『女のいない男たち』を読んで
Kindleで発売されたときにすぐには読まずにずっと積んであった本だ。映画ドライブマイカーを観た直後に読もうと思ってダウンロードしていたが半年以上を経てやっと読み終えてた。
私は村上春樹さんの作品をすごく読んでいたときがあり、しばらくずっと読んでいなかった。娯楽がたくさんある中で小説の順番は落ちていたし、そもそも娯楽を楽しむ心の余裕もなかなかなかった。話題になっているからという理由でドライブマイカーの映画を観てこういう気持ちが今の自分に必要なのかもしれないとまた村上春樹作品を手にしている。自分を形作ったときに触れていたものにもう一度触れてみて自分の原材料がなんなのかを見つめ直しているときに、避けて通るわけには行かなかった感じだ。
小説という形は私の気持ちを落ち着けるのにちょうどよいスピードの娯楽だと思う。集中力や羞恥心の関係で映画やドラマ、ゲームなどはなかなか多くは観ることができない。(この点マンガが自分に合っているが、マンガ表現されているものは必ずしも私が一番求めているものではないかもしれない。)小説は自分のスピードで読むことができ、自分が欲したところだけ頭の中で形にしていると思う。飛ばしてしまったり、逆に集中して何度も繰り返したりが自在にできる。この自分のペースで取り組めところが、自分の心と寄り添うことにちょうどよく、心を癒したり逆撫でたりを良い加減でやってくれるのだ。実用書ばかり読んで自分に何かを足さなければと焦っているが、すり減っている心の調律を合わせるのにフィクションの力がとても効くと最近やっと気づいたようだ。
映画の元になったドライブマイカー、シェエラザード、木野を中心に読んだが、ああこれがあの印象に残る美しい映画になったのかと思い、観てしばらく経っていても残っているドライブマイカーという映画に私は心を揺さぶられたのだなと思う。
裏切られたり、失ったりすることの体験ができ、読み終えあ後に脱力感があった。この本で体験したことを実際には体験しなくてすむならそうしたい。
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