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10年先も 20年先も 共に生きると決めた ~Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス~

昨年のB'z「UNITE」への出演を経て、ワンマンとしては実に3年ぶりの有観客ツアーとなった、「半世紀へのエントランス」。
2022年をもってデビュー30周年を迎えるMr.Childrenにとっても、このツアーは何としても!という想いが強かったようだし、我々リスナーにとっても本当に待ちに待ちわびた悲願のツアー。
FC限定のプレライブから始まって無事、各地ドーム・スタジアムを一つも取りこぼすことなく、駆け抜けてくれた。

自分は幸運にもプレライブと、バンテリンドームナゴヤ1日目、日産スタジアム1日目のライブに参加することができ、
(プレライブのレポはこちら↓)

その名古屋公演のMCでは、福岡公演を終えた直後の桜井さんの元に、B'zの稲葉さんから「コロナ禍以降、フルキャパでドーム規模のツアーを回るのはMr.Childrenが初めてですよ!おめでとうございます!」という激励のメッセージが届いたというエピソードも語られた程、これはとんでもない偉業である。

もしかしたら、参加される予定だった方たちの中では、コロナやそれに限らず止むに止まれぬ事情で参加を断念した方もいるかもしれないけれど、ひとまずMr.Childrenとしては無事にツアー完走ということで、本当にお疲れ様でした!

まさに30周年当日となった5月10日の東京ドーム公演は後に配信もされ、自分はその記念すべき一部始終も観ることができたのだけど、そうして観た今回の計4公演どれをとっても、どこまでいっても、やっぱりMr.Childrenはこの4人で"バンド"なんだなと思った。

そして、幾多の困難を経てステージに立ち続け、30周年を迎えても尚、全身全霊でステージに臨み、かつその瞬間瞬間を思いっきり楽しむ4人の姿は本当に心強く、希望でしかない。
こうして命を燃やして輝く姿を見せてくれる人たちがいるのなら、自分も頑張ろう。
これまでファンを続けてきた16年間もずっとそうだったが、そうやって生きる活力をくれるMr.Childrenが眩しくて、愛しくて、やっぱり好きだと思えた。
そんな30周年ツアーの自分が観た一部を、改めて振り返っていく。

まずはGW真っ只中の5月3日名古屋公演。
会場となるバンテリンドームナゴヤ(旧ナゴヤドーム)は、個人的にもまさに前回のツアー「AGAINST All GRAVITY」ぶりの再訪だったので、本当にMr.Childrenと共に帰ってきたという感じだったし、何よりもそこに広がっていた景色にまず、とてつもなく感動してしまった。

たくさんの人が集い、みんな思い思いのTシャツを着て、グッズを買って、ツアトラの前で写真を撮る…この光景を3年待ってたから、それだけでもう、嬉しくて、愛しくて。

早速自分もグッズを受け取り、会場周辺を各所歩き回って写真を撮りまくったのだけど、既にライブへのワクワクと久しぶりの感覚で興奮が止まらない。
4月にMr.Childrenを特集した関ジャムに出演していたいきものがかりの水野さんが「30代40代はミスチルを前にして冷静ではいられない」と語っていたが、まさにこの日の自分もそうだった(笑)

そしていざ入場すると、席は花道先端を真横に見るあたりの、アリーナ中腹の右端あたりだっただろうか。
特別近いというわけではないが、3年前にこの会場でライブを観たときよりは断然近く、気持ちも高まる。

そしてついに開演。
会場に流れ始めたのは、『優しい歌』のクラシックアレンジされたインスト。
次第に手拍子が広がっていき、音が止むとついに、モニターに映像が流れ始めた。
ここで最初、現時点での最新アルバム「SOUNDTRACKS」ラストの曲『Memories』のイントロ部分がBGMとして使われていたのは意外だったが、森の中を彷徨い、回転扉を挟んで向かい合う男女の物語に引き込まれていく。

やがて、今回のツアーのキービジュアルとも言える「エントランスマン」が番人となっているかのような巨大な塔が映像内に現れ、その扉=エントランスが開かれると、一気にこれまでのMr.Childrenの歴代のMVやライブ映像が走馬灯のように飛び込んでくる。

