七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第296回 時間とは何か(アウグスティヌス)
quid est ergo tempus? Si nemo ex me quaerat, scio; si quaerenti explicare velim, nescio.
(では、時間とは何か? 誰も私に問わなければ、私は知っている。だが、誰か問う者に説明しようとすると、私は知らない)
古代ローマ帝国末期の神学者、アウグスティヌス(Aurelius Augustinus, 354~430)の『告白(Confessiones)』第11巻第14章から。ここでは、<知る>ことの意味を<理解している>と<説明できる>とに使い分けている。
アウグスティヌスは、現在のアルジェリアでキリスト教徒の母と異教徒の父のもとに生まれた。長じてミラノに出、弁論術の教師となる。最初はマニ教を信仰していたが、後にパウロの書簡に接してキリスト教に回心した。
30代でアフリカに帰り、仲間とともに修道院生活を始めた。このとき定めた規則が〝アウグスティヌスの戒則〟と呼ばれ、中世におけるキリスト教修道院の規範となる。
『告白』は、397年から398年に書かれた自伝。青年時代の罪の告白や回心に至る経緯を詳しく述べる。そのなかでかなりの紙幅を割いて時間論を展開している。
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