風俗嬢だったぼくの最後の客
昔というほど昔でもない少し昔、ぼくは風俗嬢でした。ホス狂の職業なんで想像通りでしょうけど。
変に夢を持たせないために言いますが、そういう行為はまったく好きでは無かったし、好きでもない人に触られるのなんて無理。ましてや触りたくもなかった。演技だってしたくなかったし、そもそもおじさんと同じ空気なんて吸いたくないですよ。20代の女の子なんだから。
それでも働くのは担当がいたから。担当が生きる意味をくれる最愛の人だったからです。そんなぼくが数年間の風俗嬢生活にピリオドを打つことになった最後の客の話をしたいと思います。
その人はぼくが出稼ぎに行った先に来たお客さんでした。客層が悪いって有名な地方の。でもその人はそんな客層が悪いと言われていた人達とはまた違った雰囲気をまとっていました。なんだか目が座っているというか、キマっているというか。話の通じない少し知的障害がありそうな感じの人でした。
「〇〇ちゃんの写真を見て、めちゃくちゃに壊したらどんな顔するだろうって想像したら興奮して会いたくなって来たんだよ」というのが最初の一声でした。もちろんSMコンセプトのお店ではありません。なんか変だなって思いました。このなんか変だなって予感は確信へと変わることになるのです。
日常会話も確認事項の質問も1つも噛み合わない。
なんなら「服切り刻んで脱がせていい?」とか「骨折ってみたい」とか"壊したい"の内容が具体的になっていきました。そして「今日会うために色々と準備してきたんだよ」ってなにやらガサゴソし始めたんですよね。
ナイフでも出てくるんだろうか、ぼく死ぬんだろうかって怖くて直視できなかった。そして咄嗟に「お風呂行ったあと考えよ?????」とか言ってその場をギリギリ回避しました。
とは言ってもお風呂の間も「怖がって泣いてる顔エロそうだよね」とか怖がらせたいのかそんなことばかり言ってきてさすがに逃げないとやばいって焦り始めました。でもぼくはとてつもなく鈍臭いので逃げるタイミングも掴めず、「来週までいるからもう1回会える?🥺その日までLINEしてちゃんと〇〇さんのしたいこと全部盛り込んだ楽しみな計画立ててからそれはしようよ!私も楽しみだなあ💗」って問題を先延ばしにすることしか出来ませんでした。
それで回避できて何事もなくその日は終われたから今日もぼくは生きてます。死にたがりだから別に死んでも良かった気もするけど。
結局なにをしようとしていたのか真相は分からないままその日ぼくは出稼ぎ先から飛びました。
ちょうどそのとき担当とも喧嘩していたし、風俗を続ける気力も残らなかったので何の躊躇いもありませんでした。
このことは薄っすらとしか言えないままお別れしてしまったし、怖くて辛くてしんどかったあの日ぼくは1人ぼっちで泣きました。なんて虚しい人生なんだろう。
ぼくはこれから先、命をかけてまでこんなことをしたいと思える人にもう出会えないでしょう。だからどうかぼくと仲良くしてくれているホストのひとたち、いや、お姫様を持つ全てのホストさん。命をかけてもらえるくらい自分が素敵な人間だということに自信を持ってください。そしてとびきりの感謝と愛情を伝えてあげてください。付き合うとか結婚するとかじゃなくても、どんな形であれ幸せにしてあげてください。
そんなことがあってからぼくはこれからの人生、普通に平凡にただただ幸せに生きたいと願って今幸せとやらを探している途中です。当たり前じゃない日々と目の前にいる相手を大切に。
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