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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第165回 悲しい哉 秋の気たるや(宋玉)

悲哉秋之為気也
蕭瑟兮 草木搖落而変衰
撩慄兮 若在遠行
登山臨水兮 送将帰
(悲しい哉 秋の気たるや 蕭瑟(しょうしつ)たり 草木、搖落(ようらく)して変衰す  撩慄(りょうりつ)たり 遠行に在りて 山に登り水に臨み まさに帰らんとするを送るがごとし)
※  蕭瑟はさわさわ鳴る音、搖落は吹き散る、撩慄は悲しみ傷む

 『楚辞』17巻のうちの第8巻「九辯(きゅうべん)」の冒頭。
― 秋の気は悲しい。さわさわと鳴る秋風に草木は葉を揺らぎ落とし、色を変える。心は傷み、遠く旅路にあって山に登り、水辺に佇み、故郷に帰る人を見送る気分である。―
 『楚辞』は屈原(前343?~前278?)の作と伝わる。屈原の伝記は『史記』に掲載されている。しかし、屈原の生涯についての『史記』の記述の信憑性や、本当に屈原が『楚辞』の作者であるかについては、昔から疑問が呈されている。また、『史記』の屈原伝は、司馬遷の作ではないという説もある。
 「九辯」は屈原の門下であった宋玉の作と言われている。掲出の詩は、宋玉の作品のなかで最も有名で、〝宋玉悲秋〟という言葉を生み、後世の文学に大きな影響を与えた。

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