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電気自動車の火災対策条例と将来予想

米株市場では,2月25 日ころより電気自動車の雄・テスラ($TSLA)の株価が大きく下げたことから,押し目買いを狙っている投資家が多いようです。
さて,一方の欧州ではドイツ・クルムバッハ市で新しい条例が制定されました。地下駐車場への電気自動車の乗り入れを禁止するものです。
これを受けて電気自動車の将来動向を予想してみました。

1.電気自動車の乗り入れが禁止

2月12日,ドイツ・クルムバッハ(Kulmbach)にあるEku Platz地下駐車場では,電気自動車(BEV / PHEV)の乗り入れが禁止されました。
きっかけになったのは,昨年9月に起きた同駐車場での車両火災でした。燃えたのは古いVW Golfで,もちろん電気自動車ではありません。
幸い火災警報やスプリンクラーが動作して無事に消火されたようですが,その後の補修工事などで,つい先日まで閉鎖されていました。
2月中頃から再び営業を開始したのですが,電気自動車の乗り入れは禁止されることになりました。

2.なぜ乗り入れが禁止されたのか?

電気自動車の乗り入れ禁止には,以下2つの理由が挙げられます。

1つめの理由は,ご存じの通りBEVやPHEVなどプラグ充電が可能な電動車両は,高電圧バッテリーとしてリチウムイオン電池が使われている点です。
リチウムイオン電池に使われている電解液は可燃性で,酸素と反応してよく燃えます。そのため,発火した場合は完全水没させるか,電解液がすべて燃え尽きるまで放置する以外に,消火する手段がありません。
2つめは,多くの地下駐車場は鉄筋コンクリートで作られている点です。
鉄筋コンクリートは,短時間の火災には耐えることができますが,熱を加えすぎるとコンクリートが割れ内部の鉄筋が溶けてしまうため,車両が鎮火するまで放置することができません。同時に火災時に発生するガスにはフッ化水素などの有毒な成分を含むことも状況を難しくしています。
また,発火した電気自動車を水没させるための消化ケースは,非常に大きく地下駐車場に持ち込むことができません

消火ケース


3.これから起きること

1つは,駐車場に関する法規の改定が考えられます。
地下駐車場に専用の消化設備や換気設備の導入が義務付けられるでしょう。それらの設備を持たない地下駐車場への電気自動車の乗り入れが禁止され,屋外駐車場があてられると考えられます。

2つめは,より消火しやすい車両構造が要求されるでしょう。
たとえば,ルノーZoe や Kangooはバッテリパックに消火用の注水口をもち,消火しにくいバッテリーを直接水没させる構造を採用しています。
こういった構造も電気自動車を普及させるために法規化されていくものと予想します。

画像3

ZOEのバッテリパック構造

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燃えるZOEを外部から消火する様子
(注水口がリアウィンドから狙えるようになっている)


4.まとめ

電気自動車が一般の手に届くようになるにはもう少し時間が必要と考えられます。普及のためには,充電器だけではなく様々なシチュエーションを想定したインフラの整備が必要になるためです。
ニッチだが必ず必要となる市場を見つけることで,あたらしい投資のアイディアにつながるかも知れません。

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