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眠れるデータを活用するプライバシーテックとの付き合い方

こんにちは。LayerX CTOの松本です。社内ではPrivacyTech事業部も管掌しているのですが、最近、下記の通り正式なサービスリリースについて公開させていただきました。

具体的な取り組みなどについては下記ブログを参照ください。

本日はそのプライバシーテック、そもそも自分にとってどういった意味があるのか?など理解いただくために「眠れるデータ」の話をさせてください。

3行まとめ

・データ活用とPrivacy保護はトレードオフ関係にあり、その結果、眠れる有用なデータが多くの会社に存在。
・プライバシーテックはこのトレードオフをよりよい形で取り組むための技術。
・LayerXは、あなたの会社の眠れるデータを新たな事業や成果に結びつけるためのイネーブラーです。

データを持つ、という責任

データは現代の石油である、と言われて久しいですが、直近では多くの会社にて自社にデータをため、活用しようという動きがあります。データを活用し、例えばマーケティングや製品改善、業務改善などに生かしていくこと、そしてそれを支える様々なデータ処理製品も登場しました。

それに伴い、沢山のデータを手元に持つことになりました。そこには顧客のプロフィールから製品の動作記録、社員の作業記録やカメラの映像、センサーからの値など様々な形態、様々な要素のデータが含まれています。手元にある様々なデータを活用するためツールやパートナー企業も多々存在しています。

ですが、一方でこのデータ、眠っていることもしばしばです。それはなぜか。もちろん技術力や活用の戦略が無いなどのいわゆるデジタル化的な悩みも多いでしょう。目的や手段がなければデータは活用できません。

ただし、データを活用する手段が揃っていても課題に突き当たることがあります。これがデータに紐づく個人のプライバシー保護という壁です。どんなに役に立つデータであっても、プライバシーとそれを取り巻く法的な要件が壁で眠っているデータが多々存在します。

例えば、個人情報保護法やGDPR(欧州一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など様々な規則がデータ活用の前に壁として存在します。今後もこうした法的なルールは健全なデータ活用を実現できるよう増えることはあってもなくなることはないでしょう。

また、もっと根本的な話として、意図せぬところで個人の情報を利用し個人の生活への干渉に使うべきでないというプライバシーの基本的な考え方に立ち返る必要があります。意図せぬ利用によって、結果として顧客からの信頼を損なうケースは枚挙に暇がありません。

結果として、様々な企業において、データがあるにも関わらず、活かせていない状況があります。本記事をお読みの皆さんの会社にもセンシティブで使えないデータというのが存在するかもしれません。大量のデータがデータレイクやデータウェアハウス、その他データ保管場所に眠った状態になってしまっています。

プライバシーテックは眠れるデータを呼び覚ます

センシティブなものを含め、保有するデータを個人のプライバシーに配慮しながら活用する、この矛盾をよりよい形で向き合えるようにするのがプライバシーテックであると言えます。みなさんの手元にある眠れるデータを、安全に、かつ一人一人の権利に配慮しながら、この社会を豊かにする、新たな事業を生み出す原動力とするための技術なのです。

もちろん、これまでと変わらないレベルで完璧なデータ活用をPrivacyを保護した状態でできるわけではありません。そんな夢の技術は存在しないのではと考えております。

プライバシーテックにできる重要な貢献の一つとは、「有用性」と「プライバシー保護」の間にあるトレードオフ関係をより高いレベルで実現することだと思います。つまり、個人のプライバシーに配慮しながらも、これまでより比較的に高いレベルで活用を可能とするのがプライバシーテックです。

全てのデータが、全ての用途で使えるわけではないですが、これまでよりは様々なデータが活用できる、それによって生まれるインパクトは想像するよりも非常に大きいと考えています。

例えば、一人ひとりの治療記録など医療データを広く研究に活用できるならば、新たな治療法や薬の開発・検証が出来たり、より効率的な医療サービスの提供が可能となります。

また、過去の災害データに加えて、周辺の人流データや被災時の申告データなどを組み合わせれば災害から人々を守るためのマップが出来たりもするでしょう。

みなさんが考えている以上に、眠れるデータのインパクトは大きいものです。眠れるデータを安全に複数の企業で共有することができれば、新たな価値、新たな事業につながる可能性が生まれます。

我々にできること

このデータを安全に活用するという課題に向き合い、皆さんのデータ活用に伴走していくイネーブラーがLayerXのPrivacyTech事業部です。「たしかに手元にデータはある、でも活用の仕方がわからない、安全に使えるのかわからない」といった問に答えながら、事業価値につなげていくお手伝いをさせていただくことで、より便利に、そしてもちろんより安全なデータ活用を皆様にお届けしていきたいと考えています。

プライバシーテックはまだまだ研究途上の要素も含む新たな領域であり、認知も低い状況ですが、データが生まれ続ける世の中にあって、適切にそれを活用することは必ず必要であり、これから拡大していくであろう領域だと考えています。

差分プライバシーや合成データ、秘密計算といった様々な新しい技術要素を駆使し、社内にデータを抱える皆さんのデータ活用のあり方を変えていきたいと考えています。まだまだイメージもつかない領域だとは思いますが、少しでもデータ活用にまつわるリスクをお感じの方、ぜひご連絡ください。

仲間も募集しています

また、適切なプライバシー保護でデータ活用しながらよりよい社会を目指す、その事業に一緒に取り組んでいただける方を若干名、募集しています。全く新しい領域に取り組むということで、新たな方法を自分たちで見つけ続け、データ活用を支えていかねばなりません。そのために、

・顧客とともにデータの特性やその活用目的を理解しながら新たな事業の提案や推進を行うプロジェクトマネージャー
・データ活用とプライバシー保護を両立する技術そのものを追求するリサーチエンジニア
・データを理解し、プライバシー保護可能な新たなデータ活用を行う、またその基盤を作っていくデータ分析エンジニア

などなど、絶賛募集中です。

データサイエンスやデータ基盤の構築について、だいぶベストプラクティスも固まってきたように思いますが、プライバシー保護技術はまだまだ未踏の領域も残る新しい取り組みだと考えております。今後データという重要かつセンシティブな資産を活かせるエンジニアリングにプライバシー保護観点は欠かせないものであると考えており、次世代のデータエンジニアに必要な経験の一つとなるのではないかと考えています。

プライバシーテックに取り組める数少ないスタートアップとして、今後重要となりうる技術を身につける機会としても、ぜひご検討いただけますと幸いです。

カジュアルにmeetyでもお話しましょう。

プライバシーテックは真新しい領域でイメージがつきにくい部分もあるかと思います。今後も継続的に発信していきます。

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