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減塩台湾攻略⑥2023.12/29後編

パンダ納めin台北動物園

 台北動物園には私と誕生日が一緒のパンダ「圓仔」がいる。訪ねるとちょうど食事の時間だったが圓仔はバックヤードにいるようだった。今日は母親の「圓園」と妹の「圓宝」が屋内と屋外に別れてもぐもぐしていた。

動きが早すぎてブレる
お目目くりっくりの美人さん
肉まんのような頭のシルエット

 最近は上野も白浜も成都ですら混雑を回避してパンダを見ることが出来ないらしく、正直少し足が遠のいている。
 この何度目かわからないパンダブームのはるか以前から各所のパンダに会いに行っていた身からすると、行列して人にぶつかり文句を言われながらパンダを見て何が楽しいのか?と思う。
 白浜の良浜雄浜の姉弟プロレスを貸し切り状態で見て、雅安碧峰峡や長隆でもマンツーマンでパンダと鳴き交わした(プゥ、と鳴くとプゥと返してくれるのだ)。仔パンダ名前募集に応募した結果現在名付け親となっているパンダが4頭ほどいる。名付け親特権で直接対面もし、隆浜秋浜帰国時には早朝空港に向かう前のお別れセレモニーにも駆け付けた。だからパンダを愛でたい気持ちは人一倍ある。だが、パンダを見るのはゆとりの産物。ゆったりとした気持ちで眺められないくらいなら見に行かない方がいい。とんでもないへそ曲がりの偏屈BBAであることは重々自覚しているが、せめて年の瀬には心穏やかにパンダを愛でさせてほしい…台北動物園の列形成は割り込みも居座りもなく、そこまで熱狂的なパンディストも少ない分、ストレス少なく見られてありがたかった。(動画配信者とかもいなかった)
 アクティブに動くコアラも観覧して、新しく出たパンダグッズもチェックして退園。台北動物園、いつ来ても奥に進めないまま退園しているのは少し申し訳ない……

猫空で冷凍茶

 動物園を出て、ミニバスで猫空の山道をぐねぐねと登る。夫お気に入りの茶坊で冷凍茶を喫するのだ。

下車するバス停を間違えたおかげで茶畑を見られた

 我が夫の面倒くさくかつ愛すべき癖として「自分が美味しいと思ったものは妻にも飲み食いさせないと気が済まない」というものがある。今回小籠包を食べに行った2軒とも夫お墨付きの「俺が美味いと思った店」である。そして長年「猫空の冷凍茶が美味い」と言われ続けていた。そのような理由で猫空訪問は夫積年の望みなのである。

冷凍茶


乾燥していないので180gもある
深夜3:00まで開いてるって???

 腎不全末期を宣告されてからというもの、口に入れるものには慎重にならざるを得ず、それは飲み物についても同様であった。毎朝食後にはその日の気分で異なる茶を入れてきたが、その習慣もすっかり間遠になり、ごく稀に茶を淹れても、1杯飲むか飲まないか。飲酒に関しては全くしておらず(なので10kg痩せた)、家でも職場でも飲むのは水か白湯。外食時に出されるお茶は飲む、という状態であった。
 事前に凍頂烏龍茶に含まれるカリウム含有量について調べたが、明確な量は分からない。主治医からは「100%の果汁や野菜ジュースは控えるように」とは言われていて、お茶については「あまりがぶがぶ飲まなければいい」と言われていた。カリウム量チェックサイトでは日本茶、特に玉露のカリウム量が恐ろしいことになっており烏龍茶については150mlにつき20mgとあるが、この烏龍茶が「サントリーの烏龍茶」的な物であれば凍頂烏龍茶とは別物と考えたほうがいい。
 結論から言って、久しぶりの凍頂烏龍茶は美味しかった。夫が妻に飲ませたい飲ませたいと言うのも、そりゃそうだろう、という甘露であった。
 冷凍茶とは、発酵途中の茶葉を冷凍して、発酵を止めた状態なのだろうか。がちがちに凍ったパッケージから霜をまとった茶葉を引っ張り出し淹れる。普段飲んでいる乾燥した茶葉のお茶よりも香りがいい。
「好喝」
と言うと、店主がにこにこと親指を立てて「好吃じゃなくて好喝と言うのは正しい」的なことを言ってくれる。

