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YUZUTOWNとは何なのか?その真相に迫るライブレポ ~ゆずオンラインライブ2公演を観て~

私は、年平均30公演ほどライブ参戦してる。

それは、ほぼほぼ趣味のようなものなのだが、どこか新しい刺激を求めて色んなライブを観に行っているという感覚がある。

特に、ライブの演出を観るのが私は好きだ。
例えば、好きなアーティストのアルバムが出たとき。最初の曲から最後の曲まで通して聴くのだが(今時そんな聴き方する人、どれだけいるのか...?)、聴いているとどうしてもその曲に合う演出を考えてしまう。

この音に合う照明の色は何なのだろう?
どんな映像が合うのだろう??
カメラワークはどんな感じなのか???

それを考えてたら、その答え合わせをしてみたくなった。
答え合わせをする、と言うより、アーティストが考える"その曲に合った演出"というのを目の当たりにしたくなる。そんな気持ちで、今まで色んなライブに行ってきた。その積み重ねが、年間30公演以上という数字になったのだろう。

そんな思考回路を持つきっかけがあった。
主に2つある。

1つ目は、高校時代の吹奏楽部で、定期演奏会の演出部門を担当していたこと。色んなライブや映画のDVDを観て、その知識を補っていった。

そしてもう1つ、あるアーティストのライブが関係している。
そのアーティストのライブに行くのは、私の毎年の恒例行事だ。いわば、私の中のライブワークと言っても過言ではないだろう

というか、私にとって音楽というものによりのめりこむきっかけを与えたアーティストが彼らだ。私の音楽遍歴を語るにあたり、彼らの存在を抜きにして語ることなんて間違いなくできない。そんなアーティストなのだ。

前ぶりが長くなってしまった。
毎度のことだが...

今日は、そんな私にとって大切なアーティストのライブの話をしたい。

そして、1年間待っていた"とあるライブ"の話をしたい。

ゆず、1年越しのライブの幕が開いた。

1年越しのYUZUTOWN

時は2020年3月4日にさかのぼる。

その日、15作目となるアルバム『YUZUTOWN』が発売された。

個人的な印象だが、近年のゆずは、アルバム3枚ごとにコンセプトや音楽性を変えて、新しい一歩を踏み出している印象があった。『WONDERFUL WORLD』~『2 -NI-』までの3作で、爽やかフォークからJ-Popの王道への進化を、『LAND』~『TOWA』までの3作で、音楽性だけでなくアルバムにエンターテイメント性を与えていった。

そんな過程の中で、20周年を得て発売された2018年の『BIG YELL』は、過去最大規模のコンセプトを帯びた1枚だった。作中のポップス色や方向性、このアルバムを引っ提げたアリーナツアーはアルバムの世界観を踏襲し、ゆずにしか成せないエンターテイメントが存分に詰まったライブだった。

その翌年の弾き語りドームツアーを経てからの2020年。多くの人が待ち望んだ2020年。2年ぶりのアルバムが発表され、3月末からは長野公演を皮切りにアリーナツアー「YUZU ARENA TOUR 2020 YUZUTOWN」が控えていた。

そんな中で起きたのが、今日にまで至るウイルス感染の波だった。

2020年2月末のイベント自粛要請以降、多くのライブが街から姿を消した。2021年6月現在、多くのライブが少しずつではあるが再開されているのだが、どのライブも会場の収容人数の50%以下または5,000人以下に抑えての開催となっている。

2020年2月時点で、予定されていたツアーのチケットは多くの公演で満員に近い売り上げが出ていた。その為、満員での開催を目指して、ツアーは2021年秋以降に振替公演を開催することで、調整されていた。

しかし、2021年に入っても感染終息の気配はなかった。今年の2月時点で、感染の拡大は止まらずに、2回目の緊急事態宣言が発令される状況となっていた。

これにより、2021年2月14日。
ゆずはFC限定の生配信にてアリーナツアー全公演の中止を発表。観客を入れてのライブ開催は難しいという判断を下した。

しかし、そのことと同時に、元あるはずだった「YUZUTOWN」のライブを形にしようということで、オンラインライブの開催が決定した。

それが、今回まとめる配信ライブ2公演の模様だ。

元々予定されていたアリーナツアーのセットリストを軸に再構築した初日「YUZUTOWN」、2021年現在に届けたいライブを行う2日目「ALWAYS YUZUTOWN」の2公演が、5月末から6月頭にかけて開催された。

