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鎌倉国宝館「寳金剛寺ー密教美術の宝庫」


鎌倉国宝館12年ぶりの密教美術の企画展

12/3(日)まで開催されていた鎌倉国宝館の企画展『国府津山 寶金剛寺 ―密教美術の宝庫―』を観に行った。


これが、予想していたよりずっと面白かった。

寶金剛寺は小田原市のJR国府津駅が最寄りの真言宗の寺院。
禅宗美術を扱うことの多い鎌倉国宝館で、密教美術の企画展がお行われるのは実に12年ぶりとのこと。
その12年前の『鎌倉×密教』展も私は足を運んでいた。明王院の不動明王が表紙のかっこいい図録も持っている。
鎌倉国宝館の誕生当初から、寶金剛寺が所蔵する寺宝を通じて縁が深く、今回の企画展の実現に至ったという。

同館の過去の企画展で寶金剛寺の大日如来坐像を観たことがあった。さらには、国府津の現地にて、大日如来坐像と確か不動明王像を収蔵庫にて拝観させていただいたこともある。

そのため、おそらく何度か観た仏像を中心とした展示だろうと想像していたのだが、その予想は外れて「こんなにたくさんの貴重な寺宝を所蔵していたなんて」と驚くこととなった。

仏画「不動明王二童子像」「愛染明王像」

歴史のある寺院の寺宝を観るときにいつも思うのだが、掛け軸等の仏教絵画はやはり変色が進んでいてよく目をこらさないと何がどう描いてあるのか掴めないものが多い。

今回の展示も室町期あたりまでの掛け軸はそのような感じだったが、「不動明王二童子像」と「愛染明王像」の前で足が止まった。

この2作は一対として伝わるものだという。やはり変色により一見何が描いてあるのかわからなかったが、よく見るとぼんやりと浮かび上がるような不動明王と愛染明王の姿がわかった。

経年劣化により薄くぼやけた姿になっても明王の気迫は伝わってきた。かえって気迫は増しているような、そんな風にも思える一対だった。

平安時代の仏像

仏像は平安時代のものが多かった。同寺の歴史の深さが窺える。

そのうちの秘仏本尊の「地蔵菩薩立像」は寺外初公開とのこと。像高50cmほどの小ぶりの像だった。

如意輪観音菩薩坐像
大日如来坐像
薬師如来坐像

も平安時代の像だった。
如意輪観音と大日如来は銅造。

如意輪観音像は高さ4.6の小さな像だが、これが面白い。
秘仏本尊の地蔵菩薩立像の光背上部に設けられた龕(仏像を納める場所)に置くための像だという。
こういう扱いの像は初めて見た。

地蔵菩薩鋳造と薬師如来坐像の姿は素朴な印象だった。
この2体は地方の仏師が制作したものとみられている。

対して大日如来坐像は洗練された姿で、中央(京都や奈良)の仏師が手がけたものだとわかる。バランスがとれた美しい像で、同展の図録の表紙にも使われている。
智拳印を結ぶ指は握られて見えない左第二指まできちんと造られているという。

仏像仏画のほかにも他にも書状、肖像彫刻、仏具など、寳金剛寺はまさに「密教美術の宝庫」だった。

自宅の本棚がいっぱいなので図録を買うのは控えているのだけれど買ってしまった。
会場の説明文がとても面白かったけれど、図録に必ずしも同じことが書いあるわけではなかった。
もっとしっかり記憶しておけばよかった。

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