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血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』~ Base Ball Bear ギギドドベベツアー ~

「血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』」

最近このBase Ball Bearの『風来』の歌詞を痛感することがあった。
4月末ぐらいから首と肩が慢性的に痛み出し、1ヶ月以上引きずってしまったのだ。
チケットを譲って諦めた春フェスも1日あったほど痛く、整骨院に行って診てもらったところ、悪い姿勢が定着してしまい首に負荷がかかっているということ。

マッサージでほぐしてもらったり、ストレッチをしているうちに治っていったが、やはり適度に身体は動かしていないと一定の状態に慣れてしまい、そこから戻すのに時間がかかってしまうのだなと思った。

ことBase Ball Bearに関しては、常に変化や進化を繰り返し、ピンチに陥ったときも形を変えることで何度も乗り越えてきた。
だからこそ20年以上続いているし、コロナ禍を除き毎年のようにツアーを回っては各地を旅している。

そんなツアーの日々が久しぶりに帰ってきたのが2023年、「Guitar! Guitar! Drum! Drum! Bass! Bass! Tour」である。
昨年の武道館ワンマンを経て、その反動じゃないけれど、アニバーサリーでもアルバムリリースきっかけでも何でもない、平(ヒラ)ツアーというコンセプトで、最近ライブでは聴けていなかったような曲を演奏しまくる自由度の高いツアー。
※武道館のレポはこちら↓

自分は横浜・水戸・長野・渋谷の4公演に参加したが、なんと毎回日替わり曲が演奏され、1つとして同じセットリストが無いという、まさに「同じ姿勢でいないこと」を体現しているかのようだった。
そのため、どれか1公演にフォーカスして書くというのが難しいため、今回は自分が参加した4公演の様子をうまく織り混ぜながら振り返っていきたい。

そもそもZepp以外の、1000人を切るキャパのライブハウスを中心に回るツアーは自分にとってかなり久しぶりだったので、参加1本目のF.A.D YOKOHAMAはなかなか緊張感があった。近年はフェスや野音、武道館といった広い会場でベボベを観てきただけに、300程のキャパに凝縮されたときに受ける印象のギャップが半端ない。

ステージの近さも、XTCのSEが流れた瞬間の手拍子の響き方もまるで違う。
しかし、そんなギャップをことごとく切り裂くようにギター・ドラム・ベースが炸裂して始まったのは『海になりたい part.3』。
バンドとしての衝動を掻き鳴らすようなこの曲は、ライブを勢いづける1曲目としてピッタリで、ステージ上では3人がいきなり躍動する。

そしてそのまま『GIRL FRIEND』へ。
メジャーデビュー曲とあって、もう初期から幾度となく演奏されてきた曲だが、武道館を経てより強固となった3ピースサウンドで徐々に高まっていく間奏がたまらない。
Zepp DiverCity公演からついに声出しが解禁されたことで、ツアー後半はみんなのコールアンドレスポンスや\ハイっ!/と言った声がさらにこの曲を強くした。
やっぱりこれだよ、これ!

ここで挨拶代わりのMCだが、後にも数回訪れるMC(=ラジオ)のブロックごとに、ごま団子が胃袋で暴れているという話(横浜)、関根さんと堀之内さんがコーヒーを買って移動車に乗り込んでくるのが気に食わないという不満(水戸)、買った野沢菜を家でご飯にぶっかけて食うぞ!という決意表明まで(長野)、ご当地ネタも交え実に多岐にわたった。

そしてこのツアー、北海道公演が小出氏の喉の不調により延期になってしまったのだが、直後の渋谷公演では、長く不調が続いていて鼻水がよく出るためスウィートな歌声ではあるものの、なんとか復活した!と皆を安心させてくれた。

そして冒頭に綴ったような平ツアーというコンセプトとともに、「あまりやらない曲もやりたい放題やる」という旨が語られ、期待が煽られる。
こうして『いまは僕の目を見て』から再加速し始めたライブは、次の曲のギターイントロでガラリと雰囲気を変える。

『Shine On You Cypress Girl』だ。
なんと10年以上ライブで披露されていなかった曲。
まだ声出しができなかった横浜公演で初めて聴いたときは、「おおーっ!」という感嘆が喉まで出かかっていた。
この曲は堀くんや関根嬢のコーラスワークが際立っているが、関根嬢は「コーラスがベースの手の動きと合っていない箇所に入っていて、難しい曲作るなこの人(こいちゃん)はもうっ!」と、MCで当時の不満を振り返っていた。

そしてさらに『透明26時』で、このツアーのヤバさが頭角をどんどん表してくる。
シングル「ドラマチック」のカップリング曲だが、ここにきてこうしたまだライブで聴いたことの無い曲が次々に出てくるというのは、ベボベの楽曲群の幅広さを実感させてくれる。
曲の妖艶さがバンドの熟成と共に増していて、今演奏されても映えるものになっている。

