おっさんは風俗嬢と食事にいきたい。【5】お持ち帰りされたい!
「お持ち帰りされたい!」
プレイ後に、とんでもない言葉を放ったモエカちゃん。
こんな直接的なことを言われたのはもちろん初めてだった。しかも初対面だ。
「おいおい、冗談でしょ」
色恋営業かもと思いつつ、これを言われてうれしくない男はいない。
ただ、顔では冷静さを保とうとしていた。
「嘘じゃないよ。本当に思ってるの。お持ち帰りされたいなぁって」
モエカちゃんは少し焦ったような口調だ。
「私、この後もう1枠だけ入ってるから、その後会おうよ」
怖いもの見たさも多少あり、風俗嬢からのはじめてのお誘いを受け入れようと思った。
「うーん。わかった。じゃあ普通に飲みに行こう」
当時はLINEではなくてメールの時代だったけど、メールアドレスの交換はせず、時間を指定して千葉駅の東口改札で待ち合わせすることになった。
今考えれば、アドレス交換をしなかったのは、その時間そこにモエカちゃんが現れなかったら、それはそれでいいような気がしたからだと思う。
1時間後、改札で待っていると、手を小さく振りながらモエカちゃんは笑顔で駆け寄ってきた。
一度そこで待ち合わせしてしまえば、「あの2人はソープ嬢と客だ」などと誰も詮索しないだろう。
街を歩けば、簡単に週末の雑踏に紛れてしまう。
千葉駅の駅前ロータリーを越えるとすぐに安い居酒屋が点在している。週末とはいえ、場所には困らない。僕らは学生が行くような安い居酒屋に入った。ガヤガヤとうるさい居酒屋だったが、そういう空間だからこそ会話の内容にも気をつかわずいられるし好都合だと思った。
乾杯をすると、一瞬で中ジョッキが空いた。結構飲める子だな。
僕はお酒には弱いのだけど、この頃、仕事が激務だったこともあり、毎日必ずお酒を3、4缶開けてしまうアル中一歩手前の状況だった。
飲むのが好きだった。人と一緒ならなおさらだ。
二人の間で、中ジョッキがものすごい勢いで空になっていく。
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