沖縄県議会の選挙区定数の変遷

 今回は沖縄県議会の選挙区定数の変遷を取り上げます。沖縄県は、本土の府県とは異なる歴史を辿ってきました。また文化も違います。第二次世界大戦ではアメリカ軍が沖縄本島に上陸し、激戦地となりました。終戦後、アメリカの占領下におかれ、1972年に日本に復帰しました。地政学上などの理由からアメリカ軍の基地がおかれています。経済面では、農業はサトウキビ、タバコ、ゴーヤー、マンゴーなどのトロピカルフルーツが主要産品があり、漁業ではマグロ、イカ、モズク、畜産では固有種のアグー豚が有名です。重工業はあまり発展していません。温暖な気候を売りとした観光業が主要産業となっています。そのため沖縄経済は第一次・第二次産業ではなく、第三次産業が経済の柱となっています。その中で3つの分野が中心となっています。一つ目は観光業、二つ目は公共事業、三つめは米軍基地が生み出す軍用賃借料、米兵向けの商店などであり、沖縄経済を象徴するとして「3k経済」とも呼ばれています。
 ではこのような背景を持つ沖縄県議会の選挙区への定数配分はどのようなものだったでしょうか。他の府県議会では、戦後すぐの1950年から取り上げますが、沖縄県議会では日本復帰後の1972年から取り上げることとします。

 まず人口から見てゆきましょう。沖縄県の人口は、日本復帰して以来、増加し続けています。復帰直前の1970年の94万人から2015年の143万人に増えています。
 では地区ごとに分析しよう。地区は、南部、中部、北部、宮古・八重山の4地区とする。具体的な市町村は1972年当時では、南部は那覇市、糸満市、浦添市、島尻郡(伊平屋村、伊是名村を除く)。中部は具志川市、コザ市、宜野湾市、中頭郡。北部は名護市、国頭郡、島尻郡伊平屋村と伊是名村。宮古
・八重山は平良市、石垣市、宮古郡、八重山郡。現在(2023年)では南部は、市に豊見城市と南城市が加わり、中部は具志川市が周辺自治体と合併しうるま市に、コザ市は沖縄市に改称しました。宮古・八重山では、平良市が宮古島市と改称しています。
 具体的に人口の推移を見てゆこう。上述したように県全体の人口は増加しているが、各地区においても程度の差こそあれ増加している。地区ごとにみると、まず南部は1970年の449,932人から2015年には692,829人に増加した。中部は275,785人から506,027人に2倍に増加している。この2地区にくらべ北部と宮古・八重山は微増である。すなわち北部は、114,070人から128,925人に、宮古・八重山は105,324人から105,785人となった。
 これだけでは順調に増加したように見える。しかし地区によっては、減少した地区もあった。宮古・八重山地域は、1990年は103,438人と減少している。
 また選挙区レベルにおいても人口の推移は様々である。概ね南部と中部は全域で人口が増加したが、北部では名護市が微増なのにたいして、国頭郡は微減であった。また宮古・八重山では、宮古島は微減、八重山郡は1970年代に一旦減少したが、その後増加に転じている。
 人口の比率に目をやると、比率が多いのは南部である。1970年の時点で県内の人口の47.6%を占めており、1990年では49.1%、2015年には48.3%を占めている。その他の地域は、中部は1970年で29.2%、1990年で32.7%、2015年では35.4%まで増加している。北部は1970年時点で12.1%であったが、1990年には9.7%、2015年には9%に減少した。また宮古・八重山は1970年には11.1%、1990年には8.5%、2015年には7.4%と減少している。このように4地域のなかでは中部地域のみが人口比率が増加しており、他の3地域は減少している。人口が多い南部地域も1970年と比べると、2015年では比率が低下しているのである。
 これらをふまえて定数の変遷は、どのようであったのか。全体的にみれば、人口に比例して定数を配分している。1980年代から1990年代初めにかけて、那覇市が過多選挙区となり、中部地域の宜野湾市と中頭郡が過少選挙区となった以外は、人口どおりである。
 北部と宮古・八重山は1972年時点では各5議席を有していたが、人口比率の低下に伴い、各4議席に減っている。南部は1972年において総議席の47.7%の21議席を占め、さらに1992年には総議席の半数にあたる24議席を占めていた。しかし人口比率の低下で、2020年では23議席となっている。中部のみが議席が増加しており、1972年では13議席であったのが、1992年には15,
2020年には17議席となっている。
 ちなみに現在一人区は0であり、多いときでも1980年代から2000年代初めにかけての3であった。また議員一人当たりの数も現在3.69人と割合高い数である。
 沖縄県議会の定数配分は、総じて人口比例に則った配分を行っているといえるであろう。

(参考文献)
安里進「沖縄県の歴史」山川出版社 2010年
沖縄県議会事務局編さん「沖縄県議会史 第3巻(通史編3)」2014年
沖縄県議会のwebサイト
総務省統計局 国勢調査のwebサイト

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