ゆったりした曲調からギアを変え、堀くんのドラムが走り始める。
それと同時に手拍子も自然発生し、ギターとベースも徐々に加わっていき、やがて"初めての愛してるで…"と始まったのは『愛してる』。
実はこの曲、元々はこうしたアレンジだったようなのだけど、「シングルとして売り出すにあたり分かりやすいイントロを!」と言われて、ドラムよりもギターが前面に出たイントロのバージョンを作り、それが音源化されたらしい。

しかしライブではワクワクを煽るように始まり、曲が進むにつれて全体のテンションも上がっていくようなこのアレンジの方が映える。
Cメロからの\愛してる…る…る…YEAH~!!!!!/の部分で、このツアーどの公演でもまず1つのピークを迎えていたような気がする。

次のMCパートでは前述の通り、公演によってかなり多岐にわたり違っていた。
特に印象的だったのは渋谷公演。
小出氏の鼻水が止まらないという話から、曲と曲の合間に鼻をかむにあたり、その音を聞かれたくないということで、トイレの「音姫」のような効果音が欲しいという話に。
するとおもむろに堀くんがドラムで8ビートのリズムを刻み始め、その隙に小出氏が鼻をかむ(ついでに水も飲む。笑)。
このシステム(?)は「音殿(おとどの)」と名付けられ、この日のパワーワードとなってその後も何度か出てきては会場を盛り上げた。
ちなみに特許申請予定であり、使う際はBase Ball Bearの許可と使用料が必要になるらしい。

続いて、「いくつになってもバンドを続けていくぜ!」という宣言として鳴らされたのは『何才』。
アルバム「二十九歳」の1曲目であり、ツアーで演奏されるのも10年ぶり近いが、それでも瑞々しさを一切失わずにこれから始まっていくのだという予感を損なわない。

そしてそんな予感がさっそく的中したのは、このツアー最大の目玉と言ってもいい次の8曲目、そう、日替わり曲のコーナーだ。
ベボベ側から言及があったわけではないが、一応初日からすべてのセットリストを確認してみると、驚くことに1つとして被りが無い。
しかも、ライブでは滅多に演奏しない曲が多い。

流石にその全曲に言及するのは難しいので、自分が参加した公演分だけ触れておくと、横浜では『WINK SNIPER』。
お立ち台も使いながら、この瞬間だけはメインボーカルに変身する関根嬢にF.A.Dも沸いたし、近さ故に迫力が半端なかった。

そして個人的に最もテンションが上がったのは水戸の『SAYONARA-NOSTALGIA』。
この日は小さなハコでは珍しい2階のバルコニー的な位置から観ていたが、イントロから続くリズミカルなギターリフに応えるように会場全体が拳を上げている光景は飛び込んでしまいたくなった程。

長野の『試される』は、比較的近年の曲ながらもライブでは久しぶりに披露され、前回のギドベツアーの1曲目でもあったため当時のワクワクも思い出された。

中でも一番意外だったのは渋谷の『東京ピラミッド』だが、"渋谷駅西口に…"という歌詞から始まるため、今回のツアーではこの日しかあり得なかった選曲だ。
イントロが鳴った瞬間固まったが、歌い出しですぐに納得。

続いて間髪入れずに小出氏のカッティングから始まったのは『BOYS MAY CRY』。
横浜では関根嬢が大活躍した直後の小出氏への鮮やかなバトンタッチがカッコよかったのを今でも思い出す。
3ピースで演奏されるのは初めてだし、久しぶりにセトリ入りしたカップリング曲だが、この曲がいかに名曲であるかということが、手拍子がしっかりと一体感をもって揃うのを見て改めて実感させられる。
コロナ禍は明けつつあるが、いろいろな悲しみを経たり、その最中にいたりする状況で聴くこの曲は何度も涙を誘う。
間奏のギターソロがたまらない…。

そうして、やっぱり自分はどうしようもないほどベボベが好きだと実感するし、一生ついていくぜ!というこの気持ちを伝えたい、ああ!ああ!と思うのだが、それに応えてくれるかのように『どうしよう』へと続いた。

ここまででもかなり多彩な曲を演奏してきて、観ているこちらとしては拳を上げたり振ったり手拍子をしてかなり動いているのだが、長野では続いてのMCパートで(直前のDiverCityでも触れたそうだが)、「UNISON SQUARE GARDENの田淵君みたいにもっと動かなきゃな」「もはや田淵になりたい」と言っていた。

そして「ユニゾンってフェスで全然知らない曲やるよね」と半ばイジりながらも、いきなりサラっとアルバム曲やれるの凄いよね!と称賛してくれたのは両ファンとして冥利に尽きる。
対バンから1年経っても尚、いや、むしろ去年のあの鮮烈な対バンがあったからこそかもしれないが、未だに意識して名前を挙げてくれるのは嬉しすぎる。
※ベボベ×ユニゾンの対バンレポはこちら↓

ユニゾンを見習って、メジャーな曲やマニアックな曲関係なく楽しませられる域まで行きたいと言っていたが、自分にとってはベボベももうその域に来てるよ!ということは強く言っておきたい。