Day-1「YUZUTOWN」の姿

ここまで少し、淡々と。
敢えて、個人的な気持ちをさらけ出さずにまとめてきたが、私自身もこのツアーの中止は相当胸に来るものがあった。

というのも、本当なら「YUZUTOWN」ツアーは計7公演の参戦を見込んでいた(広島初日、ぴあ2days、福岡初日、横アリ最終日、静岡2days)。そして、面白いのは、広島以外どの公演も一緒に行く相手がいたということ。

こういうことは、私にとってはすごく珍しい話で。普段、ひとりで参戦して、公演後に頭を回すことが常だった私にとって、一緒に行く相手がいるということは、とても新鮮な出来事だった。

特に、ぴあアリーナMMのこけら落とし公演となるはずだった4月25日は、2020年の中で最も楽しみにしていた1日のひとつでした。それは、仲良い友達4人で観に行ける日だったから。こけら落としを存分に楽しんで、帰りは桜木町あたりで飲み会してその日を締め括っていたはず。就活漬けの日々のささやかな楽しみがある。だから、この日が楽しみでしょうがなかった。

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(↑写真は2021年3月、別のライブで初めてぴあアリーナに来た時のこと、払い戻さずに残したこけら落としのチケットとともに)

そういう意味を含めれば、私はウイルスに対して中指を立てたい気持ちでいっぱいだ。というか、そうしてもやりきれない気持ちもある。会いたい人に会えないことほど、苦しいことはないのだと気付いてしまったから。だから、このライブで会いたい人と再会したかった。そんな思いが、私の中にあった。

、、、話を元に戻そう。

時は、2021年5月30日(日)。
本配信は前日の5月29日(土)に行われたのだが、私はこの日、別の配信ライブを観ていたので(その配信ライブが、アーカイブ配信が無いものだった為)、「YUZUTOWN」初日はアーカイブ配信となる日曜に参戦することとなった。

テレビの前には、ライブで使うはずだった桜色のタンバリンとイエローのツアータオルを置いて(夜遅いので、タンバリンを鳴らすのは止めにした)。

画面の中ではあるが、1年越しのライブの瞬間が訪れた。

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開演 21:00  終演 22:20

定刻21時、アルバムに収録されている「~Pinky Town~」や「~Yellow Town~」など、ゲーム音やドット絵を用いたアルバムのジャケットの映像が流れる。そして、映った会場の画面。花道の先にハンドマイクを持った北川悠仁(Vo/Gt)とギターを持ちマイクスタンドの前に立つ岩沢厚治(Vo/Gt)がいる。

そこに、ゆずがいた。

「あの日描いた夢の地図見つからなくても 
   もっと素敵な夢を君と描けばいい」

北川悠仁がハンドマイクで歌い出した1曲目は「夢の地図」。まるで、一度描けなくなった物語をもう一度描き直すような、そんなファンファーレのような1曲から、YUZUTOWN 初日の幕が開いた。

ライブの開場は、ぴあアリーナMM。予定なら、こけら落としが行われていたライブ。1年越しのリベンジがここに幕を開けた。

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1曲目が終わり、北川悠仁が「僕たちの1年間の思いが詰まったライブ、僕たちのYUZUTOWNを紹介しながら、どうか最後まで楽しんでください」と挨拶。そうして始まったのは、みなとみらいの景色が重なる「桜木町」。続く「レストラン」でじっくりと聴かせたら、この日最初のアルバム曲「まだまだ」をパフォーマンス。

