テニミュの世界

20年近く前、ちょっと自分自身に余裕ができて舞台を見始めたころ、友人勧められて見たのがミュージカル『テニスの王子様』とミュージカル「『テニスの王子様』Remarkable 1st Match 不動峰」のDVDだった。
一時期はどハマりした。今はそうでもないけどライブビューイングには参加し、ドリームライブはDVDを購入するというゆるいファンだ。
去年の3rdシーズンの最終本公演は、幸運なことに9年ぶりに生で観劇できた。

その後5月には3rdシーズン集大成となるドリームライブでキャストたちはテニミュを「卒業」する予定だった。
コロナ禍で中止になって、ドリームライブに代わるDVDが発売されたころ、テニミュは次のステージに上った。
ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンと、ミュージカル『新テニスの王子様』上演の発表だ。

『新テニスの王子様』は『テニスの王子様』で全国大会を終えた中学生から選抜された選手が、高校生の選抜合宿に参加する話、だと思う。
実は原作はテニプリも新テニもどれも読んでいないし、アニメも見ていない。
相変わらず前情報なく、ミュージカル「『新テニスの王子様』The First Stage」東京凱旋公演千秋楽のネット配信を、アーカイブで見た。

新テニミュがこれまでのテニミュと大きく違うのはキャスティングだ。
これまではほぼ新人の俳優がキャスティングされていた。
今回は2020年2月まで行われていたミュージカル「『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学vs立海 後編」から、切原赤也役の前田隆太朗と遠山金太郎 役の平松來馬が引き続き出演(名前のクレジットはなかったが、リリアデント蔵兎座役の新谷デイビッドも3rdシーズンに出演していたらしい)。

高校生役は鬼十次郎役岡本悠紀など、俳優としてのキャリアを積んだものが何人か出演した。
かつてテニミュに出演していた徳川カズヤ役小野健斗や入江奏多役相葉裕樹(泰江和明とWキャスト)は間違いなくこの公演の目玉だ。
さらに黒部由起夫役に村上幸平、齋藤 至役に和泉宗兵、三船入道役に岸祐二といった中堅からベテランの俳優が名を連ねる。

また、これまでにテニミュでは採用されていなかったアンサンブルの起用もあった。確実に今までと違うものが出来上がるだろうと期待は膨らむ。
この公演は本当に生で見たかった。岸祐二の歌唱を劇場でガツンと受け止めたかったし、テニミュでの相葉裕樹を見たことがないのでそれも見たかった。

見る前の思いが大きすぎた。
見た後の感想を結論から言うと、ストーリー的にはがっかりした。
岸さんのあまりにキャラクターに合い過ぎた風貌と歌唱は絶賛したいし、岡本悠紀などはぜひ生で見たいと思った。
単純に小野健斗と相葉裕樹を見ることができたという満足感もあった。
でも、テニスコーチの暴力による指導を肯定するような場面はどうしても受け入れられない。
これまでのテニミュにも大人はいたが、中学生に対して暴言を吐き暴力をふるう大人はいなかった。

もう一度言うが、原作は読んでいない。「テニミュ」の世界の話だ。私はあくまで「テニミュファン」だったんだなと、この新テニミュを見てつくづく思った。

コーチは酒に酔った状態で中高生たちにテニスの指導をし、彼らに暴力をふるい、未成年であるにも関わらず酒を買いに行かせる。
これまでも中学生なのに喫煙しているキャラクターはいた。原作の世界ではこんなシーンも違和感ないのかもしれない。
でもこちとら『テニスの王子様』のファンではなく「テニミュ」ファンなんです。
大人が中高生に暴力をふるうことは、役を演じる岸さんがどんなに素晴らしい演技を見せても受け入れられるものではない。
しかも選手はそれを乗り越えて立派になったという描き方をしているし、暴力コーチも俺の成果みたいな顔してるし、大人による中高生への人格を無視した行動を正当化してしまってる。

「テニミュ」の魅力の一つに、デビューから間もなくて、これからどんな道を進むかわからない俳優たちの熱演がある。
「新テニミュ」は新人俳優だけでなく場数を踏んだ俳優たちの熱量も含めて、その魅力は健在だった。
だが、そんな彼らに暴力を肯定する芝居を見せられると素直にその熱量を受け止めることができない。
所詮エンタメとして割り切るには「テニミュ」の世界が好きすぎた。
「新テニミュ」は「テニミュ」とは別物としてとらえたら、もう少し受け入れることができるだろうか。

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