そして『風来』へ。
ようやくこうして、各地を回るツアーでこの曲が聴けるこのときを待っていた!
「C3」のツアーが中止になってしまってもこの曲は随所で演奏を聴くことができたが、それもベボベが無観客・有観客問わず、歩みを止めずにライブをし続けてくれたから。

「血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』」

をどんな形であれ体現してくれているベボベは、自分から言わせればユニゾンに、田淵に負けないくらい動きまくっている。

そして『曖してる』からライブは佳境へ。
小出氏のカッティングとともに躍動する関根嬢の一層太さを増すベース、メガネが飛んでいってしまうのではないかと心配になるほど頭を振り乱しながら叩きまくる堀くんの姿に触発され、こちらも汗だくだ。

そうかと思えば、爽やかに走り抜けていく中央線快速のように『DIARY KEY』が通過していく。
無駄を削いだ3ピースサウンドで展開されるこの曲ももはや、今のベボベに欠かせない曲となってきている。

「行くぞおおおーーーー!!!!!」と堀くんの雄叫びから始まった『PARK』は、特に声出しが解禁されたツアー後半で沸くようなコールアンドレスポンスにめちゃめちゃアツくなったが、ゴリラーズの地・名古屋では尚のこと盛り上がっただろうなと想像する。

そしてアウトロの残響を残したまま『yoakemae』に突入すると、その沸点はピークへ。
これまで何度もライブ終盤に登場しては会場を飛び跳ねさせ踊らせてきたこの曲は、3ピースで演奏され始めた当初はイントロのギターリフごと変えてしまうという妙案で隙間を埋めていたが、今では原曲通りのメインリフを小出氏が担い、強度を取り戻している。
いや、それどころかより磐石になったドラムやベースによって強度を増している。

\こーーー…こーーー…だっ………!!!/

の盛り上がりは、今こうして文字で書いていても飛んでしまいたくなる。
そうしてあがりにあがったテンションはさらに天井知らずであがるしかないようだ…と、『Stairway Generation』が追い討ちをかける。渋谷公演で、関根嬢のイントロから始まって一気に開放される小出氏のギターがひときわ輝いて見えたのは、延期の悔しさを経てライブができる喜びが滲み出ていたからかもしれない。

ここで本編は終了し、アンコールへ。
いつもならメンバーが登場してここでひとラジオ(笑)あるのだが、今回は配置につくや否や、すぐに演奏し始める。
しかも、ライブであまりやらないような曲たちを日替わりでしれっとだ。
それもまたUNISON SQUARE GARDENに触発されてだろうか。

横浜では『HUMAN』だったが、静かに始まり徐々に激しさを増していく演奏も、「C2」のツアーでは重苦しさをまとっていたのに対し、今のベボベが鳴らすとそれが強い覚悟に変わって聞こえてまたグッとくる。

水戸・長野で演奏された『ラブ&ポップ』は、3ピース当初チャップマン・スティックが使われていたことも印象深いが、ここはやはり「Guitar! Guitar! Drum! Drum! Bass! Bass! 」とこれだけ強く主張しているツアー、しっかりと3つの音だけで演奏し切ってみせた。

そして渋谷では『深朝』。
ギターのリバーブから始まった時点で予感したが、「新呼吸」ツアー後のベストアルバムのツアーからライブに行き始めた自分としては、初めてライブで聴くことができたので、喜びと驚きが半端なかった。

ここで軽く締めの挨拶MCを挟み、渋谷では、「いくつかイベントにも出ますし、夏は野音で会いましょう。どうもありがとうございました!Base Ball Bearでした!」
と、また次への期待を残しながら最後、ツアー前半の横浜・水戸では『changes』を、ツアー後半の長野・渋谷では『short hair』を演奏し、締め括った。

- Base Ball Bear「Guitar! Guitar! Drum! Drum! Bass! Bass! Tour」セットリスト -

01.海になりたい part.3
02.GIRL FRIEND
03.いまは僕の目を見て
04.Shine On You Cypress Girl
05.透明26時
06.愛してる
07.何才
08.WINK SNIPER(横浜)
08.SAYONARA-NOSTALGIA(水戸)
08.試される(長野)
08.東京ピラミッド(渋谷)
09.BOYS MAY CRY
10.どうしよう
11.風来
12.曖してる
13.DIARY KEY 
14.PARK 
15.yoakemae 
16.Stairway Generation
en1.HUMAN(横浜)
en1.ラブ&ポップ(水戸/長野)
en1.深朝(渋谷)
en2.changes(横浜/水戸)
en2.short hair(長野/渋谷)

ここまででほんの1時間半~2時間ほどの出来事だったが、1本1本がめちゃめちゃ濃密なツアーだった。
毎公演、すべてセットリストが違う。
しかも、10数年ぶりに、3ピースでは初めて演奏する曲も多数。

ここにきてそんな挑戦をしれっとこなしてみせるベボベは本当にカッコいいし、これからもずっと追いかけていきたい。
そのためにまずは自分ももう首や肩を痛めることのないように、姿勢を正して適度に動かないと…。笑