アルバムの世界観は、ここから急加速する。
チャイナチックな音が流れ始めたと思ったら、そこは中華街。チャイナドレスの女の子が肉まんを持ちながら、お客さんに振舞っている。そのお客さん3人は、ライブのサポートメンバー・FIRE HORNSの3人。ホーンセクションのプレイから、アルバム序盤のナンバー「チャイナタウン」が幕を開けた。寸劇を交えながらのショーは、この曲が"YUZUTOWN"の大きな一部分であることを魅せてくれた。

トロンボーンのソロから始まったのは、商店街の景色。にぎやかな街並みの中、「公園通り」では、北川は町を訪れた観光客やファンに応じながら、岩沢はギターを弾きその場を動かずにプレイ。間奏で北川が手に取ったギターこそ、曲中にあるように「御茶ノ水まで買ったアコギ」そのものだったわけだ。

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バンドの演奏はここから重厚感を増していく。
国旗がはためく映像から始まったのは、ゆずのライブアンセム「栄光の架橋」。曲の最後には、2018年の『BIG YELL』ツアー、2019年の『ゆずのみ~拍手喝祭~』ツアーでのファンとの合唱シーンと重なる。きっと、このシーンが観れていたのかもしれない。そんなことを感じながら、ライブが中盤戦へと進んでいった。

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打楽器のアンサンブルが鳴り響く中、ステージには大きな樹が育つ。景色は壮大な自然の中へ。弾き語りアレンジからバンドアレンジに進化した「SEIMEI」に乗せて旅をしたのは、雄大な地球の自然そのものであり、希望への道そのものであったのだ。

中盤のMCで、岩沢は北川に今の気持ちを問われ「一瞬で過ぎて行ってる」と話した。「1曲やるたびに、当分やらないのではと泣いてしまう」と返した北川。1年越しというライブは、実感論としてそういう思いなのかもしれない。

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「アルバムの中から、夏が近いのでこの曲を」と話し続いたのは、北川が嵐に楽曲提供したことで知られる「夏疾風」。19年のドームツアーでは、弾き語りアレンジで披露されたこの曲だが、バンドアレンジになると嵐のバージョンとは違う灼熱の夏感、そして一瞬で過ぎ去っていく夏の刹那とやらがより際立ってくる。個人的には、このライブのテイクはベストパフォーマンスなんじゃないかと思えていて。この日の中で、個人的なベスト3に入る1曲でした。

そんな灼熱の熱さは、国境を越えインドへ。
エスニックな空気感のシンセサイザーが鳴り始め、街並みは突然アラブな空気に。タオルを上下に動かすダンサーたち、そしてクルタをまとった北川が姿を現し、アルバムの中でひと際カオスを極める「イマサラ」をドロップ。曲の中盤では岩沢によるバンドメンバーの紹介を挟むと、北川はよりバージョンアップしたインド間満載の衣装にチェンジしイスごと担がれて登場。もはや、MV同様のカオスはここに。アルバム屈指のダンスナンバー、きっと会場中に踊り狂う姿が見られたのだろうか?

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そんなカオスな空気はどこ吹く風。
突然花道先端に、タンバリンを叩き踊るパフォーマー・ゴンゾーの姿が。そこから始まる「夏色」は、今までにない始まり方で唐突すぎた。銀テープが華やかに舞い、客席にもダンサーの姿が。定番のもう一回コールでは、北川はツアー各地でやりたいことを話したのち「コロナの馬鹿野郎!!!」と叫ぶ。馬鹿野郎の本当の相手こそ、ウイルスなのだと。曲の最後に「みんな元気ですか?愛してるぞ!!」と叫んだのち、ライブの定番チューンは北川のハンドクラッカーで幕を下ろした。

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ここで花道先端に移動したゆずの2人。

北川はこの1年間を振り返り「じっとライブができるのを待ってたわけではなく、オンラインでライブをしたり、新曲を書いていました」と話し、できたばかりの新曲をここで初披露すると一言。「NATSUMONOGATARI」と題されたこの曲は、2004年にリリースされた「桜木町」のアフターストーリーを描いた1曲。北川は「過去と今、未来を思いながら作りました。横浜の地から初披露します」と話し、最新曲をパフォーマンスした。2021年のポップスの音、シティーポップや打ち込み、バンドの音が華やかにそして切なく響くこの曲は、2021年のゆずの音そのものであった。

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新曲の余韻が醒めないのち、ギターのストロークとドラムのビートが鳴り始め、ライブは最後の1曲「花咲ク街」へ。桜色の紙吹雪が舞うステージは、いつか来る”春”への祈りそのもの。

花が咲くステージの上から、北川は「僕らの街・YUZUTOWNに来ていただきありがとうございました!また来週!」と言い、80分のステージは幕を下ろした。

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元々見せたかった「YUZUTOWN」とは?