そしてそれらに釘付けになりながら浸っていると突然、「デーン…」と鳴り始めたイントロからいつの間にか『Brand new planet』を演奏し始めるMr.Childrenの姿がステージ上に。

かくして「半世紀へのエントランス」ドーム公演がスタート。
盛大さや派手さはなく、これまでの活動、そしてまもなく30周年を迎えようとしているこの日のライブは、50周年に向けた通過点に過ぎないですよと言わんばかりのあっさりとした幕開け。

"立ち止まったら そこで何か 終わってしまうって走り続けた"
という歌い出しはまさにそれを体現しているようだが、自分はというと3年ぶりに自分の故郷とも言える名古屋で再会できた喜びに、久しぶりのツアーの幕開けに感極まり、目に涙が滲んでいた。

この『Brand new planet』のMVが初めて公開されたとき、自分はまさにその3年前のライブの最後に演奏された『皮膚呼吸』と地続きになっているようなストーリーを感じたので、実際のライブでも、

最後にこの会場で聴いた曲が『皮膚呼吸』
→3年ぶりの同会場で聴いた1曲目が『Brand new planet』

という流れを喰らい、鳥肌が立ちまくりだった。
ステージまでの距離や涙でよく見えなかったのもあるかもしれないが、このときのMr.Childrenの姿はあまりに眩しく、そんな万感の1曲目が終わる頃にははっきりとメンバー4人とSUNNYさんの、バンドの輪郭が見えるように。

そしてJENがリズムカウントを刻み始めると、桜井さんが「覚えてますかー?この感じ!ライブでの再会を、またここから始めよう!」と、ニュアンスだがそう語りかけ、会場も拍手や身振り手振りでそれに応える。
依然としてマスク着用必須・声出し禁止の状況ではあるが、ドーム中からたくさんの想いが溢れていたのを確かに感じ、それを受けて桜井さんのアコギのストロークから『PADDLE』へ。

後にセットリストを見て驚いた意外な日替り曲だったが、先程感じたバンドの輪郭が音となって現れたように、Bメロからエレキギター、ベース、ドラムが仲間に加わって一気に畳み掛け、"行こうぜ"とサビで駆け抜けていく感じ、もう本当にたまらない。

勿論、桜井さんの歌が中心にありながらも、メンバー1人ひとりのプレイの際立ち方が凄かった気がするし、こんな風にバンドにギアが入る瞬間の緩急とか、ロックバンド好きとしてはやはり刺さるものがある。
それは続く『海にて、心は裸になりたがる』でさらに顕著だった。

そしてプレライブと同じく、もう来るのか!と早くもクライマックス感とワクワクを増幅させるJENのドラミングから、「僕らの代表曲」と『innocent world』へ。
サビでみんなで揺れる多幸感は言わずもがなだが、個人的には間奏のベースソロ→ギターソロの流れで桜井さんが「Bass.中川敬輔!」「Guitar.田原健一!」と2人を紹介する場面がグッときた。
これもまた、Mr.Childrenは4人で1つのバンドなんだよなと感じさせてくれる。

ここでMCに入り、久しぶりの再会への喜びと、マスク着用を余儀なくされる我々オーディエンスへの感謝と、いろいろ溢れる想いを語り、そして皆さんが聴きたい曲にすべて応えることはできないので、せめてここは日替りで、このツアー初めて演奏する曲を…と鳴らされたのは『LOVE』。
この曲もまたイントロで桜井さんと田原さんが「せーの!」と顔を見合わせて呼吸を合わせるようにギターをユニゾンしていたのが印象的で、長年築き上げられてきたバンド感は、3年空いたぐらいでは到底揺るがないことを感じさせてくれる。

