2019年5月から12月までに見た舞台メモ1

青年劇場『みすてられた島』(金沢市民劇場例会)
2019年5月26日、27日観劇。
期待しすぎると、期待した方向と違うものがきたときに対応できないことがある。
『みすてられた島』はまさにそれだった。
設定が近未来なのにお茶の間や村の会合では女性がお茶を出し、座るにしても膝一つ後ろに下がり、夫は女が口を出すなと言う。
私にとって受け入れがたかった部分が気になりすぎて、後はどんなすばらしい芝居がされていたのかわからなかった。
これが昭和の話だというなら気にならなかったと思う。3月例会の『三婆』は昭和の話で、そういう時代だったんだなといろいろ納得できた。
『みすてられた島』は戦後の実際の話をモチーフにした近未来の話だと思っていたけど、もしかしたら昭和の話だったのだろうか。
それともいまだに昭和と変わっていない、いつまでもこういう世の中ですよというメッセージだったのだろうか。
今回上演するに当たって、登場する若い女性の職業を飲み屋の女将からダイビングのインストラクターに変更したらしい。変える意味はあったのだろうか。


こまつ座『化粧二題』(能登演劇堂)
2019年7月15日観劇。
前半が有森成美、後半が内野聖陽の一人芝居。
有森成美を生の舞台で見るのは2009年の『女信長』以来2回目。
舞台ど真ん中にある化粧台は、客席側に鏡があるという体をとっている。
つまり役者は客席に向かって、目の前にさも鏡があるかのように舞台化粧を造りながら話を進めていくのだ。
有森は一度だけ一瞬目を下に向けたが、後は正面を見てさらさらと流れるようにメイクをしていった。
少し暗い女性を演じるイメージを持っていたが、明るく気風のいい女性も似合う。同時に生きることに常に必死である様子が強すぎなくてちょうどよかった。


ミュージカル『レ・ミゼラブル』(大阪・梅田芸術劇場)
2019年7月20日観劇。
男性新キャストをなるべく多く見られて都合が付く日程をチョイス。
ジャンバルジャンは佐藤隆紀、ジャベールは伊礼彼方、マリウスは三浦宏規、アンジョルラスが小野田龍之介。
女性キャストにも新キャストがいたかも。
男性新キャスト陣は実力にばらつきはあったものの、2列目という神席で表情がしっかり見えた分かなり補完できた。
2007年に初めて見たレミゼは最前列だったけど、初めてすぎてよく覚えていない。
それから表情の見えるような席にめぐり合えなかったので、レミゼとはそういうものだと思っていた。
表情が見えると受け取る情報量がかなり違うという当たり前のことを再認識。
特に二宮愛のファンティーヌは表情が見えたことで彼女の切なさやつらさや悲しみがプラスアルファで伝わってきた。彼女は2列めでなくてもきっとすばらしい歌と芝居を見せてくれたと思うけど。
ちょっと心配していたマリウスの歌は2列目で見る限り他のキャストに比べて見劣りはしない。表情は思った以上によかった。三浦くんは2回目の生だったけど、一回目が2018年ミュージカル『刀剣乱舞祭』のばっちりメイクだったので、素に近い見た目の芝居は初めて。
学生のリーダー小野田アンジョは、学生であることを疑いたくなるくらい貫禄があった。そもそも新キャストには見えない。今すぐジャベールいけるよ。予想はしてたけど、思っていた以上の貫禄で見ていて面白くなってきた。小野田くんは言葉がいつもクリアに聞こえるところがとてもいい。パラジクロロベンゼンは神だった。
ジャンバルジャンの佐藤さんは2017年『キューティーブロンド』が初見で今回が2回目。佐藤さんは序盤にちょっとブレがあったが、その後持ち直してすばらしいジャンバルジャンを見せてくれた。年齢は若いのにお父さん味がある素敵な雰囲気。
そして何と言っても今回見ることができて心から良かったと思ったのが伊礼彼方のジャベール。伊礼氏は初めて生で見たのが2008年テニミュ比嘉公演。テニミュは原作のキャラクターに合っていればよくて演技力や歌のうまさはストレートに伝わってこないのでなかなか参考にならないんだけど、2014年の『Paco〜パコと魔法の絵本〜』で見た時にとても芝居が上手くて驚いた記憶がある。
満を持しての今回。ジャンバルジャンの心情がこんなにはっきり理解できたことにとても驚いた。とてもよいジャンバルジャンだった。また見る機会があったらいいなと思う。
「この子誰だかわかんないけど上手い!」って思うとたいがい昆夏美ちゃんなわけだけど、今回もまた上手い!この子誰?って思ったら昆夏美ちゃんだった。なんでいつも後で気づくんだろ。

レミゼが長くなったのでとりあえずここまで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?