このライブ自体、恐らく実際に開催されていたとするのなら、転換やアンコール含めて2時間半くらいの演目だったはず。今回は、配信ライブとしておよそ80分の演目に再構築した形でのYUZUTOWNだった。

配信ライブということもあり、衣装の転換の時間もカットして、大きなダイジェストのように過ぎ去った初日は、YUZUTOWNの姿とは一体どういうものなのかを画面越しに覗かせてくれたライブだった。

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一体、どんなところにそんな瞬間を垣間見たのか?

それは、大きく2つの要素に分かれていたからだと言えるからだ。

1つ目は、YUZUTOWNというものが「"ゆず"を構成した街の物語である」という要点だ。例えば、序盤の桜木町がゆずにとって思い出のある今は廃止された東急東横線の桜木町駅の景色を描いた曲であることは言うまでもないのだが、続く「レストラン」が北川にとって上京してからの思い出を描いた曲であるということ、そして中盤での「公園通り」がデビュー当時の思い出を歌った曲であるということがひとつ目のカギで。

思い出というものは、自らを大きく構成するには不可欠な要素である。それは、音楽に限らずこれを読んでいる人それぞれにあることであるように思える。特に、街の景色というものがもたらす影響というものは大きいはず。例えば、友達と行った店のご飯が思い出の味になったり、初めて行った場所で観た景色が忘れられないものになったり。そして、そこで得たものがのちに自らが生きる中での経験値や糧、はたまた突き動かし続ける要素として存在し続ける。

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生きている中で、感じる景色や気持ちの変化には、そんな環境的な要因が大きく関わっている。このライブでいうのなら、成長する中での景色の変化、ギターを手に取った思い出、つまり"ゆず"というものを構成するにあたり、欠かせない思い出や1ページというものがその曲たちにはあったように思うのだ。"ゆず"を作り上げたその街の世界、それを描くということが、YUZUTOWNの大きな前提にあるように思えた。

そして、2つ目は「2020年のあるはずだった世界とリンクさせる」ことだ。典型的な例こそ、各国の旗が見えた「栄光の架橋」だろう。本当なら、2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるはずだった。きっと、祝祭なる景色が2020年を彩っていただろう。そんな中で、日本のスポーツシーンにおけるアンセムと言えるこの曲が、このツアーで鳴らされるはずだったということは、"あるはずだった"YUZUTOWNの大事なワンシーンだったはず。

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現実世界とのリンクは、ゆずの生まれ故郷・横浜の中華街が描かれた「チャイナタウン」や最新曲「NATSUMONOGATARI」にも言える話であろう。今の景色を、変化を描くということは、"現実という時間軸をその街で生きる"というものを示し切るという意味で、欠かせない要素だったはずだ。

そんなもののハイライトこそ、ライブ最後の「花咲ク街」であった。きっと、日本の四季や春を慈しむ思いで満ち溢れるはずだったこの曲は、いつかくる一人ひとりの心にある、そして時代そのものに帰ってくるはずの"春"を願う1曲であった。

思えば、アルバム『YUZUTOWN』の中で、最もその意味合いが変わってしまった曲こそ、この「花咲ク街」だったのではないかと思える。ゆずとしてみてきた春というものの思いを音に封じ込めた曲は、同じ"春"のはずなのに、違う意味... 時間軸による四季ではなく、心の中における四季に投影されてしまった。そんな2020年だった。

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ゆずとしての街物語、そして2020年という時間における街物語。それが確かな形で重なるはずだったものが、YUZUTOWNだったわけだ。

Day-1「YUZUTOWN」セットリスト

YUZU ONLINE LIVE 2021 YUZUTOWN 
2021.05.29 ぴあアリーナMM

01, 夢の地図
02, 桜木町
03, レストラン
04, まだまだ
05, チャイナタウン
06, 公園通り
07, 栄光の架橋
08, SEIMEI
09, 夏疾風
10, イマサラ
11, 夏色
12, NATSUMONOGATARI
13, 花咲ク街

Day-2「ALWAYS YUZUTOWN」はどこから...?