そうして実に20周年ツアー「POPSAURUS 2012」以来10年ぶりに、でっかいLとOとVとEが渦巻いた会場の雰囲気がガラリと変わったのは『Any』。
こちらも静寂からサビで一気にバンドの音が解放される気持ち良さのある曲だが、
"今 僕のいる場所が 探してたのと違っても
間違いじゃない きっと答えは一つじゃない"
というサビのフレーズに絡め、後のMCで桜井さんは、コロナ禍でライブの形は変わりながらも、拍手の音ってこんなにいろんな表情があって良いものなんだと気付けて、それも悪くないと、声を出さずに身振り手振りでリアクションをとる我々を称えてくれた。

ここで、メンバー全員が花道先端に設けられたステージへ移動。
このときのMCだったか桜井さんは、この1つ前の福岡でのライブ後、とある人から「ドームツアーおめでとうございます!コロナ禍以降、この規模でツアーするのはMr.Childrenが初めてですよ!」と、激励のメールが来たと明かす。
その送り主は何を隠そう、冒頭でも触れた昨年のUNITEで共演した、B'zの稲葉さんだとか。
こうして今でもやり取りをする程関係が続いているのは嬉しいし、B'zも来年2023年は35周年のアニバーサリーイヤー。
同じく大規模なツアーを予定しているだろうから、その先陣をミスチルが切ってくれたのが嬉しくて、桜井さんにメッセージを送ったのかもしれない。

そんな素敵な出会いがあるんだから、人生どんなことが起こるんだろう?とワクワクするものだが、ここで次に披露されたのは『くるみ』。
出会いの数だけ別れも増えたりする中での後悔も歌っているが、個人的にもここ2~3年はめまぐるしく環境が変わり、後悔も乗り越えながら生きてきた。
そんな自分を後押ししてくれるように、ラスサビでは桜井さんが優しく弾き語ってから一気にバンドが畳み掛けるアレンジで、思いがけず涙が溢れて止まらなくなってしまった。

このときふと近くを見ると同じく男泣きしてるであろう人がいて、心の中で(同士よ~!!)と叫んだが、こうして聴く人の数だけ泣いたり笑ったりいろんな感情や思い出があるのがミスチルの音楽だよなと感じられるし、それは次の『僕らの音』で、「僕らの"ら"の中には皆さんがいる」と語ってくれたMCにも表れていた。

花道からメンバーがメインステージに戻ると、スクリーンには夜空に輝く星たちの映像が流れ、『タガタメ』へ。
まさに、今の世の中を憂うように、そして何かを訴えるように激しさを増していく歌唱と演奏と映像に、ただただ引き込まれるばかりだったが、特に間奏での田原さんのギターソロは、スクリーンにでっかくその姿が映し出されていたのもあるだろうが、いつも以上に熱を帯びていた気がした。
冷静沈着で穏やかなイメージのある田原さんにとっても、やっぱり今世界で起きていることに対しては沸々と思うところがあるのだろうか。

でもこんな世の中だからこそ、自分たちはちゃんと自分たちの今を大切に…と、次の『Documentary film』でまた強く優しく投げかけてくれているような気がして、この2曲の繋ぎは本当に見事だなと。
まさに、Mr.Childrenだからできる表現と表明だなと、強く頷いた。

そしてここからまた雰囲気をガラリと変え、プレライブのときと同じく『DANCING SHOES』から『ロックンロールは生きている』、そして『フェイク』へと、ダークでロックなミスチルのワールドへ誘っていくのだが、ガーデンシアターからドームへとフィールドを変えると、曲のスケールもそのままアップしたような迫力で、またプレライブには無かった映像演出も加えられていたが、それでも今回はその音の根幹にバンドサウンドがあるというのは一切ブレていなかった。

そんなワールドの果てはやっぱり美しいものだった…と思わせてくれたのはやはり『Worlds end』で、イントロでのJENの力強い入りから、身体の芯まで響いてくる田原さん・ナカケーのリフ、そしてアウトロでも綺麗で力強い桜井さんのファルセットは、30周年を迎えたMr.Childrenが、ちゃんと4人でMr.Childrenというバンドなんだ!と見せつけてくれるようなアクトだった。

