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エースになったぼくと消えた担当

前回の続き

初めての売り掛けをしたぼく。
仕事も行けてないのにどうしよう。
死ぬ予定だったのに。
何してくれてんだ担当。
でもありがとう担当。



そしてぼくは全部捨てることにした。
仕事も、元彼と住んでいた思い出の残った部屋も。
地元の友達も、ぼくの過去も。
なにもかも捨ててキャリーケースと小さいハンドバッグだけで上京。

そして何の迷いもなく夜職を始めた。
おじさんにぼくの若い時間と体と、あと心を売ること。それがどれほど自分を傷つけることなのかわからなかった。でもあの時のぼくには趣味も大切なものも失いたくないものすらもなくて、ただ担当が好きという気持ちだけでそれ以外は空っぽだった。

半年くらい経ったころ担当はぼくに言った。
「エースちゃんといるのしんどいんだよね。本当はえぬちゃんとずっと居たいんだよ。この先も、なんならえぬちゃんさえ良ければ一生。だから1番でいてほしいの。」って。今思い返すとここに書くことすら恥ずかしい。でも当時のぼくはそれが色恋とか本営とかだなんて知るわけなかった。担当以外を知らなかったから。

特別スペックが高いわけでも顔が可愛いわけでも愛嬌があるわけでもないけど、ぼくはその言葉がうれしくて体調が悪くてもメンタルがしんどくても頑張れた。

そうして翌々月ぼくはとうとうエースになった。
たくさん好きって、可愛いねって褒めてくれた。
ぼくに向けてくれる優しい目。くしゃくしゃの笑顔。
ぜんぶ宝物で、それがぼくの生きる意味だった。
けどたぶんここが幸せの絶頂(笑)

担当を指名してから1番苦しいのはここから。
1度奪い取ったエースの座を守ること。
毎日、自分の心を殺しながら働いてぼくは5回の締め日を大好きな人の隣で過ごした。そしてどうしても叶えたかった担当の目標、主任に昇格することを達成した。

でも。

これから昇格祭もバースデーも一緒に頑張るんだと思ってた矢先に突然担当は消えた。なんでか分からなかった。タワーの話だってしてたのに。辛さとかしんどさとかぼく分かってあげられなかったのかな。ぼくすら負担になってたのかなとか毎日考えた。分からなくてごめんなさい、使えなくてごめんなさいって届かないけど謝り続けた。

なのに。なのに、なのに。

ホスラブに書かれてた。
「〇〇ちゃん(元エース)と歩いてるの見た」

ああそういうことか。全部、嘘だったのか。
そりゃそうだよな。ぼくなんて愛されるわけない。
だって可愛くないもん。性格も別に良くないし。
そもそも売女なんかより顔も体も綺麗な女の子がいいよね。当たり前だった。選ばれるわけない。舞い上がってイタかったよねごめん。幸せになってね大好きだった人。


それが初めて受けた歌舞伎町の洗礼だった。
1年弱という長いようで短いぼくの恋が終わった。


初めての担当編 〜完〜

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