2021年6月5日 21:00

2日目となる「ALWAYS YUZUTOWN」の日を迎えた。

この日のライブは、もともと企画していた「YUZUTOWN」ではなく、その日から1年たった2021年に伝えたいエンターテイメントを詰め込んだ演目が、「ALWAYS YUZUTOWN」と題されて開催されたのだった。

開演 21:00  終演 22:25

定刻を過ぎ、画面の映し出されたのは、北川悠仁(Vo/Gt)がカメラの移りを気にしている様子。スマホで撮っているのだろうか、画面の位置、映りがうまくいったのだろうか、マイクスタンドの前に動いた北川の横にはすでに岩沢厚治(Vo/Gt)がギターを持って待機。

ゆずの2人がいた場所、とあるデパートの壁の前だった。

その壁にある文字を見ると、「Matsuzakaya」と書かれているではないか。

そう、ここは今は無き伊勢佐木町の松坂屋の前だったのである。

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2人がギターを弾き始めた。そのメロディは聞き覚えがあるものの、なんか歌詞がどこか違う。「今吹き抜ける春疾風...」と歌って気付く。新曲だけど、嵐に提供した楽曲「夏疾風」を春バージョンにしただけの新曲(?)の「春疾風」だったわけだ。

「せっかく松坂屋さんが現れたので、当時よくやっていたこの曲を」といい続いたのは、路上時代の定番曲「値札」。ライブで披露されるのは、相当久々なのではないか?2021年の現在、目の前に映っていたのは、1997年当時と同じような景色であった。

曲を歌い終え、北川が「本当ならここにお客さんに座っていただいてやりたいくらいなんですが」と話し、次の曲がファン投票のリクエストで決まった1曲であることを伝える。まずは、北川曲(北川悠仁作詞作曲のナンバー)から。「ぶっちぎりの1位」となったのは、2001年のアルバム『トビラ』に収録されたナンバー「幸せの扉」だった。

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「僅差でこの曲に」決まった岩沢曲(岩沢厚治作詞作曲ナンバー)は、「方程式2」に。弾き語りで続くライブ前半は、派手な装飾など何もない、シンプルながらもゆずの本質そのものを提示し続ける2人の生の姿であった。

「これは放送されてるのは何曜日ですか?」と続いた「日曜日の午後」では、出だしを間違えて2回もやり直す事態に。曲終わりに岩沢が「若いころ作った歌は疲れますね」と話すと、北川は「悲しいこと言うなよ... 日々痛感してるよ、失敗したなぁと」と話し、ファンを笑わせた。

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「ここの松坂屋さんで歌わせてもらってるとき、最初1円くらいはお客さんいなくて、帰る人たちが時々足を止めてくれたり早足で帰ったり、そんな人を見送りながら歌を歌ってました」と、北川は路上時代を振り返る。

そんな当時の思いと今を重ね、「今年はみんな家に帰っていった中で、色んな思いで帰っていたんじゃないかと思って、今は無き松坂屋さんからこの曲を最後に歌いたいと思います」と言い、2人は「GOING HOME」へと演奏を続けた。2番に入ると、バンドの演奏が重なり始めた。

カメラが引きで映し出されると、そこは先週と同様・横浜はぴあアリーナMMのアリーナ席の様子。2人は、アリーナ中央部分に作られた松坂屋前のセットを背に、前半の6曲を届けていたのだった。曲は、より重厚感を増しライブは中盤戦へと進んでいく。

