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「○○のように」という指示について

一時期の主役を総なめにしていたあの人の記事を目にして、思うことがありました。

まずその記事とはこちら。

この中に「ハルヒのようにやってくれ、と言われた」という物があり、平野さんはそれに不満を持っていたようでした。
私は平野さんと仕事をしたことはないのですが、このように「○○の様に」という注文はよくわかりますし、私自身も「この言い方をして良いのか?」と非常に悩むことが多々あります。

基本的に私の会社では役者さんを指定することは殆どありません。
キャラクター設定シートを提出し、スタジオが用意してくれた役者さんのリストにイメージが合わないということがない限りOKを出すスタンスです。
とはいえスタジオ側がそこまでイメージが合わない人をあてがうことはないのでNGが出ることはまずありません。

ある時「アンドロイド・AI音声」というキャラクターに対して「藤田咲」さんが当てられたことがあります。
ご存じの方は知っていると思いますが、有名な「初音ミク」です。
そのタイトルは私はお手伝いで入ったものだったのですが「収録の立会が出来るスタッフがいない」ということで私が立ち会うことになりました。
ここで困ったのが「初音ミクっぽく」と言って良いのかどうかです。
開発スタッフからのオーダーが「アンドロイド・AI音声」というキャラクターなので普通に人間の演技をさせてはいけないことは間違いない。
しかし「初音ミクっぽく」を言って良いかはまた別問題……
おそらく藤田さんはこちらのオーダーがあればどんな役作りでもしてくれるでしょう。
記事の書き出しは役者側が「っぽく」と言われることに対するジレンマでしたが、今回はオーダー側が「っぽく」ということに対するジレンマを感じました。

結局は折衷案で「普通の戦える少女ですが、人間ではないので感情を抑えてお願いします」と無難にオーダーしました。
一見すると「最初からそれでいいじゃん」と言われるかもしれませんが、そのゲームはキャラメイクした自キャラに好きなボイスを選べるというのが売り。
かなり多い声のパターンを用意しているわけですのでその中には「クールな戦士の少女」というものがあり、これと似てしまってはユーザーが選ぶ選択肢がなくなります。
なので差別化の出来る演技をお願いしなければならず、これが大変です。
音響監督さんと打ち合わせて、「クール戦士は○○さんなので、演技スタイルで変えることは可能」となり、「クール系だけど感情を出すために息演技で笑いなどを入れる」という対策を行いました。

本当は台本を用意した人が行けば問題なかったのかもしれませんが……

収録現場では直前にこんなトラブルが起こることも、ままあります。

ゲーム業界に身を置いたのは、はるか昔…… ファミコンやゲームボーイのタイトルにも携わりました。 デジタルガジェット好きで、趣味で小説などを書いています。 よろしければ暇つぶしにでもご覧ください。