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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第280回 孝女白菊の歌(落合直文)

こゝやわか家のあとならむ
そや父母の死体(カラ)ならむ
てらす夕日のかけうすく
ちまたの柳にからすなく
 
 明治期の詩人、落合直文(おちあい なおぶみ, 1861~1903)の長詩「孝女白菊の歌」から。1877年の西南戦争で薩軍について戦死した父を白菊がしのぶ。井上哲次郎の漢詩をもとに新体詩調に表現したこの詩は、1888年から翌年にかけて雑誌に分載された。この西郷滅亡の陰に咲いた少女の歌は唱歌となり、大ヒットした。
 落合は仙台藩士の家に生まれ、国学者落合直亮の養子になった。伊勢の神宮教院で教育を受けた後、上京し、二松学舎、東京大学文科大学で学ぶ。その後軍隊生活を経て、現國學院大学の教師となった。それ以降、第一高校や東京専門学校などで教鞭を執りながら、国文学者として活動する。
 1889年には森鴎外らとともに新声社を結成し、共訳詩集『於母影(おもかげ)』を刊行した。これは日本近代詩の形成に大きな影響を与えた。
 掲出の「孝女白菊の歌」は「桜井の訣別」と並び落合の新体詩の代表作とされる。

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