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2020年の周東選手の盗塁得点について

2020年の日本シリーズはソフトバンクが投打ともに圧倒し、4戦で決着がつくという結果になった。

千賀選手、石川選手をはじめとした先発陣や、中継ぎ陣は盤石であり、打撃でも柳田選手を筆頭に長打力を存分に発揮した。

そのソフトバンクの打撃陣でも異色の存在であったのは周東選手であろう。103試合、346打席ながら盗塁50個、失敗はわずかに6個であった。成功率は脅威の89.3%であり、さらに世界記録に並ぶ13試合連続盗塁成功は野球界を大いに賑わせた。

シーズンが終わり、今年ブレイクした選手は誰なのかという居酒屋などで交わされる野球談話では、おそらく周東選手の名前が出てきてもおかしくないのではないか

では、このずば抜けた盗塁成績を収めた周東選手はどれくらい凄かったのか、言い換えれば盗塁によってどれくらい得点を生み出したのか

そこで盗塁得点というセイバーメトリクスの指標を使って分析してみた。

盗塁得点とは、簡単に言うと盗塁によってどのくらい得点を生み出したか、もう少し細かく言うと「同じ出塁機会でリーグの平均的な走者が盗塁で稼ぐ得点」と比較して利得を計算するものである。

細かい計算式は以下の画像の通り

画像1

式の補足説明をすると、

Aは今回でいうと周東選手の盗塁と盗塁死による得点の増減を表してる。

Bはリーグの平均的な「出場機会に対する盗塁の利得」で、もう少し細かく言うとリーグ全体の盗塁によって得た得点を、リーグ全体の盗塁が可能だと思われる機会「単打や四死球での出塁」で割れば、1回あたりの出塁で望める盗塁による得点を導きだせるというものである。

Cは周東選手の今年の盗塁が可能だと思われる機会を表す。四死球から故意四球を除くとなお正確性があがるため、故意四球はBとCでも引いてある。

B×Cが表すものは、リーグの平均的な走者が周東選手と同じ出塁機会があった時、どのくらい盗塁によって得点が生じるのかを表しているのである。

盗塁得点を求める式がでたので、次は細かい数字を調べる必要があった。集計はスポーツナビさんから私自身が集計した。ただ故意四球に関しては公式発表のまとめが見当たらなかったため、360試合をチェックして申告敬遠を一つずつ数えたので漏れがある可能性がある。

集計中に敬遠気味の四球というものが13個ほどあったが、映像を見ていないのでどちらとも判断がつかないため、今回は集計からは除外してある

以下の画像が算出に必要なデータである

画像2
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補足で単打を集計した表も搭載しておく

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これらのデータを先程の式に当てはまると結果は以下のようになった

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これは周東選手が年間で盗塁によって7.27点生み出したという意味である。

去年のセパでの1位と比較すると、セ・リーグでは山田哲人選手が3.9点、パ・リーグでは金子侑司選手の3.2点であった。

このことから周東選手は去年のセパの1位に比べて約2倍得点を生み出したことがわかる。

ただ、あれだけのずば抜けた成績を収めても3〜4点しか変わらないのは少し寂しいものでもある。セイバーメトリクス的には盗塁の貢献度は低いことは前から指摘されていることである。

どうしても打撃の貢献度が野手の評価を大きく占めており、盗塁の貢献度はあらゆる指標の中でかなり低い位置に占めていることがセイバーメトリクス的には共通の認識なのである。

しかし、盗塁の貢献度が低いからといって、今年の周東選手の活躍には多くの野球ファンを虜にし、ソフトバンクの日本シリーズ4連覇に貢献した事実は消えない。


そして、以下のニュースから引用すると

>>シーズン50盗塁以上は、周東が延べ80人目。こちらにおいても、周東の成功率は極めて高い。上には、1943年の呉昌征(91.5%)、1950年の木塚忠助(90.7%)と宮崎剛(89.7%)しかいない。ここ70年(1951~2020年)では、周東がトップということになる。

と、稀に見る逸材であることは確かであろう。

今回は盗塁得点のみを扱ってみたが、進塁得点というものもあり、この二つを組み合わせると走塁得点になる。進塁得点は算出が素人には難しいため、今回は割愛させていただくが、去年のセパの1位の記録はセ・リーグでは大島洋平選手の7.4点、パ・リーグでは荻野貴司選手の7.3点であった。

盗塁についてもう一つだけ、紹介しておきたいことがある。従来、盗塁には投手にプレッシャーをかける、打者が狙い球を絞りやすくさせるといった、データに出ない貢献があるのではないかと言われてきた。ジェイムズ・クリックはいわゆる「見えない力」を最新の注意を払い、定量的に導きだした。その結果、盗塁の「見えない力」は微々たる量だったことが判明した。

これだけ定量的に盗塁の貢献度の低さを見せられても、私たちは盗塁に魅力されてしまう。機械がプレーをして、機械がプレーを見てるわけじゃなく、どちらも人間が行っていることだ。そこにはその瞬間にしかない緊張感や熱気というものがあり、それがプロ野球を面白くさせていると考えている。三振かホームランだけの野球に一体なんの面白さがあるのだろうか?

データはもちろん大事だが、こうした真に定量化が難しい部分にこそ、野球人気を保つ秘訣があると思っている。

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参考文献

・スポーツナビ

セイバーメトリクス入門 著者 蛭川浩平

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