタルスペースから連絡あり、保管してくれているとのこと。しかも、ボクが松戸に住んでいることを伝えると、

「今日仕事で松戸を通りますので、お持ちしますよ。」

ボク「えー!いいんですか!?」
あまりの対応の良さに感動。

(うぅ。感動や。レンタルスペースなら葛西のBASEで決まりや。みなさん、どうぞよろしくお願いしますぅ。ごひいきにぃ。)

こうしてボクがTさんに渡そうと思っていたピックが見事に復活を遂げたのでした。

ボクの尊敬する水道橋博士がよくおっしゃっていますが、
【今日は未来の予告編】
ホントにいい言葉だと思います。

今回の出来事は、いつか逢えたときの予告編だったんだと思えるように毎日を過ごしていこうと思ったのでした。

最後に、
Tさん、仲良くしてくれて本当にありがとう。
またね。

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