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29冊目. 坂の上の雲四

四巻は日露戦争下での旅順作戦の苦悩についてが印象的だった。

「戦の指図は児玉さんに任せます。ただ、負け戦になれば私が出て指揮を取ります」と、大山巌総司令官が児玉総参謀長に告げるほど戦況は悪化していた。もっとも、その理由は乃木希典率いる第3軍司令官の旅順攻略にあった。バルチック艦隊との海上決戦に備える必要がある東郷率いる日本艦隊は露国艦隊が停泊する港を一刻も早く落としたいが、陸軍乃木希典の愚策によって計画が叶わずにいる。

「総大将の任務は、人心を統一、敵に向かって士気を高め、いささかの敗北心理を持たせないことである」と著者が言うように乃木希典という人物はこの点においては優れた人物であった。しかし、旅順の度重なる愚策はやはり日本の敗戦の色を強く帯させたと思う。

乃木の愚策の一方で日本海軍には下瀬火薬という優れた火薬を基に作られた砲弾があった。この砲弾が露国艦隊を破る驚愕されることになるのだが、この火薬が誕生するまでの話が面白かった。また、公債を募っていた日本人に対してヤコブ・シフというユダヤ人が多額の資金を提供したことも知った。当時、露国ではユダヤ人の迫害が起こっており、それに対しては国内での革命が必要と考えていたヤコブは日本の奮闘に期待して出資した。同型人種を救いたいと思う熱い気持ちには胸が打たれるものがあった。

次巻、どうなる乃木軍!!


良いなって思った文章

人間の有能無能を決めるのは神をおそれるぬしのしわざであろう。
日本の近代社会は、それ以前の農業社会から転化した。農の世界には有能無能の世知辛い価値基準はない。しかし、人間の集団には、狩猟社会といものがある。それぞれが全体の一目標の為に機能化し、組織を有効に動かす者があり、指揮者の参謀がいる。こういう社会では人間の有能無能が問われる

186

想像力はときに夢想化する

209

総大将の任務は、人心を統一、敵に向かって士気を高め、いささかの敗北心理を持たせないことである

342


度を過ぎた自尊心は病的な恐怖心の裏返しなのかもしれない

344

凡庸な連中にとっては、自由裁量権というもの程心細いものはない

389



歴史について知ったこと

昭和十年代の軍事国家としての日本は、軍閥が天皇の権威を借りて国を占領したかのような意識。

90

ロシア帝国が世界から恐れられていたことは武力。

231

言葉

  • 以下は、それぞれの言葉の意味です。

    1. 天嶮(てんけん): 非常に険しい山や場所のこと

    2. 一知半解(いちちはんかい): 物事について十分な知識や理解を持たず、一部分だけを知っている状態。

    3. 小田原評定(おだわらひょうじょう):なかなか話が決まらないこと

    4. 至愚(しぐ): 極めて愚かで賢明さや知識が欠けていること

    5. 穏当(おんとう): 物事が落ち着いていて、安定している様子

    6. 封建的(ほうけんてき): 階級や身分に基づいた支配や組織のあり方を指す

    7. 臥薪嘗胆(がしんしょうたん): 失敗や苦難を経験して、再び成功を目指す意志や努力を示します。困難を乗り越えるための忍耐や努力を表現した言葉です。

    8. 辣腕(をふるう): 厳しく強力な手段や手腕を使って物事を進めること

    9. 僭上(せんじょう): 自分の地位や立場を超えて上位の者になろうとすること

      1. 越権(えっけん): 自分の権限や職務の範囲を超えて行動すること

      2. 飄逸(ひょういつ): 自由で軽快な様子を表現する言葉であり、人柄や振る舞いを形容。優雅で気ままな態度や風格を持つこと

      3. 機智(きち): 直感的で冴えた判断力や頭の回転の速さを指す。
        物事に対して即座に適切な対応や判断を行う能力を表現します。

      4. 老獪(ろうかい): 経験豊富で、悪賢く手の内を把握していること

      5. 懐柔(かいじゅう): 相手の心を和らげたり、協力させたりするために巧みな手法を使うことを意味。相手の意思や感情をうまく操作して、好意を引き出すこと。

      6. 傲岸(ごうがん): 高慢で威張った態度や振る舞いを表現します。自分を他人よりも優れた存在と考え、人を見下すような態度を取ることを示す。

      7. 曠古(こうこ): 長い歴史の中でほとんど見られない、極めて珍しいことや非常に古いこと


  • 寡を以って衆を制す(かをもって しゅうをせいす)」 少人数で大人数に、勝利をおさめるという意味の言葉

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