「終わりは始まり」とよく言うけれど、いつだってMr.Childrenは最新が最高だと思わせてくれるし、ツアータイトルの通り、30周年はゴールではなく、まだまだスタートだと感じさせてくれるような彼らの伸び代には、未だに物凄い感動を覚える。
次の新曲もまた皆さんに長く愛してもらえたら…と披露した『永遠』でも、スクリーンいっぱいに咲き誇る桜の映像と相まって、それを強く感じた。

夜空に浮かぶ月の映像がよりそのときの情景をリアルに感じさせてくれる『others』から『Tomorrow never knows』への流れは、ある種の諦めのようなものを感じながらも尚、明日へ明日へ…と向かっていこうとする力強さを感じるが、続けて『printing』の印刷音がカシャカシャ鳴り始めると、おいおいまだ続くのかよ!と、既に2時間を越えていたであろうライブがまだこれからがハイライトなんだと思わせてくれるような展開に、思わず笑ってしまいそうになるほどテンションが上がる。
(5年前の「Thanksgiving 25」でも全く同じことを感じた 笑)
勿論そこから続く曲は『Dance Dance Dance』に他ならないのだが、いつ聴いても高揚感があって楽しい。

そしてさらにワクワクを増幅させてくれるようなSUNNYさんとJENが鳴らすイントロの導入、カラフルな線が鮮やかに走り出すスクリーンの映像から次に来る曲を悟り、もはやマスクの中では笑みがこぼれてしまう。
そう、ここで『エソラ』だ。
たまらず、相変わらず年甲斐もなく飛び跳ねて手拍子し続けた。
『くるみ』でとめどなく涙が溢れてきたと思ったら、今度はめちゃめちゃ楽しい~!とハイテンションに踊りまくってる自分がいる。
こんな風に、感動から楽しさへ心を揺さぶられるのはミスチルだけだなと、まさに3年前のAGAINST All GRAVITYぶりに思い知らされた。

『エソラ』もこれまで周年ライブ等を幾度となく盛り上げ彩ってきたが、続く本編ラストで披露されたのも、20周年、25周年という大事な局面で演奏されてきた『GIFT』。
もはやこの曲以上に伝わってくるメッセージは無いが、こちらこそ、これまで30年間、傍らで鳴り続けていてくれてありがとうと言いたい。
スクリーンには画面いっぱいにオーディエンスたちの姿が映し出されていた。

アンコール。
ステージに現れたのは、アコギを携えた桜井さんただ一人。
「"You"って今更ですが、"あなた"っていう他に、"あなたたち"っていう意味があるんですよね。この曲も、あなたたちではなく、あなたに向けて歌います…。」
そう言って弾き語りを始めたのは『Your Song』。
最初は意外な選曲だと思ったけど、この曲の歌詞もまた、これまでのMr.Childrenとファンが歩んできた30年間を歌っているようで、あなたたちではなく、"君じゃなきゃ"ダメなんだというメッセージにまたかなりグッときた。

このようにMr.Childrenはいつも自分たちオーディエンスと全力で向き合ってくれるなと感じるが、最近自分がよくライブを観るSUPER BEAVERもそうであるように、1対何万じゃなくて、1対1が何万通りあるんだよねってのをひしひしと感じる。
そんな我々1人1人に向けて贈られた最後のメッセージは、『生きろ』。
本当にこの2年半余り、生きることすらもままならなくなりそうな日々が大袈裟じゃなく続いたけど、こうしてまたミスチルと再会できるのなら、そしてまた50周年に向けて歩き続けてくれるのなら、また生きよう。
「自分たちに発破をかけるつもりで…」と、最後の最後までフルパワーで届けてくれた渾身の演奏は、少なくともあと20年は生きるぞ!と、固く誓わせてくれた。

- 5/3 Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス @バンテリンドーム ナゴヤ セットリスト -

