忍殺TRPGリプレイ【フライ・ミー・トゥ・ザ・ネオサイタマ】01
ドーモ、三宅つのです。これは原作小説「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッタリング・サーフィス」などをもとに、つの次元のAoS世界で起きたことをリプレイ小説化したものです。ネタバレにご注意下さい。例のアレについては隠します。長くなる場合は休憩を挟みます。
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ダークニンジャは理解していた。古文書や遺跡を調査し、ケイトーとベッピンからの謎めいた言葉を読み解いて悟った。妖刀ベッピンに数多のニンジャソウルを集め、マッポーカリプスの夜にハラキリ儀式を行う時……ヌンジャ、カツ・ワンソーは天より還り、器に宿るべし!「モハヤコレマデー!」
彼は全身を覆う甲冑を瞬時に脱ぎ捨て、神聖なるセプク・チャントを叫びながら、妖刀ベッピンを己の腹部に突き刺した!刃は肉をえぐり、臓腑を貫く!「グワ……アバーッ!」ナムアミダブツ!『契約は果たされり』妖刀から数多のニンジャソウルの力がダークニンジャに注がれ、燃焼する!
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「うおおおおお!?」ディテクティヴとポータル兄弟は、凄まじい勢いで揺れ動くキョート城底部から必死で逃げ出す!ニンジャスレイヤーがオベリスクから自力で脱出したのはいいが、これは!「おい、なんか……落ちてねえか、この城!?どこへ!?」「「グワーッ!?」」重力が3人を襲う!
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「!」本丸上層部。エーリアス、ヤモト、ナンシー、ライトウォッチャーたちは凄まじい悪寒に襲われた。何か……巨大な、人でもニンジャでもない何かが、こちらを「見た」。ハウスバーナーとポイズンバタフライもそれを感じる。以前、感じたことがある。「これは……!」「ええ。ヤバいわ」
ZANKZANKZANKZANK……最上層へ向かおうとしていた彼らの前に、不明瞭なニンジャの影が複数出現する。キンカク・テンプルより降臨したニンジャソウルの影、デミニンジャだ。「またアレが起きようとしてるってのか」ハウスバーナーは両手にサソリ・ダガーを構えた。止めなければ!
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「「アナヤ!?」」本丸、中庭。ホウリュウ・テンプルのムーホン者たちを攻めあぐねていたパーガトリーとスローハンドは、猛烈な悪寒と頭痛に悶絶した。テンプルを包囲するザイバツニンジャたちも頭を抱え、嘔吐し、悶え苦しみ始める。毒か?否!オヒガンの彼方から、何かが「見て」いる!
モータルがニンジャに出くわした時、彼らは遺伝子レベルで刻み込まれたニンジャへの恐怖と畏怖を忘却の彼方から思い出し、恐慌状態に陥る。いわゆるニンジャ・リアリティ・ショック(NRS)症状だ。ならば、強大なニンジャソウル憑依者たちに同様の症状を引き起こさせる存在とは……!
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『MWAHAHAHAHAHA!BWAHAHAHAHAHA!』
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ネオサイタマ中心部。ウシミツ・アワー。それは黒雲の大渦を伴い、蛍光緑色の01を撒き散らしながら、高さ数千メートルの上空、重金属酸性雲の上に出現した。……キョート城が。空を飛んでいた。
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西暦2035年8月中旬、夏のオールド・オーボンの夜。
重金属酸性雲の切れ間から、それはネオサイタマを睥睨した。「おい、なんだあれ!?」「城!?」「城、マ!?」「スゴイ!」「スゴイスギル!」「クール!」「ワオ……ゼン……」それに気づいた人々は歓声をあげ、携帯IRC端末を向けて撮影した。ブッダやオーディンに祈りを捧げる者たちもいる。
「なんかのCMか?」「どこの会社?」「株価を……」「あれは……キョート城のようにも見えるが?」サイバーサングラスで観察していた者が呟いた。「キョート城?」「キョート共和国の?」「マ?」IRC-SNSに無数の情報が流され、錯綜し、陰謀論や終末論がインターネットを駆け回っていく。
キョート城は旋回し、大きく震動した。鉢から抜いたボンサイをシェイクした時のように、岩盤の下部から土や岩がボロボロと落下する。KRAAASH!「「「アバーッ!」」」「「「ペケロッパ!」」」見上げていた市民が巻き込まれて即死!岩盤の下から現れたのは、数十本の銀色オベリスクだ!
