見出し画像

A

私には幼馴染がいる。実家の隣に住んでいる、同い年の女性「A」だ。

Aとの初対面は覚えていない。気付いたら毎日朝からお昼ご飯を挟んで、午後も夕方5時まで遊んでいた。
私は幼稚園の年少に当たる年をAと過ごしたので、3歳より早い時期に会っている事になる。


いつ、どのようにして覚えたのか。ファーストキスはAとだった。

記憶にあるのは、Aの家。2人で遊んでいた時。何を思ったか、どちらかが死んでしまったという設定。キスをすると生き返り、それを互いに繰り返すという、とても未就学児がするような遊びではなかった。
家族の目を盗み、死んだフリをしている相手にキス。場所は唇だった。

笑いながらするのではなく、2人ともシリアスな雰囲気だった。揺り動かしても反応のない相手に驚き、悲しんでキスをすると生き返る。そしてそれに喜ぶ。とんでもない演技だと思う。カメラがなかったからこそ出来た事だった。

もちろん「普通の」遊びもした。一輪車、バドミントン、TVゲーム…。
喧嘩だってした。私の悪い口癖は「それは置いといて」だった。

Aとは高校から違う道に進んだけれど、成人した今でも交流がある。お互い実家にいても滅多に会う事はないし、LINEすらほとんどしないけれど、誕生日を祝ったり、(今は出来ていないけれど)年末か年始には呑みに出掛けていた。

呑みに行くとは言っても、飲み放題はいらない程度しか飲まない。3杯程度のお酒で、2時間は平気で喋り続ける。それを梯子する。会う回数が少ない分、お互い話したい事は山積みになっている。大体が愚痴と同級生の近況になるのだけれど。

実家が隣なので、行く時も帰る時も喋り続ける。「夜」と呼ばれ始める18時頃から日付が変わる頃になるまで、延々とそれは続く。ガールズトークになるのかどうかは判らないけれど、Aと話していると時間はあっという間に過ぎる。お酒に酔う事もない。Aの方がお酒に強いので、強いのも飲むのだけれど、お互いずっとシラフだ。

家に着くと、案外呆気なく「じゃあ」と言って別れる。立ち話はしない。中学時代までは私がお手洗いに駆け込む寸前になるまでしていたけれど笑

彼の存在も、引っ越す事も伝えてある。ただ、Aと会う事は出来ない。それは大人の事情。でも通話は出来るので、時間を見付けてしようという話になっている。決して仲違いをした訳ではない。Aとは今でも仲良しだ。

このご時世が治まったら、乾杯といこうじゃないか。相棒。

スキと思った方、サポートをお願いいたします。活動を続けるため、生活のため、通院費などに使用させてください。