『ミッドサマー』感想 何が良かったのか、書き連ねる
鑑賞後パンフ売り切れに精神不安定状態に陥っていたものの、昨日ようやく手にして心に平穏が訪れたので、冷静に感想を書くことができます。
※映画内容、パンフ・公式サイト記載の完全解析ページの内容を含みます。
宗教・信仰をテーマにした作品に必須と思われる”ある要素”が一切存在しない件
公式サイト「完全解析ページ」記載の通り、ミッドサマーはフォークホラーというジャンルに分類される。見知らぬ田舎で我々とは価値観の異なる異教徒に怖い思いをさせられる、いわゆる伝奇モノに含まれると解釈する。
しかしこのミッドサマー、精霊信仰・異教信仰を描きながら、超常的な存在は一切登場しない。それどころか、そう勘違いさせるようなトリックや描写等の匂わせすらない。美しい楽園に散りばめられた残忍な行為は、すべてが原住民ホルガの手によって隠そうともせず行わる。
我々には信じがたい常識が蔓延るコミュニティを舞台にしながら、この作品に現実感を持たせている要素の一つがこれ。
前評判「すべてが美しい」は本当か?
本当です(結論)。みんな言ってる。これは本当。
ホラーであり、露骨に人も死ぬ。それでいてなお、全てが美しい。
思うにその要因は、必要最小限に留められた恐怖や死の描写にある。ホラー映画にありがちな「登場人物が執拗に恐れ慄き逃げ惑い、凄惨な最期を迎える」というようなシーンが一切ない。伏線発生から回収までの誘導は必要最小限。あまりにもスムーズ。
恐怖描写によるストレスを一切感じないので、歌と花であふれる美しい楽園の光景に集中できる。
ホラー映画と聞いてそういうシーンを求めるのは間違ってはいない。
しかしミッドサマーには要らない。これが正解。
感情の誘導がない
上記の通り、ミッドサマーはホラージャンルの映画でありながら、露骨に恐怖を煽られることがない。
Q.では、我々はこの映画から何を感じ取ればいいのか?
A.わかりません。
本当にわからない。世に出る作品というのは何かしらそういう誘導を意図して作られているものじゃないのか? 「あ~なんかこういうこと言っとくのが正解なんだろうな~」ってうっすら感じ取って適当に物言っとけばよかった感があった。私はそれを優しさと呼ぶことにした。
しかしミッドサマーにはそれがない。パンフにてアリ・アスター監督の語った「カタルシス」の概念もイマイチ理解できなかった。
(主人公と同じような恋愛云々の悩みを抱えている人なら共感できる部分もあったのか?)
これ、貶しているわけではない。
複雑な作りのこの作品は、過度に感情移入できないおかげで現実感が増す。私が知らないだけで、本当に世界のどこかで起こった出来事なのではないか? という感覚。
よく作り込まれた猟奇・未解決事件の再現ドラマを見ている錯覚に陥る。そういうの、好きです。
『ミッドサマー』観てよかった
美しく幻想的で残酷なのに、現実感が強すぎる。
アリ・アスター監督、ありがとう。
ディレクターズカット版の全国公開が決定したようです。
こんなん観に行くしかないやろ。
以上です。さようなら。
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