ジジジジ……バチバチ!空気の焼け爆ぜる音を立てながら、オベリスクの先端部がセンコの如く赤熱し、不吉な光を放ち始める。城の真下の重金属酸性雲が激しく渦巻き、ぽっかりと穴を空けた。……キャバァーン!虹色の光線がネオサイタマに降り注ぐ!「アバーッ!」光線が市民に命中!即死!
即死市民の死体は灰色に変わり、黄金のエクトプラズムが放出され、城へ吸い上げられていく!「「「あ……アイエエエ!?」」」市民たちはパニックを起こし、蜘蛛の子を散らすように逃げ回る!否、踏みとどまってIRC端末を操作し、決定的な瞬間をIRC-SNSに投稿してバズを狙う者も多数!
キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!上空のオベリスク群から、凄まじい頻度で無作為に殺人ビームが降り注ぐ!無数の光線はコンクリートを貫通して無差別にモータルを殺し、ソウルを吸収する!「マッポーカリプスだ!」「ヤッター!」天を仰ぎ歓喜の声を捧げる終末論者たちの声!
放出される何十本ものビームは基板配線めいた鋭角パターンを空に刻む。キョート城は神々しい金色の光を放ち、暗黒の太陽の如く夜を照らし始めた。オベリスク群の周囲には「大」「法」「祝」「稲」などの巨大な漢字が現れ、ネオンめいて瞬いては消えていく。古事記に予言された終末の光景!
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「おお……ロード!マイロード!」片腕片脚を失ったパラゴンは、白大理石の制御水盤にすがりつき、歓喜の涙を流す。ギンカクから吸い上げたモータルソウルを全てロードの回復にあてたため、キョート城は現世へ降下し、ネオサイタマからモータルソウルを吸い上げ始めた。これが在るべき姿だ!
「ムフォーフォーフォー……クルシュナイ。クルシュナイ」ナラク・ニンジャは……キョジツテンカンホーの直撃を受け、ロードの足元に平蜘蛛のごとく平伏し、ドゲザしている。薄汚いモータルの怨念の集合体は、ついに真の支配者にひれ伏したのだ。これが、これこそが、格差社会の在るべき姿。
「ナラク・ニンジャ=サン。再びキョート城の燃料となるべし」血で汚れ、赤黒い炎で焦げた白いタタミがくるりと90度回転し、ナラク・ニンジャは再び奈落の底へ落下していく。「クルシュナイ」タタミはさらに回転し、もとのように収まった。ナラクが空けた穴も超自然の白いタタミが塞いでいく。
「万事解決ぞ。徳川エドワード家康の末裔なる余は、今より、この穢土なる魔都ネオサイタマを浄化し、東のキョート……東京都と改名せん」ロードは厳かに宣言した。それに呼応するかのように、地上に螺旋状の光が走る。
カスミガセキ・ジグラットは、かつての日本の支配者の住処である江戸城を覆うように建設されている。400年以上前、徳川エドワード家康は各地に点在した霊地・霊脈を繋ぐように川や道、堀や寺社を配置し、ニンジャの侵入を防ぐ霊的結界を築き上げた。それは長年の乱開発で失われたが……。
ザイバツは古文書によって、このネオサイタマに眠る霊的結界を解明し、利用する計画を立てていた。派遣した駐留部隊に命じて各地に魔術的なビーコンを仕込み、ロードのキョジツテンカンホー・ジツをネオサイタマにも及ぼさせる計画を。そして今、ロードとキョート城がここに在るからには!
