七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第279回 春遠からじ(シェリー)
The trumpet of a prophecy! O Wind,
If Winter comes, can Spring be far behind?
(予言のトランペットよ。おお、風よ。冬が来れば、春は遠くない)
英国ロマン派の詩人、パーシー・シェリー(Percy Shelley, 1792~1822)の「西風賦(Ode to the West Wind)」の結句。この春を予言する最後の1行は、今に至るまで人口に膾炙している。
この詩は1819年、イタリアの古都フィレンチェを流れるアルノー川近くの森を散策しているとき、嵐を呼ぶ空模様を見やって感興を得た。
シェリーは富裕な貴族の家に生まれ、オックスフォード大学に進学するが、無神論を主張したため放校処分となった。その後も当局から危険思想家とみられ警戒された。
1816年に前妻のハリエットがロンドンのハイドパーク内の池で入水自殺した。それから間もなくシェリーは小説家のメアリーとロンドン市内の教会で結婚する。その後、二人はイタリア各地を転々としながら執筆活動を続けていた。
この詩を書いた3年後、乗っていた帆船が暴風雨に襲われ沈没し、シェリーはスキャンダルまみれの短い生涯を閉じた。
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