"松坂屋前"から花道を通り、メインステージに移動した2人は大きな大樹が映し出される映像を背に「SEIMEI」を歌う。バンドの演奏は、壮大なアレンジを引き継ぐように「うたエール」へ続く。2人はダンサーを引き連れ、ステージを下手から上手まで動きながら、華やかなパフォーマンスがステージに鳴り響く。

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アルバム『YUZUTOWN』の楽曲が
メインとなる中盤戦。

北川は「先日は元からやろうとしてたYUZUTOWNを見せましたが、今回はこの1年間で成長した僕たちのライブを観てもらえたら」を話し、アルバムの中から岩沢厚治作詞作曲の「フラフラ」を披露。青のネオンにともされた街の姿が印象的だった。

曲が終わると街の景色は、先週と同様に中華街の模様に。店の支度をするチャイナドレスの女の子と、店で働く北川悠仁。もちろんそのナンバーは「チャイナタウン」だ。先週と同様に... いや、中華街の物語は新たな時間軸へ。再び喧嘩に巻き込まれてしまった女の子と北川は、遂に男たちに打ちのめされてしまう。そんなとき、北川の目の前に現れたのは岩沢k...のような顔立ちの仙人。彼に弟子入りし、武術を身に着けた北川は再び男たちとの決闘へ。無事に勝ち、女の子を助け出し、中華街の物語は無事幕を下ろした。

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ライブはここから終盤戦へ。

画面はどこか見たことのある"伊勢佐木町の文令堂"の前に。そこには、MIZUのジンジンとガンガンの姿が。本当なら、YUZUTOWNツアーのオープニングアクトとして全国を巡るはずだった2人は、ツアーの各地でやりたかったことを話しながら、全国でファンとの再会を誓った。

そんな全国各地の景色が織り込まれた映像とともに流れたのは「GreenGreen」。切ないメロディと各地の印象的な場所が映し出された1曲。そんな心に沁みるような思いを噛み締める間もなく、映像は再びあのエスニックでインドチックな世界観に。初日以上にカオスを極める「イマサラ」では、遂にインドの王族のような衣装を身にまとった北川にYUZUTOWNの住民たちが崇拝する事態に。そして、クライマックスには北川がワイヤーに吊らされ、フライングを披露するまでに。前曲とのコントラストは激しく、エンターテイメントはかつてないほどのカオスに満ち溢れていた。

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機械音が鳴り響くステージ上。ロボットレストランの巨大ロボットが現れた「公私混同」では、銀テープは華やかに舞い、ロボットはそれぞれ北川と岩沢を載せてステージ中を駆け回った。曲の間奏では、パフォーマーのIGが足腰のエクササイズを披露する瞬間もあった。

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「2日間やってまいりました。今回はオンラインライブとして、この街を表現しましたが、楽しんでいただけましたか?」と、画面越しから客席に問いかける北川。そんなリーダーから、重大発表が。

2019年のドームツアー以来、ゆずとしては2年ぶりとなる有観客の全国ツアーの開催が決まった。2017年のツアータイトルを付けた「YUZU TOUR 2021 謳おう」には、「こういうご時世なので『謳おう』って言っても歌えない。でも、僕らの歌を通じて心と心を響かせることができたら」と話した。

続くライブ最後の1曲は新曲「ALWAYS」。この曲に対して北川は「生活のペースが変わって、空を見ることが増えました。とても綺麗な空に出会ったとき、皆は元気でやってるかなと思いました。この思いを新曲にしてきました」と語り、どんなに遠くても思いは共にあることをこの曲で伝えた。

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そんな壮大なバラードナンバーが2日間のラストナンバーだった。バンドメンバーの紹介を終え、北川は「夏に会おう!」と一言添えて、YUZUTOWNが幕を下ろした。

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どうして”ALWAYS” YUZUTOWNだったのか

初日のライブに関して、私は上記に「ゆずを構成した街物語と2020年の現実世界の街物語のリンク」という要素をまとめた。これは、言えばYUZUTOWNというものを見るうえで見えるひとつの側面であることは事実だと思える。

これは、この日のライブにも共通していたように思える。特に、ゆずを構成したストーリーを見るには、伊勢佐木町での路上ライブの景色や当時の思いを序盤でしっかりと語っていたことには、YUZUTOWNにおける自らの過去を見せるという大きな要素を担っていたのではと思える。

