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ただの日常物語。

   友達と母。


    「はい、これバレエのチケット」
そう言ってパンフレット様なものとチケットが入ったクリアファイルを渡される。

   ほんの少し久しぶりに会った友達(幼なじみ)はついこの前会った時とさほど変わらない様子で心の中で少し安堵した。

「おお!えーと、これいつなんだっけ」

   前々から友達が出席するバレエを見るという予定を立てていたのに日にちすら覚えていない間抜けな私に友達は「明後日だよ」と少し不安を持ったように言う。

「明後日!、?…」想像してたよりも早かった予定に困惑する。
というより、私にしては最近予定が立てこもっていて正直にいうと休みたい期間だった。
 
   2、3日前にはどこかでスカウトされてライブをやることになったとかいう母の初ライブ(20人という少ない人が見るもの)に体調が悪くて行けないと言ったら

「貴方のためにこのライブをすることになったんだよ!?」

などと、頼んでもいない。
ライブで歌う曲すら昔のもので知らない。
おまけに、そのライブの練習とやらで私に迷惑をかけたこともあるのにそんなことを言われる始末で

私のためを思ってやっているとしても不満が溜まってしまう。

結局は不登校で学校に行けない私に"励まし"という名の自己満足で、最終的には1万円上げるから行きなさい、なんて言われて仕方なく重だるい体を上げて行った気がする。
乗った私も大概だけど、母親のこうゆう、すぐお金を出すところが好きじゃない。

   まぁ、結局1万円貰ったから文句を言ってはいけないけれど…

そんなことを思い浮かべながら友達と軽く言葉を交わして夜遅かったのですぐに解散した。

明日も予定があるから休めないな、なんて虚しい感情を胸にしまってその日はあっさりと眠った。

   行きの憂鬱。

   ……当日、、夜には全く眠れなかった。しょうがないので朝と言われる時間帯から少し寝て支度の準備をする。

バレエの会場には最寄りの駅から何個か乗り継ぎで行かなきゃ行けないらしいのでアプリを使ってルートを1度確認してから家を出た。

久しぶりに乗った電車は相変わらず心地が良かった。

  途中で乗り換えをするために電車を降りると大きい駅のせいで少し迷う。どこか既視感を感じながら小走りで歩いて行く。


まだ乗り継ぎの電車が来るまで時間はあるはずなのに何故か体は焦っていて、息が上がる。

怖い。こわい。

そんな感情に包まれる。ほんとうに、まるで得体の知れない何かに追いかけられてるみたいで怖くて怖くて

目的のホームに着いた時、この駅は出席日数が足らないせいで退学(転校)をした前の私立中学に通う時使っていた駅だったと分かって
思い出せなければ良かったと言う感情と不快さの原因が分かった謎の爽快感でぐちゃぐちゃになった。

   学校に行く訳ではないのに、憂鬱。

   バレエ鑑賞いぇーい、。 

   やっとの事で目的の駅に着くとまだ時間に余裕があったので本屋に向かう。反対方向を示してくるGoogleにキレながらも漫画を買うと少しだけ気分が良くなって行った。

   あれかな?と思いながらバレエ会場があると思わしき建物に入る。
あ、結構広い…なんて思ったけどバレエ会場はすぐそこで友達に貰ったチケットをお姉さんが確認するとすんなり通される。

   人がいっぱい居る中に友達も連れていない中学生1人。バレエをしている訳でもないので、ちょっときまづい

一応、共通の仲の良い友達を1人誘ったみたいだけど時期が時期で都合が合わなかったみたいだった。

   チケットに書かれている指定の席に座るとすぐ隣に同じくらいの歳の女の子が2人居た。
綺麗な爪と少し化粧をしているいわいる最近の女の子で見ていると少し複雑な心境になる。

後から知ったけれど、この女の子たちは私の友達の友達らしい。私と同じでチケットを貰い、誘われている子だからどうりで同世代に見えた訳だ、

話しかけるか一瞬迷ったけれどいくら共通の友達を持つとはいえ話しかける勇気も仲のいい2人組に割り込むのも気が引けるから辞めておく。

  しばらく頭の中で適当なことを考えていると照明が落ちて全体が暗くなった。

あ、始まるのかな

徐々に幕が上がると綺麗なバレエ用の衣装を着た複数の女の子が居た。

視力が悪く相当ぼやけてたので持ってきていたメガネをかけると細い足に全ての体重を掛けている光景が鮮明に見えてつい足が折れないのか不安になってしまう。

  数分見ただけだけれど、音楽に合わせて動く
足と手は優雅な白鳥、というイメージよりは身体は柔らかいのに何処か機械さを感じるもので

 それなのにとても綺麗なそれは見ていくうちに自然と行きの憂鬱さを忘れていく感覚になる。

   1部や2部などもあるから楽しみだな、なんて期待を寄せながら舞台で踊る友達に目を向ける。ちなみにだけれど、調べた限りではバレエというのはルネッサンス期のイタリアから始まったらしい。貴族たちが踊った音楽に合わせてゆっくりとステップを踏むバロというものが現在のクラシックバレエの原型形になったとか…

   自分から歴史を調べるとこうも面白く感じられるのに、学校の授業で習う歴史はどうしてこうもつまらないのか…全くの謎である。

舞台に出ている子は小さい子も衣装を着替えて出てくることも多く、いくら他の人達の出番の時間があるとはいえ忙しそうで

それなのにそれを感じさせない美しさが際立っていてとても綺麗に感じられる。

見ていて気づいたことだけれど男の子の数は少ないようでそれを活用しているのか、男の人が目立つような形になっていた。

   あまり寝ていないせいで眠くなってしまうけれど、人生でバレエを見るのが始めてな私はすごく新鮮で気分で

一つの長い音楽が終わる度に拍手で目が覚める感覚が案外心地よくて 
あっという間に時間が過ぎる。

隣にいる女の子達が途中で帰り、

終わりの時間が近ずく程、同年代や上級生となりレベルは高くなる。男女2人で踊るバレエはまるでオルゴールでクルクル回る人形のようで、夢の中みたいにキラキラしてる。


、終わってしまったその時はすごく残念で、それと同時に綺麗なものを見て自分自身の醜さを感じる重圧が無くなったことが少し嬉しかった。

あぁまた見に来たいな、なんて思って
その日は友達と友達のお母さんに家まで車で送って貰い、他愛ない話をしながらコンビニに寄ってアイスを奢ってもらったことがすごく幸せで嬉しかった。



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