逃避

確かに所有していた四肢が
いつしか鉛にすり替わって
重く軋んで動かない。

脳から垂れた憂鬱の尾びれ、
目の覚めるようなどろどろの群青。
瞼の裏から呼気に逃げ込み
きっと二度と出会えない。

昨夜芽吹いた眼球と、
一昨日羽化した心臓と、
ほんの少しの肉片を連れて、
コンクリートのヒビに隠れる。
ルージュと煙の乾いた匂いで
愛しい肺は干からびた。

時計の秒針歪んでいるから、
今以上を構築しても
もうあの赤には会えないな。

#小説 #詩

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