01.Brand new planet
02.PADDLE 
03.海にて、心は裸になりたがる
04.innocent world
05.LOVE  
06.Any 
07.くるみ
08.僕らの音
09.タガタメ
10.Documentary film
11.DANCING SHOES
12.ロックンロールは生きている
13.フェイク
14.Worlds end
15.永遠
16.others
17.Tomorrow never knows
18.Printing~Dance Dance Dance
19.エソラ
20.GIFT 
en1.Your Song(弾き語り)
en2.生きろ

このちょうど一週間後、5月10日にはついにデビュー30周年を迎えたMr.Children。
東京ドーム公演が行われ、その記念日当日のアニバーサリーライブは後日配信もされたので、自分もその幸せな一部始終を観ることができた。

まず何と言ってもこのツアーの特徴はセットリストにあり、ミスチルはこれまであまりツアーの中で日によって曲を変えるということはして来なかったのだけど、先述の『LOVE』でも触れた通り、できるだけニーズに応えながら自分たち自身がやりたい曲をやれるようにと、随所に日替り曲が用意されていた。

特にこの東京ドーム公演では『Over』が披露されたがこの曲、近年たまに弾き語りアレンジで演奏されることはあっても、原曲通りバンドアレンジで演奏されることはほとんど無かったので実に嬉しかったし、4曲目で交互に演奏されていた『シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~』と『innocent world』を両方やってしまう等、アニバーサリーならではのお祭り感も。

そしてさらに、終演後にメンバーが挨拶と写真撮影をしているタイミングには何とサプライズが。

"10年先も 20年先も 君と生きれたらいいな"

そう、スクリーンに『Simple』の歌詞のフレーズが、Mr.Childrenに向けて大きく映し出されたのだ。
この日もラストに演奏された『生きろ』に対してのアンサーのようでもあるし、何より、これまで30年間を共にし、そして10年先20年先、また半世紀を生きたことを共に讃え、祝い合いたいという、自分らファン皆の想いも乗せてくれた、スタッフ一同からのこの上ないメッセージ。

「これは誰の言葉だろう?」とおどけて照れるような桜井さんに、配信画面の向こうから「あなたが書いた歌詞ですよ!」と思いっ切りツッコミを入れながらも、たまらなく嬉しい気持ちになった。
メンバー皆、穏やかな表情でとても嬉しそうだった。

- 5/10 Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス @東京ドーム セットリスト -

01.Brand new planet
02.youthful days
03.海にて、心は裸になりたがる
04.シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~05.innocent world
06.Over 
07.Any 
08.くるみ
09.僕らの音
10.タガタメ
11.Documentary film 
12.DANCING SHOES 
13.ロックンロールは生きている
14.ニシエヒガシエ
15.Worlds end
16.永遠
17.others 
18.Tomorrow never knows 
19.fanfare 
20.エソラ
21.GIFT 
en1.Your Song(弾き語り)
en2.生きろ

改めて映像で観ても、やはりこれまで観たツアーの中で一番"バンド"を感じた。
豪華なサポートメンバーがいないからじゃない。
技術は勿論、今も尚ミスチル4人が一心に音を届けようとしてくれる想いが膨らみ続けてるからなのだと思う。
それが歌や演奏から痛いほど伝わってきて、ただただカッコ良かった。

さて、そこから大阪・京セラドームでの公演を経て6月、ツアーはスタジアムへと舞台を移す。
自分はその初日となる6月11日、日産スタジアム公演へ参加してきた。
この会場もまた自分にとって、病床を乗り越えて最初に参加したライブの「SENSE -in the field-」、初めて雨が好きだと思えたほど心のそこから楽しんだ「未完」、25周年を盛大に祝うアツい夏だった「Thanksgiving 25」と、幾度となくMr.Childrenのライブを観てきた思い入れの深い場所だ。

そして今回「半世紀へのエントランス」。
既に名古屋、東京ドーム配信と、2回公演を観ていながらも、5年前のアニバーサリーツアーでもドームからスタジアムへとフィールドを変えたと同時にセットリストも変化したし、どんなライブになるのだろうというワクワクは、ツアー参加前と一切変わらなかった。

