裁定取引残の理解を深める - 裁定残減は調整終了のサイン?

裁定取引残は、CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)など短期投資家による先物取引の実態を推測する指標の一つです。

裁定残が大きく積み上がっている場合、短期投資家の建玉も増えていると考えられ、過去比で上限に近ければ市場の一時的な天井や底を示すシグナルとなることがあります。一方で、裁定残が縮小している場合は、調整が一段落した可能性があると言えます。相場の方向性を探るシグナルの一つとして有効です。
また、日経型が大きく積み上がっている場合は、そのアンワインド局面でのNT倍率の変化予測にも活用できます。

裁定残とは?

裁定取引とは、先物を売買する主体(例:CTA)と、先物と指数現物の価格差が広がったときに証券会社が行う取引のことです。証券会社は、裁定取引として行っているポジションの残高を取引所に報告する義務があり、これは空売り規制やファイナンス銘柄規制の回避に有効です。
取引所のホームページでは、日次および週次のデータが確認できます。

先物が売買され現物指数とスプレッドが拡がった機会に裁定取引が行われるので、先物取引の実態を推測する「影」として裁定残を活用できます。

裁定残に関する注意点

裁定取引残高は全ての証券会社や指数関連ポジションが報告されているわけではありません。例えば、指数バスケットを保有していてもデリバティブのヘッジとして利用されている場合もあります。また裁定取引であっても、空売り規制やファイナンス銘柄規制のメリットがない場合(投資銀業務のない外資系証券など)、通常の取引と区別せず、報告しないこともあります。実際に取引所に報告を行っている業者は限られているため、裁定残が市場全体の状況を完全に反映しているわけではないことには注意が必要です。

裁定残が示すもの

それでも、裁定残は裁定機会がどの程度あったのか、また過去と比較して現在の裁定残が多いか少ないかを測る指標として活用できます。

日経型とTOPIX型の違い

裁定残は、日経平均株価(Nikkei 225)とTOPIX(東証株価指数)を区別せずに報告されますが、それぞれの指数の割合を推測することは可能です。週次の金額ベースのデータと日次の株数ベースのデータから単価を算出することで、日経型とTOPIX型の裁定残の割合を推測できます。日経平均とTOPIXは、構成銘柄の1株あたりの単価が大きく異なるため、この方法が有効です。

日経型の裁定残が大きく積み上がっている場合は、短期筋の日経先物の建玉が大きくなっていることが想像され、このアンワインド局面ではNT比率の変動も期待されます。

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