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下半身不随犬マールの軌跡※前編
■2014年03月20日
宮崎県の「保護犬情報」HPに掲載された
一匹の捕獲犬。
その犬の写真を目にした瞬間、
心が激しく揺さぶられた。
だけど…
![](https://assets.st-note.com/img/1719380066552-cpzuRU72mG.jpg)
その犬が収容されてる場所は、
往復4時間の距離にある
「日向動物保護管理所」…
![](https://assets.st-note.com/img/1719380593342-PjkoTqxGVm.jpg)
私一人(平日)で、犬猫のお世話にあたっていました。
今、その収容犬に会いに行くべきなのか?
今、そんな無責任なことして良いのか?
自責の念に駆られながらも、
往復4時間…施設の子達のお世話を放棄してでも、
その犬に会いに行く事を選んだ。
その犬にとっての「今日」は、
「生」がかかった運命の日…。
何の根拠もないけど、
そう思えてならなかったから…
![](https://assets.st-note.com/img/1719381466284-Xk0co3jWci.jpg)
こうして…
「日向動物保護管理所」で対面したその犬は、
背骨がバッキリ折れてるのが
素人目でも分かるほどだった。
4日間、何も食べない、水も飲まない状態で、
尿も便も数日間出ていないとの事…。
このままでは脱水か尿毒症で死んでしまう!
間に合ってよかった!
今日行って良かった!
![](https://assets.st-note.com/img/1719381609749-uLNjFqrz2E.jpg)
上半身を起こす事すら出来ない…
そんな状態であっても、
この犬は力強い目で「生きたい!」
そうはっきりと望んでいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1719381864416-kBwYDBgd7h.jpg)
と同時に、私もこの犬に生きて欲しいと願った。
決して同情や哀れみではなく、
2人の意見が合致=レスキュー
自然な流れだったと思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1719382060919-7bwGEJp2Yk.jpg)
レントゲン写真で確認すると、
背骨が真っ二つに折れ、
大きくずれていました。
背骨は、脊髄に突き刺さっている状態で
「下半身不随」
だけど、譲渡の道が閉ざされたわけじゃない!
私の元から卒業できる日が必ず来る!
どこから湧いてくる自信なのか
不思議と絶望感はなかった。
■命名「マール」誕生
![](https://assets.st-note.com/img/1719382673866-cepOraZtDp.jpg)
マールとの生活が一週間を過ぎた辺りから
ようやく我を出すようになった。
犬猫の姿が見えると、怒って吠えたり、
「敷物の素材が気に入らない!」と、
びりびり咬みちぎって抗議したり、
「寝かせてる場所が気に入らない!」と、
唸って場所移動を要求したり、
マールは、神経質で自己主張強い性格だった。
上半身すら起こせないため
床擦れ防止の体位交換が必要でしたが…
わずか数日で上半身を起こせるまでに回復!!
下半身麻痺も、いつか治るのでは…?
希望を感じた瞬間だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719383550802-xpMrBDYAsk.jpg)
実は…犬の「圧迫排尿」は、
マールが初めての経験だった。
「ヘタクソでごめんね」謝りながら、
時間をかけての圧迫排尿の日々。
だけど私は…
マールとの時間に幸せを感じていた。
「生きててくれてありがとう…」
こうして生きてる事が奇跡のように感じ、
マールには感謝しかなかった。
肝心なマール本人はどう思ってるのか…?
自信はなかったけど…
![](https://assets.st-note.com/img/1719385766956-lqN647KQNd.jpg)
■自宅を出て保護施設へ
2014年当時の私は、自宅から施設を
往復2時間かけて通っていた。
マールを自宅に置いたまま…
日を重ねるごとに、
マールは後追いするようになった。
「母ちゃん…行かないで!」
![](https://assets.st-note.com/img/1719386217489-kO3d7HCRip.jpg)
自宅より施設での滞在時間が長いため、
マールの保護場所を
施設に移すことを決心した。
![](https://assets.st-note.com/img/1719387118570-DKNxS0aJ1p.jpg)
ボランティアさん達も
「圧迫排尿」を覚えてくれて、
マールはすっかり保護施設の一員に。
![](https://assets.st-note.com/img/1719901475031-VzvlP6IjBa.jpg)
半身不随でも、
立てるようになるかもしれない!
歩くかもしれない!
安静期間を終えたマールの
リハビリがスタートしたが、
マールから伝わるのは
「やる気の無さ」「やらされてる感」
リハビリは無意味なのでは?
違和感が付きまとった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719901498007-EZCmbVvwmo.jpg)
マールは、野生で育った犬ではない。
狩らなくてもご飯も食べれてきた。
逃げなくても殺られる事もなかった。
環境や本能の違いだろうか…
マールは、多少の不自由さを感じているものの、
「立つ」「歩く」事を
望んでいないように感じた。
今の姿のまま、今を生きようとしている…?
