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種苗法改正について素人なりに考えてみた

種苗法改正について、農業には全くの素人ですし、国際的な知的財産権の考え方についても詳しくないのですが、一生懸命考えてみました。

種苗法改正の是非について、まず、やまけんさんの投稿をシェアします。

■GW明けに国会審議される「種苗法の一部を改正する法律案」について
やまけんの出張食い倒れ日記 2020/5/5
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2020/05/30062.html

私が少し前にFaceBookでシェアした山田正彦さんの以下の投稿と合わせて読んでいただければと思います。

■山田正彦FaceBook 2020/3/5 
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=2562467830546373&set=a.321623154630863&type=3&theater

2018年に行われた種子法廃止について

■種子法廃止で「得する人たち」の狙いと思惑
現代ITメディア 尾崎 彰一 2018/12/12
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58814

この3つを読み比べていくと、種苗法改正法の論点で最も重要なことは、自家増殖についてではなく、種苗の「知的財産権」の取り扱いの問題だと思いいたりました。

農水省の法案説明資料です。

■種苗法の一部を改正する法律案について
農林水産省ホームページ 2020/3/3
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/attach/pdf/shubyoho-2.pdf

・登録品種の知的財産権を守ること
・海外には安易に登録品種の種苗を渡せないようにすること
が、今回の改正の骨子と読めます。

しかし、「日本にも籍がある多国籍企業が種苗の知的財産権を握ってしまう」ことを前提にすると、一見、日本の種苗の知的財産権を守ってくれるように見える種子法改正が、以下の展開で多国籍企業に利益をもたらす法になってしまうのではないか?と懸念します。

現行法では、登録品種であっても農家が種苗を自家増殖できてしまうので、知的財産権を有する人(企業)にほとんど利益は行きません。
しかし、多国籍企業が日本の種苗を元に、より優れた「売れる」新しい品種(自社製品)を作り(品種改良は登録品種の知的財産権の利用制限の対象外らしい)、それを改正法に沿って登録品種とすればドル箱になります。

多国籍企業の立場で考えると、法改正をしてもらわないと自家増殖可能な自社製品は日本には入れられないでしょう。現行法では、日本国内で自由に自家増殖されるだけでなく、世界中に自社製品を勝手に広められてしまいますから。

野菜類は、30年前から一代限りで採種できないF1種を普及させることで、すでに多国籍企業の種苗が日本の野菜の90%を占めているらしい。

■タネが危ない!わたしたちは「子孫を残せない野菜」を食べている。
~野口のタネ店主 野口勲さん
NEXT WISDOM FOUNDATION 2016/06/22
https://nextwisdom.org/article/1156/

品種改良の元にする種苗は、この法改正の制限が及ばない一般品種でかまいません。例えば「ゆめぴりか」(登録品種)の元になった「きらら397」(一般品種)に、遺伝子組み換え技術も含めた品種改良を加えて「ゆめぴりか」以上の製品を作ることは、多分できることなのだと思います。
ただ、現行法では、それだけ労力をかけても、農家が自家増殖できてしまうので利益にはならず、知的財産権が保護されないまま世界中に製品が流出しかねません。しかし、改正法では利益化と製品の保護ができるようになります。

つまり、日本の種苗は知的財産権の恩恵が開発者に行くことを避けることで、多国籍企業の開発投資を防ぎ、結果的に種苗の独自性が守られていると考えられます。
これは知的財産権の観点からすると歪んだ種苗保護の方法ではあります。

しかし、全うに種苗の知的財産権を守りつつ、多国籍企業に出し抜かれないようにするためには、相当に高度な知的財産権保護の運用を編み出さなければならないと思われます。
少なくとも、今回の改正法では、そこは守り切れないように見えます。

この論理展開におかしいところがあれば、ぜひご指摘ください。

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