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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第277回 冬の歌(ウラ・ハーン)

Als ich heute von dir ging
fiel der erste Schnee
und es machte sich mein Kopf
einen Reim auf Weh.
(今日、あなたの家を出たとき、今年初めての雪が降った。
 そのとき私は、悲しみに合う一つの韻を連想した)
 
 ドイツの現代詩人、ウラ・ハーン(Ulla Hahn,  1946~)の「冬の歌(Winterlied)」の第1連。恋人と韻が合わなくなり、一緒にいても距離を感じるようになる。どうにもならない互いの心のすれ違いを嘆く。
 ハーンはライン川下流のケルンの近郊で生まれた。ケルン大学でドイツ文学や社会学を学び、博士号を取得した。ラジオ・ブレーメンのジャーナリストとなり、主に文学番組の編集を担当する。1978年からはハンブルク大学やブレーメン大学で講師を務めた。
 1970年代初めから詩集の出版を始める。それが評論家、ライヒ=ラニツキの目に留り、1981年のフランクフルトのブック・フェアで大々的に宣伝した。その結果、詩集『考える先に心(Herz über Kopf)』は大ベストセラーとなる。また、保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ』がハーンの詩を掲載し、瞬く間に有名詩人となった。
 ハーンは抒情性豊かな恋愛詩を得意とし、この時代でも美しい抒情詩が書けることを証明した。1990年代からは小説も書き始め、第1作『女のいえに男がひとり(Ein Mann im Haus)』は日本語にも翻訳された。
 

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