この日は伊勢佐木町・松坂屋前でのシーンにライブの3分の1の時間を占めていた。これは、いつだってこの景色がゆずにとって欠かせない1ページであり、そして今を紡ぎ続ける要素として大事な要素であることを、ここでの6曲では示していたように思える。

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それに加えて重要なことがもうひとつ。

この日の"ALWAYS YUZUTOWN"を観て感じたのは、YUZUTOWNというものを構成するにあたり、どうしても欠かせないものがあったということに気付かされた。

それは、観ているファンの存在である。

この日のセットリストを振り返ると、ファンと柚子の関係性というものを提示する瞬間というものが多くあったように感じた。例えば、序盤でリクエストを募って歌う曲を決めたというシーン。アリーナツアーでファン投票で曲を決めるという機会は、相当久々なように思えたが、事実オンラインだからできた工夫がそこにはあったのではないかと思えた。

ファンの存在を意識した瞬間は他にもあった。序盤戦のラストとなった「GOING HOME」や最新曲「ALWAYS」、そして応援ソングとして話題となった「うたエール」、全国各地の映像を織り込んだ「GreenGreen」。

これらを振り返ると、どんな形であっても、音楽はゆずは常にあなたのそばにいるということを、この瞬間に描いていた、示していたのでは、と思えてくる。

いつだって、そこに音楽がある。

街物語が紡がれるように、音楽があなたの今と共にあり続ける。

ゆずの心の中にあり続ける景色、そしてファンと一緒に歌い続ける景色。

その2つを込めた言葉が、”ALWAYS”という言葉なのだろう。

今を生き続ける、ファンと一緒に歌い続ける街物語。

それが、「ALWAYS YUZUTOWN」というものだったわけだ。

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Day-2「ALWAYS YUZUTOWN」のセットリスト

YUZU ONLINE LIVE 2021 ALWAYS YUZUTOWN 
2021.06.05 ぴあアリーナMM

01, 春疾風
02, 値札
03, 幸せの扉
04, 方程式2
05, 日曜日の午後
06, GOING HOME
07, SEIMEI
08, うたエール
09, フラフラ
10, チャイナタウン
11, GreenGreen
12, イマサラ
13, 公私混同
14, ALWAYS

このライブを振り返って

前述にあったように、私自身は2020年のYUZUTOWNツアーは7公演行くはずで、そういう意味ではこの2公演は待ち望んだものであったことは確かだった。

ふと思うのは、「もし実際に開催されていたのなら、どんな曲が他に入っていたのだろう?」ということがまずはひとつ。普段のツアーが2時間半の演目になることが多い中で、1時間20分の中で完結させる2公演、特に2公演目は2021年という今の形でのパフォーマンスだったことから、結果論としてYUZUTOWNは叶ったけど、全体像がどうだったんだろうというクエスチョンはあって。

そう思ったのは、ライブ自体が2013年「GO LAND」ツアーから続いたエンターテイメントの最上級を更新したのがこの2公演だったことや、実際にこのセットを目の前にして圧倒されたかったという思いが、画面越しだから尚更に感じてしまったのも事実で。

2公演、曲のダブりを含めても27曲。

どれも濃いものだった。

だから... 最後に一つ本音を言っていいのなら、やっぱりこのツアーは生で観たかったんだな、ということをより感じたのでした。

ツアーの最後に、今年8月からのツアーの開催が発表された。夏休み期間もはさまれているから、どれか1公演でも行けりゃいいな... というのが今の思いでね。

思えば、2020年が私にとって相当久々のゆずのライブに行かない1年だったこともあったから、自分の中の大切なピースを身体が求めているというのを、今強く感じていて。

8月から9月、横浜・名古屋・大阪。

どこに行けるのだろう?

このYUZUTOWNの先にある景色は何だろう?

その証明を、この目でしてみたくなった。

そんなことを書いて、、、

そしてYUZUTOWNをより深く咀嚼しようか。

そんなことを思う、6月の1日だったのです。

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