水平線➖詩

 大きな海と
 その水平線
 それらと自分の境目がわからなくなった頃
 
 少しずつ日没が近づいて
 乳白色の青に
 ゆっくりと優しい紫が混ざり合う頃
 
 僕は好きな歌を思い出していた
 
 その歌に夕間暮れが
 出てきたのかもしれない
 
 僕が無力になるのはこんなときで
 
 絶え間ない優しさと美しさに
 僕は分解されていく
 
 暗くなる前に帰ろう
 
 足元に冷たい海がかかる
 あの人ももしかしたら
 こんなことを思ったのかもしれない
 
 暗くなる前に帰ろう
 
 足元の砂がさんざめく
 あの人に話したら
 笑ってくれたのかもしれない
 
 大きな空と
 地平線
 帰路についていた
 
 もう道は暗くて
 僕もすっかり悲しくなってしまった
 
 空も海も
 あんまり変わらない
 包み込んで僕を責めることにおいては
 
 どこからか子守唄が聴こえる
 優しい母が
 この僕の元にもいたのなら
 
 そうしたら僕は
 海なんて見にこなかったかも
 しれないけど

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