そんな風に感じた。
それが犬猫の強さなのだろうけど…
![](https://assets.st-note.com/img/1719901550781-iiYxU3dbSa.jpg)
北海道の技師さんに来て頂き、
リハビリ歩行用の車椅子を特注。
運営資金がギリギリな中での40万円は
本当に死ぬ思いだったけど、
マールが歩けるようになるなら…と、
1%の可能性に賭けるしかなかった。
ほんのわずかでも神経が戻れば
筋力でカバーして歩けるのでは?…と。
![](https://assets.st-note.com/img/1719902112098-gxnBo0SJPL.jpg)
残念ながら…
どんなにリハビリを続けても
マールの神経が戻る日はこなかった。
リハビリを諦めるには
かなりの勇気が要った…。
多額の費用だけではなく、
今まで費やした時間を否定するのだから…
これまでのマールの頑張りを
なかった事にするのだから…
ただただ、悔し泣きするしかなかった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719902659408-eMCd1HPLQq.jpg)
だけど…当の本人、
マールだけは嬉しそうだった。
そうか…なるほどね!
自分の意志関係なく歩行器に乗せられ、
監視のようにずっと見張られ、
あくまでリハビリ用の歩行器だから、
小回りが利かず自由に歩けない。
体を拘束されながらのリハビリ運動。
手から伝わる緊張感。
![](https://assets.st-note.com/img/1719903413732-hLDK3gxKUQ.jpg)
マールにとっては楽しくない時間であり、
プレッシャーだったんだろうな…
最初に感じたマールの「違和感」を
なんでスルーしたのか!
全ては自分の不甲斐なさが生んだ結果に
マールに申し訳ない事をした…
ごめん。
■普通の犬じゃない?!
マールは特に、ボランティアのi君が大好きで、
毎朝、i君が来ると大喜びではしゃいでた。
マールの目線の先には、いつもi君が居た。
![](https://assets.st-note.com/img/1719912124682-nQGQDJlyo7.jpg)
そんなある夜…
圧迫排尿中に大量の血尿!
避妊手術を控えてたこともあり、
「子宮蓄膿症」が頭をよぎった。
私が身動きが取れないため、
一緒に作業してたi君に託すしかなかった。
「i君!マールを病院に連れて行って!」
i君から返ってきた言葉は…
「今から彼女とデートだから、明日じゃダメ?」
カチンときてi君を罵倒ものの、
i君がやっと掴みかけた幸せだからな…と、
予定を蹴ってマールを病院に緊急搬送した。
![](https://assets.st-note.com/img/1719913315877-KgkYYxdZHt.jpg)
重症化した子宮蓄膿症。
緊急オペとなった。
「今夜連れてこなければ死んでたよ…」
獣医さんの言葉に血の気が引く思いだった。
術後、施設に帰ってきたマールは、
あんなに大好きだったi君を見ても
喜ぶどころか、視線すら合わそうとしなくなった。
まるで、そこにi君が居ないかのように…
あのとき病院に連れて行かなかった…
それだけで?
その姿はまるで、
「100年の恋が冷めた女子」に見えた。
このときはじめて「マール」という犬は
普通の犬ではない事に気付きはじめた。
![](https://assets.st-note.com/img/1719914052811-dxvmPJWI3k.jpg)
■譲渡への道のり
マールは、人間に絶対的な信頼を持っていた。
人間に危害を加えることは一切なく、
「おとなしくて穏やかな子」
マールを知らない人達から
そう言ってもらえてたが、実は…
マールにはもうひとつの顔があった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719917377396-iql7xX7FbR.jpg)
マールは犬と猫が大嫌い!
それが子犬だろうが老犬だろうが
容赦なく牙を向ける。
そこには一切の躊躇もなく、
下半身を引きずりながら飛びかかる程の
気性の荒さだった。
だけど…
「下半身麻痺」の犬にだけは優しかった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719916441183-6KDhwUUEzU.jpg)
同じ境遇の子達の痛みが分かるのか?
「下半身麻痺」の犬たちを尊重する心が
マールから感じた。
![](https://assets.st-note.com/img/1719917268684-iFy4xwlDVH.jpg)
強そうな体の大きい下半身麻痺の犬たちも、
マールの前では子犬のようだった。
下半身麻痺の犬たちは、マールの姿が見えなくなると
分離不安でパニックになる。
下半身麻痺の犬たちがここまで慕う
マールの存在とはいったい…?
不思議でならなかった。
歩行器から車椅子に乗り換えたマールは、
心底お散歩を楽しめるようになった。
いつか、マールの足である車椅子と一緒に
施設を卒業する日が来るかもしれない!
私たちは、マールの未来を信じた!
![](https://assets.st-note.com/img/1719935212566-HI32PPCLsL.jpg)
マールは、譲渡会に何度も参加した。
障害犬=かわいそう
障害犬=飼うのは難しい
これらを失くしていきたいと思ったから。
障害関係なくマールは可愛い!
歩けないだけで、普通の犬と何ら変わらない!