しかも今回、7万人を収容するスタジアムで座席番号が100列を越えるという中で、17列目(前10列は無いため実質7列目)という、とんでもない近さでMr.Childrenの音を浴びれるかもしれないということが分かっていたので、さらに気持ちは高まっていた。

新横浜に着くと、会場に着く前から至るところでMr.Childrenとそのファンを歓迎するような街の風景も日産スタジアムならでは。
そして会場へと足を運ぶと、ツアートラックやグッズ売場の前は朝から既にたくさんの人で賑わいを見せていた。

そしていざ入場すると、やはり7万人フルキャパという、特にこのコロナ禍では考えられなかった人の多さに辟易としながらも、時代の先頭を走り、また一つ道を切り開こうとしているMr.Childrenの大きさ、誇らしさに既に感動が押し寄せてくる。

この日は仲間2人との参加だったが、久しぶりにこうしてミスチルのライブを同じ空間で心おきなく共有できるようになったのも嬉しいし、実質7列目の席に辿り着くと、想像していたよりずっとステージが近く、3人とももう興奮が止まらなかった。

そして開演。
オープニングの映像やBGMはドーム公演から変わりはないが、ステージのセットが稼働式になっていて、扉が閉まったり開いたりするようになっていたのは、近くだったから気付いただけかもしれないが、スタジアム公演から加えられた演出だろうか。

歴代のMVやライブ映像が流れ、そのステージのエントランスが開いた瞬間、Mr.Childrenが姿を現すと同時に鳴り始めたギターリフに、初っぱなから鳥肌と衝撃と感動が一気に全身に走って、涙が溢れそうだった。

そう、1曲目からドーム公演と違う曲を繰り出してきたのだ。
それは、誰もがその曲に人生を重ね、お守りのようにテーマソングにしてきた曲。
自分も例に漏れず、病に倒れたとき、就職活動をしていたとき、何度この曲に救われたか…。

そんな"みんなの、皆さんの、お前らの歌"『終わりなき旅』からライブはスタートした。
この曲を1曲目にして始まるというのは、それこそかつてMr.Childrenが初めてこの日産スタジアムに立った2004年「シフクノオト」ツアーを彷彿とさせたが、そこから18年、たくさんの想いを背負って大きくなったその曲の迫力は、間近で観たのも手伝ってか、まるで違うものだった。
アウトロでは桜井さんが、「どんなものにも終わりはあります。だからこそ、今ある情熱のすべてを音に変えて届けます!」と語りながら、「終わーり なーき たーび…!!」と何度も力の限り叫んでくれた。

そして間髪入れずジャカジャーン!とまた別のリフを奏でるギターから『名もなき詩』へ。
立ち上がりから、ドーム公演とは全く違う予想に反した選曲が続く。

そしてこれに関してはドーム公演からそうだったが、ステージが大きいにも関わらず、メンバー同士の定位置はかなり小じんまりしていて近い。
画面に映らないところでも、メンバー各々を見ていると発見があり、笑顔だったり、アイコンタクトし合ったり、全身を使って表現したりとにかく4人ともその瞬間を全力で生きている。
バンドサウンドが前面に出ているこの冒頭2曲のおかげで、それらを強く印象づけられたライブの幕開けだった。

ここから『海にて、心は裸になりたがる』『シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~』『innocent world』とドーム公演の流れを汲みながら、次々と新たにセットリストに加わった曲たちも披露され、改めてMr.Childrenにはいかに名曲が多いかということを思い知らされた。

だがその曲たちの持つ優しさや温かみは、どんなに会場の規模が大きくなろうと変わらないし、ずっと近くにいてくれる。
『彩り』もまた、社会で働く全ての人をそっと応援してきてくれた曲だし、"僕らの現在が途切れない様に"と歌ってくれた『口笛』では、この時間がずっと続けばいいのに…と思うほどの愛しさに、また涙が溢れてくる。

ここでまた恒例の花道先端ステージ。
桜井さんが「運転席に座った気分で…」と椅子に腰掛け、田原さんとSUNNYさんとの3人という最小編成で演奏されたのは、『車の中でかくれてキスをしよう』。
しっとりと、でもギターと鍵盤だけのカラっとしたシンプルなアレンジは、ずっと浸っていたくなる至高の時間を演出してくれる。

