これから「作家で印税生活を目指す」場合に必要な権利関係の豆知識

鬼滅の刃が空前絶後の売上を見せ、話題となっている。

出版不況と言われて久しいが、定期的にメディアミックスが成功することで、夢の印税生活に憧れて小説や漫画などの作品を作ってみようと思う方も居るかもしれない。特に昨今の新型コロナウイルスの流行に伴い、在宅ワーカーや転職者の作家が増えることが予想される。購買層も在宅期間や余暇が増えて、電子書籍や出版物の売れ行きが好調になり、市場全体でも少し活気を取り戻す可能性も有る。

最近では電子書籍を販売するストアもオープンになりつつあり、無名の作家がコストを掛けずにストアへ作品を登録し、ほぼリスクなしで製本コストを丸々カットしつつ本を販売できるようになっている。その分、ストアへの販売手数料を除いた高い利率で利益を享受でき、出版社と取引のできなかった作品を作る技術力のある作家に門戸が開かれつつある。有名なサイトで言うと、Pixiv運営のboothやKADOKAWA運営のBOOK☆WALKER、全年齢向け以外に成人作品なども扱うDLsiteやFANZAなどが候補に挙がってくるだろう。全年齢向けでも出版社からのスカウトがあったりとチャンスは広がっているが、購買層が多く安定的に利益を出しているのは圧倒的にDLsiteやFANZAなどで販売されるR18の同人作品が中心だ。また、商業作家とは異なり、印税ではなく売上で利益が決まる点にも注意が必要である。電子書籍でマージンを削減できる反面、返本制度という特殊な販売制度に則った商業での出版ではないため、本を出してさえしまえば出版社から発行部数分の支払いが約束される仕組みではない。完全に知名度や実力そして需要で利益が左右されてしまうのが弱点だ。

では、市場が閑散としていてハイクオリティの作品を求められがちな全年齢向けの作風の場合、仮にチャンスに恵まれたとして、商業へ行った方が良いのだろうか。

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