多くの人にマールの良さに触れて頂き、
譲渡につながれば!
そんな思いだったけど…
![](https://assets.st-note.com/img/1719978847614-B80PshFc08.jpg)
マールに向けられる「偏見」は、
決してゼロではなかった。
かわいそう…と、マールを見て泣かれたり、
「見世物小屋」扱いだと怒られたり、
障害犬を連れまわして不愉快だと言われたり、
良い事ばかりではなかった。
それでもマールを譲渡会メンバーから
外さなかったのは、
「マールの譲渡を諦めない!」
強い信念…だったのかな?
■マールから嫌われた日
そんな中…
ようやく譲渡が決まった!
…のは、マールではなく
マールの下半身麻痺の相棒
「よっちゃん」の方だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719984316062-YbLcmzPHF7.jpg)
よっちゃんは、マールレスキュー一年後に
同管理所からレスキューしてた子だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719985313032-9z8ObArJOM.jpg)
マールの倍はある体の大型犬で、
よっちゃんの譲渡の道は厳しいだろうな~
半ばあきらめてたのに、
わずか一年で良縁を掴んだよっちゃん!
よっちゃん、保護家卒業の日、
マールも、車までお見送り。
![](https://assets.st-note.com/img/1719984807477-gjSYWwBxsb.jpg)
よっちゃんを乗せた私の車が見えなくなるまで
ずっとずーっと、目で追っていたそう。
マールの心中は…
「よっちゃんをどこに連れていくの?」
だったのかもしれない
![](https://assets.st-note.com/img/1719984987286-EKsR3VLcp9.jpg)
マールがうちに来たこの2年間、
多くの犬たちを見送ってきたマールだけど、
私達同様、マールにとってよっちゃんは、
「ずっと一緒にいるのが当たり前」
よっちゃんは、特別な存在だったのかな…
そのよっちゃんが、待てど暮らせど帰って来ず…
「母ちゃん!よっちゃんをどこにやったの?」
マールは、よっちゃん卒業の日から、
あの日よっちゃんを見送ったメンバー4人全員に
心を閉ざしてしまった…
![](https://assets.st-note.com/img/1719985634654-v8H2vDv2Tx.jpg)
お見送りの日、不在だったメンバーには、
いつものマールなのに、
私達4人には、目も合わせくなった…
![](https://assets.st-note.com/img/1719985686786-UJrMSGkgJh.jpg)
そう…
マールの病院を断ったi君への対応が
ガラリと変わった
2年前のあの頃と同じように…
「母ちゃん達がよっちゃんを捨てた!
次は私を捨てるんでしょう?」
マールは、私にそう言った。
何度も「譲渡」の事を言って聞かせるけど、
マールにはなかなか伝わらず、
心を閉ざす日が続いた…。
![](https://assets.st-note.com/img/1719985800865-mVFYxaq4n1.jpg)
今まで譲渡した先に出向き
ケアに行く事は多々あった。
環境が変わり、戸惑いを隠せない犬達に、
ここがあなたの家だと、家族だと、
安心させるために…。
居残り組の心のケアなんて、
私にとっては初めての経験。
よっちゃんの譲渡先に事情を話し、
マールをよっちゃんのお家に連れて行った。
よっちゃんを決して捨てたんじゃないって事、
よっちゃんは幸せになってる事、
マールに見せて証明したかったから。
よっちゃんは、マールとの再会に大喜び♪
問題のマールはというと、
再会に喜ぶわけでもなく…
「あら、よっちゃん居たのね?
捨てられてなかったのね?」
マールらしいツンデレ対応だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719986634312-jdaLVp9eoY.jpg)
でも、納得はしたようで、誤解は解けたようで、
この日を境に以前のマールに戻った!
![](https://assets.st-note.com/img/1719987008173-ZXyI5AjzyJ.jpg)
ツラツラ淡々と書いている文章だけど…
実は、私が一番、
心にダメージを負う形で終わった。
マールから信頼されていなかった事に
ただただ、ショックだったな…。
だけど、よっちゃんの「譲渡」は、
保健所にも私達にも、そしてマールにも、
「希望」を与えてもらった出来事だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1719988467853-hrv8H5km82.jpg)
…にしても、
この「マール」という犬は
いったい何者なんだ???
![](https://assets.st-note.com/img/1719988668279-ZV9WI3GxZy.jpg)
完全に人の心を見透かす能力がある。
その反面、思い込みも激しい。
自分がそう思ったら、
一切聞く耳もたない頑固さ。
凄いけど凄くない。
マールって…何者なんだろう?
![](https://assets.st-note.com/img/1719988848275-qfeJDeLTOC.jpg)
マールの軌跡の物語は、
多くのことがありすぎて
一回の記事では収まらないので、
後編に分けて書きたいと思います。
後半記事の公開日は未定ですが、
またこのblogにたどり着いて頂けますように…
いつか必ず
マールの全てを書きます。
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