あの日③。

とても嫌な夢を見たのを覚えている。
日曜日。

被災3県と言われている一つで暮らす妹と連絡がついた。彼女の旦那さんは病院で働いている。結局、彼が家に戻ってきたのは約一週間後だったという。

その日は確か、小雪が舞っていたと思う。暖房も節約し使っていた。東北の3月は寒い。朝は氷点下になることもしばしば。父親が近所の一人暮らしの高齢者が住む家をまわってきた。
唐突に
「空地で火をおこそう」

どの家庭も暖房を節約しており、寒いと言っていたらしい。そして一人でいることが不安だと。空地で火をおこし、そこにみんなで集まろうと。彼が一斗缶や薪をさがしている間に、ラジオから通電が開始されたと。一斉にではなく、地域ごとに。
「何時ごろに◎◎地域の予定」
そんな感じだった。と言っても、当たり前だが通電は私たちが暮らす内陸部のみ。私の暮らす地区は18時過ぎに電気が通った。

つけたテレビでは繰り返し、繰り返し津波の映像が流れていた。アナウンサーや評論家、多くの知識人たちが討論していたが、内容はすでに原発へと移っていた。

東京に暮らす知識人たちが、さも津波を体験したかのように話す姿がイヤだった。これでもかと東京一極集中を見せつけられた気がしてイヤだった。1次産業の従事している誇り高き人間が、なんだか馬鹿にされたようでイヤだった。

そして地方はいつまでたっても地方なんだと思ってしまい、悲しかった。

妹の旦那さんは原発の近くの病院で働いている。彼女は子どもと二人で家にいる。励ますために
「米と味噌さえあれば生きていける」
とメールをした。思い返せばもっとまっとうな内容がなかったものかと思う。

数カ月後、彼の職場は例の区域となり、妹一家はその地を離れた。

明日から仕事だ。

そう思った途端、日常に戻された気がした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?