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#眠れない夜に

落下

特に理由はなかった。 これと言って何かあった訳でもなかった。 唯、街に数個しか無い高層ビ…

m.
1年前
6

スイカズラ

走馬灯のような夜だった。 まるで、走馬灯のような夜だった。 背の高い建物は何もないのに、…

m.
2年前
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雨の合図

青々とした空、一輪の雲さえない青空。 その空の隅っこに、薄青色のリボンが結ばれている。 も…

m.
2年前
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ラズベリーのゼリー

合成されたチェリー味のキャンディで 舌が赤く染まってベタついている。 少し前から、鈍色の…

m.
2年前
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シェルター

雨粒が、やけに酷く音を立てて 窓硝子を何度も叩くので 重い脳を無理矢理持ち上げ 完全遮光の…

m.
2年前
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雨の街

鈴蘭の街灯がぼんやりと、雨に濡れた寂れた街を、憐れむように照らしている。 通りには人影は…

m.
2年前
4

オートマチック

ニオイスミレの居住地で 川縁の白線の如きナルキッソス 水面映る細胞と水面浮かぶ細胞へ 倒錯して陶酔して錯乱して ナルキッソスの花弁を食らう ナルキッソスの花弁を食らう ナルキッソスの花弁を食らい 耽溺して溺愛してそうして思惑へ 激昂した後 踏み躙る 現世と夢の境の白線 ヒナゲシの笑い ヒナゲシの笑い ヒナゲシの笑い 夢と現の境の白濁 白線の向こう 靴底の辿り着く先 白百合の芳香 白百合の芳香 白百合の芳香 靴底にへばりついた 着色料の粘着質な青 アルデヒドに肺胞を浸

解剖図

言葉の解剖手術をしませう 落書きだらけの穴だらけ 酷く古びたトタンのその 数センチ下に捨て…

m.
2年前
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冬の鱗粉

冬が世界を白く凝固させている。 灰色に分厚く塗り固められた空に、刺すように吹く風も、靴底…

m.
2年前
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