マリー@創作

海の底みたいな森でうまれた

マリー@創作

海の底みたいな森でうまれた

最近の記事

命日

東京の街がきんもくせいの匂いに溺れて、またひとつ熱が死んだ。 孵化した罪が、赦されようと呼吸を止める。 きみに手紙はとどかないよ。 オレンジ色の小さな花が言って、ぼくは膝を抱える。 左の腕に、力なく蚊がとまった。 ぼくは彼をてのひらで殺した。 夏が終わった。

    • 台風とぼく

      学校が休みになった。 もちろん、台風のせい。 ユイはテレビゲームに夢中だし、マナはずっとピアノの練習をしている。 ぼくはとにかく退屈で、集めているトレーディングカードを意味もなく眺めている。 外は大荒れだ。 そう、まさに、こんな感じ。 ぼくは一枚のカードを窓の外の景色と見比べた。大きな竜巻の絵が描かれたカードだ。3つの稲妻を含んだ重たい空から、太い腕のように地上にのびる竜巻。灰色の風が、すべてをなぎ倒す。家も車も人も、全部飲み込む。 ぼくは想像を巡らせるうち、この大きな竜

      • 散文詩 001

        夢を見ている。 空に溺れた僕は、 いつのまにか海の底で、 光を仰ぎ、気付く。 ようやくたどり着いたのだ。 遠く 音のない世界で、 息も鼓動も必要のない朝が、 昼を拒み夜に恋をする。 でも、心はあるのだ。 まぶたをとじて、匿っている。 20160817 夜