夏は涼しそう。でも素通しなので蚊が入ってくるかな?
客席の間横を通って奥に止められているバイク(笑)

 店内は天井が高く、床はコンクリート打ちっぱなし。大きな窓が池と茶畑に面している。カウンターの向こうには茶菓子がぎっしりと並び、スナック菓子やカップラーメンまで何種類も並んでいる。
 いわゆるシャレオツ茶芸館の趣とは異なり、店の中をバイクが横切れば、猫も横切る謎空間で、本棚には漫画がぎっしり。隣の部屋にはバイクが止まっていて、もしかすると茶摘みの時には作業場になるのだろうか?
 夏場だともしかしたら蚊が多いのかもしれないけど(外と素通しなので)、今は大きなストーブが焚かれていて寒さは感じない。
 

台湾の若人はスナックをつまみながら台湾茶を喫するのだろうか
このごちゃごちゃ感に親しみを感じる
瓜子にヒマワリの種に豆菓子にカップ麺
ドライフルーツに茶梅。お茶請けなら何でもある
ナルトとるろ剣
ブリーチ

 これはもうとにかく何時間でも好きにのんびりしろってことだな?と理解し日記を書いたり持参した太陽餅やフロランタン(YATSUDOKI製)虎屋の小型羊羹をつまみながら延々と茶を喫した。お湯は沸かしたてのが汲み放題。  
 19時を過ぎるあたりからぽつぽつと客足が増え始める。やってくる客には蚊取り線香とごみ箱を手渡し、別棟を案内しているので貸し切りなのである。こういう気取りのない空間が夫の好みにも合ったのだろう。
 そして、以前からパッサパサで食べにくいなーと思っていた太陽餅が、美味しいお茶と一緒に食べるとそれはそれは素朴で、お茶の味を邪魔しないスイーツであることに気づいた。次来るときも太陽餅を買ってから来ようと思うくらい。

茶摘み道具が無造作に。奥のレンガ積みは保管庫?
店内は結構広い
お茶の賞を取りました

 どのくらいぼんやりと過ごしただろうか。あたりがすっかり暗くなったしお腹もさすがにちゃぽちゃぽなので、店を辞することにした。
 猫空ゴンドラの駅から最寄りのMRT駅までのバスがあるというので、山道を歩いていく。ゴンドラ駅までの道なりには何軒ものレストランや茶芸館があり、そこそこ明るく歩いていて不安を感じるほどではない。虫の音やカエルの泣き声を聴きながらのんびり夜散歩を楽しんだ。
 

ぼんやり明るい
派手に明るい
下界が霞む(写真が下手だから)
お土産屋さんも明るい
ゴンドラで帰ればよかったんですよ

この旅最大の危機

 で、ゴンドラではなくMRT駅行のバスに乗ったのがこの度最大のミスチョイスであった。このバスがまあ、結構なスピードでぐねぐねの山道を下るのである。大人になってそこまでひどい車酔いをしたことがなかったので忘れていたけれど、バス酔いをする子どもだった。
 なんとか駅までついてMRTに乗車はしたものの、気分が悪くなり1駅で下車してしまう。頻脈(シャントがものすごい勢いでビビった)・目まい・吐き気・あまりのふらつきに起き上がっていられずベンチで横になる。
 頭の中はぐるぐると「冷凍茶の飲み過ぎで高カリウム血症?」「それともカフェイン過多?」「シャントが入ってます、って英語でなんて言うの?」
とにかく吐きたいのに吐けない、もしかしてこのまま意識を失ったら死んでしまうかも、という不安に駆られて目を閉じるのも怖い。
 もう大丈夫か、とMRTに乗り込むも2駅で下車を繰り返し、最終的にトイレで出すものを出して、救急車を呼ぶことなく2時間かけてホテルに戻ることが出来た。  
 この間、夫はベンチで横になる妻の為に膝枕をしてくれたり、他目的トイレの中まで付き添うなど、慌てることなくずっと辛抱強く寄り添ってくれた。昔だったら腹を立てて妻を置き去りにしてもおかしくないモラハラ野郎だったけど、成長したなぁ…などと感慨深くなってしまうが、笑い事ではない具合の悪さだったので「死なないように生きる」をモットーに今後は慎重にならなければ。

   



 
 
 
 

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