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SARU下

征服者フランシスコ・ピサロの暗躍により、
アングレームの地下に眠っていた大猿=”SARU”がついに覚醒………!
各国が最大規模の軍事力をもってその力を封じようと試みるも、
ダメージを与えることすら出来ず、
驚異的な速さで世界中を蹂躙する”SARU”。
そんな中、エクソシストのカンディドら一行は、
特別な魔力を持つビエラ・カリにわずかな望みを託す。
世界が見守る中、宇宙へ向けて響き渡る”魔法”
果たして人類の運命は?
戦いの果てに示された驚くべき事実とは!?


下巻のあらすじです。
カバー裏に書かれたものを引用させていただきました。

征服者ピサロや宣教師ザビエルが復活して暗躍していたり、
SARUが覚醒したり、
エクソシストが、魔力が、宇宙が……

とんでもない世界が展開していますが、
漫画を読めばこの話に真実味があるのだからすごい。

ダンスについて。
五十嵐さんの絵だからこその説得力。
何が「その通り」だよ!
と、普通ならツッコむところです……

歌について。

星を動かす……!?

と、途方に暮れつつも、
一方で確かに、
歌が「本来は複雑な因果関係を経て辿り着くハズの結果」を、
「いきなり目の前に持ってくる」ものだというのは分かる気がします。

ダンスと歌は、
現代の最もポピュラーなカルチャーといっていいと思いますが、
その内容はといえば、(もちろん様々ですが)
本来人生の中で時間をかけて気付くことを5分やそこらで、
歌いあげてしまうのですから。

失恋の歌は5分で聴けても、
5分で失恋なんて現実にはあり得ません。

古代から変わらない歌の本質を垣間見た気がして、
ちょっと震えた個所です。


しかし、
これほどに深い、多層な世界へ、
物語をつかって降りてゆくと、
現在・現代の小ささを実感せざるを得ません。

誰が勝ったとか、負けたとか、成長したとか、
それはすごく限定された世界の話で、
同時進行するより深い層では、
肉体を進化させたSARUと、精神を進化させた”猿”の、
パワーバランスが崩れて自然界の秩序が……
なんて話なのですから。

そもそも、SARUと”猿”は元々一つの存在があるとき分かれたもので、
勝つとか負けるとかはないわけです。
どうバランスをとるか、どう全体の秩序を回復するか、
そういう発想で動いている。

”猿”は特に何のとりえもない奈々を、旅の最後まで連れて行きます。
「可能性は多い方がいい。」大きな態度でそう言うのです。

今消えゆくもの、敗れていくもの、
そういったものを、未来に向けてどう包摂していくかということを、
もっと真剣に考えるべきではないか。

普段はあまり考えないはずのそんなことを考えました。

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