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「第1回呆然戯曲賞お題」候補作品・短評

「ウロウロ」 46P
「逃避行石」 71P
「旅行者たち」 76P

第1回呆然戯曲賞、作品を応募することはできませんでしたが、せめて投票をと思って、全応募作品を読みました。今回、Twitterでの投票により入賞作品が決まるとのことで、できるだけ相対評価の精度を高めるために、事前に評価項目を定め、読んだ印象を数値化しています。

言うまでもありませんが、作品を評価するということは、その評価能力を問われるということでもあります。なので、まずは今回ぼくがどのように作品を評価したのかを明らかにしておきます。

評価項目の立て方は以下の通り。

技巧・技術 満40P
サプライズ 満50P
読みやすさ 満10P
合計/100P

「技巧・技術」
戯曲の構成や人物造形、イメージのつむぎ方やつなぎ方などを含みます。基準点を20Pとしたので、配点は非常に辛口だと思います。

「サプライズ」
これは一般的には独自性とかオリジナリティを問う部分だと思うのですが、考えてみると、オリジナリティを問うためには当然まず評価者が全ての表現物に通じてなきゃ不可能です。なので、ここでは正直に「ぼくにとって独自性=サプライズがあったか」を評価しています。類似した作品をぼくがすでに知ってれば低くなるし、その逆もあります。その程度の評価しかできない評価者であるということです。

「読みやすさ」
これは個人的にぼく自身が今noteで戯曲を一つ書こうとしていて、その参考にさせてもらえばと思って項目を立てました。読みやすい工夫がなされているかが評価基準です。ただPDFでアップされているものは当然読みやすいので、評価高めです。そこに不公平感はあるかもしれません。

※応募作品のうち、ササキタツオさんの「ペインフル・スマイル」(自由)を最初に読んだため、この作品のポイントが全作品の基準点となっていることを明記しておきます。

以下、作品ごとの短評です。
評価するという視点で書いているので、どうしても上から目線に見えてしまいがちですが、逆に評価能力を評価するつもりでお読みいただければ幸いです。

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作品名 ウロウロ
作者名 宮村

技巧・技術 20P
サプライズ 20P
読みやすさ 6P
合計/46P

まず擬人化は使い古された手法なだけに、技術的なハードルが非常に高い。さらに「寓話」を通して(今さら)何を語るのか、という問いかけに作家がどう答えるのか?という点においても、相当な覚悟が必要だとぼくは思っている。そこまでの覚悟を、この作品から感じることはぼくにはできなかった。

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作品名 逃避行石
作者名 最上川最中

技巧・技術 30P
サプライズ 35P
読みやすさ 6P
合計/71P

面白かった。前半も後半も。でも飛行石(前半)と逃避行(後半)が有機的につながって一つの作品を形作ってる、というふうには感じられなかった。細部の一つ一つはユーモラスで愉しく読んだ。

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作品名 旅行者たち
作者名 小島夏葵

技巧・技術 35P
サプライズ 35P
読みやすさ 6P
合計/76P

ムダのないシンプルな構成で、今回の第1回呆然戯曲賞の応募作品の中で、もっとも完成度が高いと思った(自由、お題合わせて)。途中までは、「いやだいぶ想像してるじゃん」と思いながら読んだ。「想像力を行使しない」ことを自認する人間の姿を、もっと高い解像度で見たかったという欲は残る。

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以上の評価により、小島夏葵さんの「旅行者たち」に投票します。

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