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虚構
2021年10月21日 22:51
逃げろ、と全身が叫んでいる。逃げろ、逃亡しろ、と全身全霊で警鐘を鳴らしている。何が。これまでの人生と、記憶の全てだ。どんなに惨めになっても、この後どんな泥水を啜ることになろうとも、この場から逃げ出すべきだと、焼き切れそうな脳が叫んでいる。脂汗が吹き出している。じっとりと重い、嫌な汗だ。思考と裏腹に、吹き出す汗を拭うことすらできなかった。足が震える。動けない、なぜ。わからない。どうして、こうな