曲後、JENとナカケーが舞台袖から仲良く肩を組んで再び登場。
本当にこのリズム隊2人はいつまでも親友のようだなと微笑ましい気持ちになるが、そのまま花道を歩いて桜井さんたちに合流すると、ナカケーがそこにベースを持っていくのを忘れるというハプニングが笑いを誘う(笑)
スタッフに持ってきてもらい事なきを得て、再び5人編成で『Sign』を演奏した。
ステージ上でもオンオフ様々な、ミスチルが見せる仕草、そのどれもが愛しくてたまらないし、何ひとつ見落としたくない。

そんなことを考えていると、再びメインステージへ。
ここからはまたドーム・スタジアム共通のセットリストが続くが、『タガタメ』の徐々に高まっていく、死力を尽くさんばかりの5人の演奏は、肉眼で見るとさらに引き込まれた。
アウトロで全身を使いながら躍動して演奏するメンバーの姿はいつ見てもカッコいい。

特にこの中盤ブロックでは、桜井さんの50代とは思えぬアスリート並みのスタミナにひたすら驚かされた。
『Documentary film』『DANCING SHOES』を経て、ダークサイドなミスチルが頭角を現していくこのゾーンでは、まず派手に火柱を上げダイレクトに温度の上昇を感じさせる演出を伴う『LOVEはじめました』で、終始アコギをストロークさせながら半ば叫ぶように歌う。
ちなみに、ライブでやる時々によって"中田"から"香川"、"メッシ"と変えてきた歌詞中のサッカー選手の名前は、往年のミスチルファンとしても有名な"長谷部"に。
ドーム公演では『ロックンロールは生きている』と対をなす日替り曲だったので、このツアーでは自分は初めて聴くことができテンションも上がるが、そのテンションの上を桜井さんは行く。

『フェイク』で駆け回るステージの縦横無尽さはさらにスタジアムでスケールアップしているにも関わらず、ドームではこの曲と日替りだった『ニシエヒガシエ』も続けて披露し、曲数を増やすというパワーアップの仕方も見せてきたのだ。
しかも、花道とメインステージを行ったり来たりしながらも、頭を振ったりシャウトしたりと、その一瞬一瞬の力の入れ具合が半端ない。
後のMCで「気を失いかけたところがあった」というような話もしていたが、おそらくこのパートではないだろうか。
それも、立っているだけでも体力が削られるような6月の蒸し暑さの中である。

それでも尚、続く『Worlds end』での伸びやかなボーカルと、アウトロでの歌詞には無い美しいファルセットは一切衰えを見せないので、もはや常人では考えられないバイタリティー…(笑)

『永遠』『others』と聴かせる流れでクールダウンを見せるも、バンドの演奏は静かに情熱を燃やし続け、それに応えるように『Tomorrow never knows』ではスタジアム中から心の\oh-! oh-!/がこだまする。

そしてここでまたセットリストに変化が。
大地を走り抜けるような画から、演奏するメンバーそれぞれの画が乱反射するようなユニークな映像とともに、『光の射す方へ』へ。
肉眼でステージに目をやると、Aメロでは歌詞に合わせてふざけるようなJENの姿も(笑)
ラスサビで「光の射す方へェ~!!!!!」と桜井さんが叫んだ瞬間には\パパパパパーン!!!!!/と、一気に何発もの打ち上げ花火が上がった。

いよいよクライマックス。
ライブが始まってからずっとそうだったが、続く『fanfare』でも桜井さんのみならず、田原さんやナカケーもステージの端から端まで、本当によく移動しながら演奏してくれた。
しかも笑顔を絶やすことなく。
ドラムセットに鎮座しながらも、時折豊かな表情や顔芸を見せてくれるJENも含め、本当にメンバーそれぞれがその瞬間を楽しんでいるのが伝わってきて、こっちまで楽しくなる。
そして桜井さん、ナカケー、田原さんが花道先端に集結して盛り上がりのピークを見せた曲の終盤では、まさに祝砲のように\パーン!/と無数の白テープが発射された。

