見出し画像

知りたくなかった大人への一歩

友人と買い物を楽しんでいた最中、その瞬間は訪れた。

「あ。あれしたい!」とわたしより2つお姉さんな彼女は、マッサージ器具のコーナーにわたしを引っ張った。

「最近腰がヤバくてさぁ……」
「24歳でそんな夢のないこと言わんでよ」
「いやいやいや、そんなこと言うけどユウカも時間の問題よ???」
「わたし、肩こりとか全然ないし!まだ若いし!マッサージとかくすぐったいだけよ!」

そんだけ捲し立てて話したあと「まあまあ座ってみ?」なんて呑気に声をかける彼女に流されて、わたしも体験することに。

実際にわたしは肩こりなんて皆無な人間なのだ。マッサージと称されるものはことごとくくすぐったく感じるし、肩を掴まれても「柔らか!」と驚かれる。要は自信があった。自分の体は若いと。まだまだ疲れてなんかないと。

うぃ〜〜〜〜ん
うぉんうぉんうぉん

間抜けな音を立ててマッサージ機は動き出した。

結論から話そう。わたしの体はバリバリに凝っていたようだ。疲れも溜まっていたのだろう。今までくすぐったいこの上なかった、腰回りのマッサージは感嘆の声が溢れるほど気持ちが良かった。首回りのマッサージに関しては、購入を考えるほど……。

ショックだったね……。わたしは基本的に“大人になった感覚”が嬉しいタイプだ。まだまだ歳を取りたいし、まだまだ深みのある人間になりたい。最近は薬味の良さが少しずつわかってきつつある。

ただ、これは知らなくてよかった。マッサージに感動と快楽を覚えたくはなかった。そんなわたしとは裏腹に、店員さんは次々とマッサージ機具を紹介してくれる。

「こちらは電流が流れて血行を良くするのと同時に〜〜〜」
「これは脹脛まで包んで圧迫してくれるので足のむくみを〜〜〜」

紹介され、体験し、感激するほど悲しくなった。

一通り試して満足した様子の彼女が勝ち誇った顔で

「どうよ?」

と声をかけてきた。

「完敗でs...「せやろ!!!」くっ……」

年相応より少し若いくらいでいられていると思っていたが、どうやら勘違いだったようだ。思ってもみなかった体の退化に、23歳は無理なく過ごそうと決心した。

#日常
#こういう大人の第一歩もある
#悲しい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?