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昔のアドレス帳に 愛を封じ込めて

ある晩、大学時代、同じクラスの友重くんが
バイクの免許を取ったと
ガラの悪いピッカピカのアメリカンのバイクに乗って
けたたましい音とともに
わたしの住んでいたマンションの下に現れた。

「乗せてやるけー」と。

友重くんは広島出身だった。

当時のわたしは
そもそもバイクに乗ったことがほぼなかったため
めちゃくちゃ怖くて
バイクのどこをつかんだらいいのかもわからなくて
遠慮がちに友重くんにしがみついた。

友重くんはただのクラスメートで
ボーイフレンドでもなかったし
異性として好きなわけでも
好かれているわけでもなかった。

仲のいいクラスメートだった。

わたしは大学通学に原付に乗っていたものの
バイクはぜんぜん、スピードも
身体に伝わる振動や音も違っていた。

男子がバイクがすきなのがわかるよー。
(ジェンダー的なあれこれは別として、ね)

それ以来、何度か夜のバイクのお供をしたことがあっただろうか。
大学の帰り道に乗せてもらったこともあったような気がする。

自動ドアが開けばそこは残暑の街
手紙なんてとっていても
しかたないさ 心だけが離れてゆく

ハートはもうつぶやかない

友重くんは途中、スペインに留学して
一緒に卒業できなかった。
その後、どうしているのだろうか。


ハートはもうつぶやかない
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実

『REINCARNATION』 1983/2/21


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