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ライター(喫煙具)

私はタバコの煙が嫌いだ。臭いを嗅ぐだけで吐き気がしてしまう。本当にもうあの臭いがダメなのだ。
だがそんな私も、昔は喫煙者だった。
私がタバコを吸うようになったのは大学に進学し、家を離れて下宿するようになってからだ。ハードボイルド小説の探偵に憧れ、タバコを吸うようになったのだ。当時はまだ喫煙者の風当たりは強くなく、禁煙とうたわれている場所でなければ、タバコを吸っても問題ない時代だった。
タバコを吸うようになると、銘柄や喫煙具へのこだわりが出てくる。ライターと時計は自分を表現するアイテムだった。

ライターといえば、大きくはガスとオイルに分けられ、その中でも有名なのはオイル式のZIPPOだ。映画の中の小道具としてもよく出てくるので喫煙者でなくても知っているだろう。だが私はそんな「誰も彼も」が持っているZIPPOとは違うライターを愛用していた。
それは「RONSON BANJO」だ。

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この独特な形状にやられたのだ。
親指でレバーを押し下げると、歯車によりキャップが上がり、同時にフリントから火花が飛び、オイル芯に着火するのだ。使い終わればレバーから手を離すとキャップが降りて火を消す。
ZIPPOの場合は1)蓋を跳ねあげる2)フリントを摩る3)蓋を閉じると3アクションが必要なのだ。拳銃で例えるとバンジョーはオートマチックで、ジッポーはシングルアクションリボルバーのようなものだ。
ジッポーの簡素ゆえに壊れにくいというメリットは認めつつも、メカニカルなバンジョーに惚れてしまったのだ。
意外にもこのバンジョー、1998年に禁煙を思い立つまでの約10年、特にメンテナンスもせずにずっと使えたのだ。真鍮製のボディは手垢で赤黒く光る、いい色になっていた。
喫煙者であることをやめて、ヤニ切れという呪縛からは解き放たれ、年間10万円という費用も節約できるようになったが、ライターという「ロマンアイテム」を持ち歩く必要がなくなったのはちょっと寂しいところだ。

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葉月 陽
ゲーム業界に身を置いたのは、はるか昔…… ファミコンやゲームボーイのタイトルにも携わりました。 デジタルガジェット好きで、趣味で小説などを書いています。 よろしければ暇つぶしにでもご覧ください。