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若葉マークのついた軽自動車の中で、僕は必死に緊張を紛らわそうとしていた。気楽に行こう、そう何度も自分に言い聞かせたが、そんな言葉はゆらゆらと揺れてすぐにどこかに消えてしまう。
おそらく、君に想いを伝えるまではこの感情に悩まされるのだろう。解けないメビウスの輪の上で踊っているようなものだ。

一旦休憩することにしよう。コンビニに車を停め、キャメル色のジャケットからタバコを取り出し火をつける。自分なら大丈夫だ、振られるわけがない。そう思いながら自信をつけるため、あたかも自分は若手俳優期待のホープ、山崎賢人だと思い込むことにし、クールに煙を吐き出した。

だめだ。緊張をほぐすことは出来ない。ふと見上げた夜空には、北斗七星がニヤニヤした表情で浮かんでいる。

だめだ。腹は括ったのに、心臓は飛び出しそうで、声帯が震えて声にはエコーがかかりそうだ。

だめだ。成功するイメージが湧かない。数時間後に笑ってピースサインを掲げてる自分が想像できない。ここまできたら何も考えずにすむ、頭の中がお花畑で楽園状態のやつが羨ましいとまで思えてきた。

だめだ。こうなれば空振りでもいい。右でも左でも運命に身を委ねよう。素直に自分の気持ちを伝えよう。もし天国に近い場所で神様が僕を見ていたら、僕に少しだけ力を貸してください。そう願わずにはいられなかった。

そろそろ行かなければ。吸っていたタバコに別れを告げ、車に乗り、ライトを暗い夜道に当て再び走り出す。君の元へはもう少しだ。