スタジアムでも本編ラストを飾るのはやはり『GIFT』。
画面いっぱいに映る7万人とMr.Childrenの、"君から僕へ、僕から君へ"の想いと想いの交換は、声は無くとも確かにそこにあった。

実は雨予報で、いつ振ってきてもおかしくなかったこの日。
時折小雨はパラつきながらも、同じ日産スタジアムで行われた未完ツアー2日目のように本降りになることはなく迎えることができたアンコール。
桜井さんも「天気予報によれば 夕方からの 降水確率は上がっていて…」とこのことに言及しつつ、次の曲を匂わす。
そして高まった期待をさらに高めるように「やるよ~!」と叫んだ瞬間、SUNNYさんとJENのあのイントロで自分も一気にテンションがぶち上がった。
本編ではやらなかったので正直ちょっと不完全燃焼感があっただけに、このタイミングで『エソラ』が放たれた喜びはひとしおだ。
後に追っていくと、このアンコール1曲目の位置にこの曲が置かれたのはこの日のみだったようだ。
パラつく雨に逆行するように目一杯飛び跳ねまくったのも、この日だからこそ忘れられない楽しい想い出となった。

ドーム公演のMCでも語ってくれたように、30年間たくさんの曲たちがキャリアを彩ってきただけに、「皆さんのあの曲が聴きたいというニーズ全てに応えることはできないですが、次の曲もその一つであることを願って…」と鳴らされたのは『HANABI』。
初夏の夜空いっぱいに響いた"もう一回 もう一回"。
自分も心の中で何度も歌ったが、そのフレーズには半分、ライブの終わりが近づくのを悟りながら、また会いたい、またライブやって欲しい、という願いも込めていたと思う。

その日が来るまで、「最後にタイトルにそのままメッセージを込めてお届けします…」と演奏してくれた『生きろ』を胸に、また10年先も 20年先も 共に生きると決めた。
エントランスのその先の半世紀を一緒に迎えるために。

- 6/11 Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス @日産スタジアム セットリスト -

01.終わりなき旅
02.名もなき詩
03.海にて、心は裸になりたがる
04.シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~05.innocent world
06.彩り
07.口笛
08.車の中でかくれてキスをしよう
(桜井・田原・SUNNY)
09.Sign 
10.タガタメ
11.Documentary film 
12.DANCING SHOES 
13.LOVEはじめました
14.フェイク
15.ニシエヒガシエ
16.Worlds end
17.永遠
18.others 
19.Tomorrow never knows
20.光の射す方へ
21.fanfare 
22.GIFT 
en1.エソラ 
en2.HANABI 
en3.生きろ

終演直後、その瞬間を待っていたかのように、堰を切ったように、この日初めて雨は本降りに。
規制退場の番が来るまで余韻に浸りながら待っていたが、カッパを持っていなかったらずぶ濡れになっていたぐらいの雨が逆にライブ中に降らなかったのは、桜井さんもMCで語っていたが、本当に音楽に愛されたバンドだ。

翌日の日産スタジアム2日目、そして翌週の長居スタジアム2daysを経て、無事にツアー「半世紀へのエントランス」は完結。
改めて心から、おめでとう&お疲れ様、そしてありがとうを贈りたい。

ツアーを通して、3年ぶりに目一杯Mr.Childrenの音を全身で浴びて、何度も実感したのは、やっぱりミスチルは自分の原点にして、最強のバンドだということ。
もう随分好きなバンドや音楽が増えて、時折心が離れてしまうこともあったし、これからもあるだろうけど、その根っこには必ず彼らがいてくれる。

そして日々に寄り添い、つらいときは力になってくれるし、楽しかったライブの想い出がまた次のライブへの希望に変わり、これからを生きていく糧になる。
桜井さんも「この4人がMr.Childrenで良かった。そして、あなたたちがファンで良かった。」と言ってくれたが、自分もそんなバンドに出会えて心底幸せだ。