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完璧主義のサンタクロース

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寒い夜には心が暖かくなる物語
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サンタクロースはいないと悟った年齢の平均は8歳〜10歳ぐらいだという。

うちのサンタは完璧主義で負けず嫌い何事も中途半端を許さない性格。
やるならとことんやる。
だから計画通りにいかなかった時の凹み具合はひどい。この世の終わりのような顔をしている。
反対に成功すると、とっておきの酒を並べてご満悦。本当に分かりやすい

どれくらい完璧なのかというと…。

妹は一人暮らしを始めてからやっと枕元に置かれるプレゼントの謎が解けたと言っていた。毎年置かれるプレゼントが全く届かなくなったからだ。
(気がつくの遅すぎダケドね…)
正体を知ろうとしないことが、毎年プレゼントをもらえる理由だと完全に信じていたと…。

完璧にやり切ったお祝いの酒は、さぞかしうまかっただろう。

これは20歳になるまで続けられたクリスマスの物語である。

サンタの正体は、もちろん…でも…

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絵本を読むのが好きだった僕。
サンタのイメージは赤い服を着てヒゲをはやしたメガネのおじいさん。ソリに乗って鈴を鳴らしてやって来ると信じていた。

12月24日の夜。
そわそわして眠れない。寝たふりをして薄目を開けていたりした。
母さんが時々見に来て僕が起きていることが分かると
「サンタさんは、ちゃーんと寝ないと来ないのよ。寝たフリをしてるって分かったら、びっくりしてプレゼントを置いていくのを忘れて帰っちゃうんだって〜」とヒソヒソ

そんなマヌケなサンタさんがいるのか?
せめてプレゼントは置いていってほしい…そう思った。
でもサンタクロースは、あわてんぼうって歌あるしなぁ。。。少し信じる

母さんは何とかして早く寝かそうとしてくるけれど余計に眠れなかったりしたのだ。

そしていつの間にか眠ってしまっていた

ハッ!!! と目が覚める。

しょぼーん…
プレゼントが置いてあった…
「今年も見れなかった…涙」
いつの間にか、プレゼントよりも“サンタさんの姿を見る”ことが楽しみとなっていた。

次の年の12月24日。
僕が10歳の時。
ちょっと考えた。布団の中にもぐっていると見せかけて押入れから覗こう…!

人が入っていると見せかけて…
実は大きなぬいぐるみ!
ちょうど僕と同じぐらいの大きさでシメシメ。
今夜こそ絶対寝ないぞ寝ないぞ〰!!

深夜になると押入れの中も寒い…
毛布にくるまって待っていると、だんだん眠くなってきてしまった。
指で目を大きく開く。ほっぺを叩いてみたり、つねってみたり。。。
あー もう何をしても眠い。
早く来てくれよーやっぱり起きてると来ないのかなぁ。。。

すると キィっ…  
ゆっくりと灯りが部屋に差し込んだ。
母さんがヒョコっと顔を出して
『いいわよ』と声に出さず合図する

ついに、キター!!!
心臓のドキドキが止まらない…
聞こえるんじゃないかとそれにもドキドキしていた。

ジャジャ〜ン!サンタさん登場!!

鈴は鳴らなかったけど、赤い服にヒゲの生えたメガネのおじいさん…
『本物だぁ…!!ついに見てしまった!!』
大興奮!!!

…が、次の瞬間、まさかの夢が壊れる

 『 ふ え〰くしょん。 』
このスローモーションの作ったようなくしゃみ。聞き覚えがあった。

「父さん??」
サンタさんに話しかけると、本当にビックリしたみたいでプレゼントを置かずに帰ってしまった。

母さんは『なにやってんの!!』という顔でサンタさんを見ていた。

でもまた寝て起きればプレゼントが置いてある。あれー??

「ねぇ母さん、サンタさんって父さんなの?」

「なんで??」

「だってさーあのくしゃみ…」

母さんはニコッと笑っただけだった。父さんは新聞で顔を隠す。
これ以上聞いたらダメなんだなと、子供ながら雰囲気を察した。

そして次の年の12月24日。
もう正体は分かっている。
布団に入った。

すると、すぐに去年見たサンタさんが白い大きな袋を持って堂々と部屋に現れた。
あのくしゃみがなかったら、見た感じは全く父さんだとはわからない。やっぱり違ったのかな?とも思った。
声もやたら低いし、ゆっくりだし。

「サンタさんに会ったことは、学校の
お友達にも絶対にヒミツだぞ。
プレゼントが消えてしまうから。約束できるかい?」と、話す。
あくまで“みんなのサンタさん”を演じていた。

コクリと頷く。
サンタさんの口元のヒゲが横に動いた。

物心がつき、反抗期を迎えても同じスタイルでプレゼントを渡された。

「子どもじゃないんだから、もうそんな格好しなくていいし、プレゼントなんていらねーよ!!」

つき返す。

それでも毎年毎年続いた。

20歳の12月24日。
サンタから手紙が渡される。

「ありがとな。がんばれよ!!」

年明けから家を離れる僕へのメッセージは大きな便箋に一言だった

急に涙が溢れる。

こうして僕の家のクリスマスは、毎年いろんなドラマが繰り広げられたのだった。

21歳の12月24日。
僕は実家へと急ぐ。
赤い服にヒゲをはやしたメガネのおじいさん。
白い大きな袋にプレゼントを2つ詰めこんで。

ピンポーン…

ゆっくり低い声で
「メリークリスマス」

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