『ヒカエオラー!』キョート城から、ロードのジツが解き放たれた。ジツはネオサイタマの、東京都の、江戸の霊的結界に作用し、増幅される。……その時、モータルは思い出した。ニンジャに支配されていた恐怖を。鳥籠の中に囚われていた……安寧を。市民たちは涙を流し、一斉にドゲザした。
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「ハァーッ!ハァーッ!」キョート城底部。天守閣最上階から飛び降り、ここに駆けつけたドラゴン・ニンジャは、吐き気を催すような頭痛に苛まれていた。ヌンジャ……カツ・ワンソーの凝視に晒されたのだ。「いつつ……ど、ドーモ……」衝撃で頭を打ち、気絶していた大柄な男が目を覚ました。
「ドラゴン・ユカノ=サン。ディテクティヴです」「ディプロマットです」「アンバサダーです」近くにいた双子もアイサツした。アイサツをされれば、返さねばならない。だが。……どくん。彼女の中で「ユカノ」が目を覚ました。ワンソーの凝視、キョジツテンカンホー、そしてユカノの名。
名を呼ばれたことで、眠っていた半身が自我を取り戻したのだ。しかし!「……ドーモ、ドラゴン・ニンジャです。ユカノは我が半身じゃ」彼女は「ユカノ」を抑え込んだ。ユカノの自我を守るために。「何がどうなってる。磁気嵐でIRCも通じねえし……」「この城を、止めねばならぬ」
ドラゴン・ニンジャは歯噛みした。「さもなくば、この世界は破滅じゃ」「ナムアミダブツ!どうすりゃいいんだ!ブッ壊すのか?」「ウカツに壊せばオヒガンのエネルギーが暴走し、手がつけられぬ。制御下に置かねばならぬ。そなたらの言うところの『ハッキング』を行ってな」彼女は思い出す。
彼女の記憶と自我はモザイク状、あるいはグリッチ状に混ざり合い、かつての状態には戻り得ない。キンカクへ不完全な形でアセンションし、不完全な姿でディセンションしたためだ。他にも多くの記憶をオヒガンの何処かへ封印保存している。数千年の時を生きつつ、記憶と自我を保つために。
対ヌンジャ兵器であるこの城を破壊してもならないが、現世に留め置くわけにもいかない。愚かなニンジャやモータルに再利用されてはならない。だとすれば……このままオヒガンと現世の狭間に留め置くしかない。誰か管理する者は必要だが……かくなる上は責任上、自分がやるしかないのか。
「ハッキングだと?LAN端子穴はあるのか?」「そうではない。キョート城のシステムにアクセスするには、メイブツ級の茶器が必要じゃ」江戸戦争。セキバハラ。徳川エドワード家康とトョトミ・イデヨシの決戦。燃え上がるオオサカ城。……アザイ・チャチャ。そして、キョウゴク・ドラゴン。
「茶器!ヨウヘン・テンモク茶碗!」ドラゴン・ニンジャは上を見上げた。「そうじゃ!あれを手に入れねばならぬ!行くぞ!」「「「アッハイ」」」3人は上を見上げた。その時!……何かが、上から落ちてくる。赤黒い火が。
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ゴーン……ゴーン……終末を告げ知らせる除夜の鐘めいた音が、ネオサイタマ全域に響き渡った。夜空はキョート城のさらに上空に在る黄金立方体の輝きを受けて黄色く染まり、黄金の光が真昼のように下界を照らし出した。
……フジオ・カタクラは片方の口角を吊り上げて嗤い、眼を閉じた。「イヤーッ!」彼は妖刀ベッピンを、おのれの肉体から引き抜いた!「何!?」ケイトー・ニンジャは目を剥いた。「ならぬ!ハラキリ儀式を完遂させねば契約に背くことに!」「馬鹿めが!」ダークニンジャは邪悪に嘲笑った!
「俺は、俺の運命を認めたのだ!お前の運命など知ったことか!世界の都合など知ったことか!」ゴウランガ!ダークニンジャはコトダマによる契約を欺いてのけた!「俺の運命は!カツ・ワンソー=サン!貴様に逆らい、その心臓にこの刃を突き立て、今度こそ滅ぼすことだ!俺がそう決めたぞ!」
ニンジャソウルが憑依した時のように、ダークニンジャの新陳代謝は加速し、臓腑と血液が体内へ戻っていく。その欠片は溶け合って形をなし、超自然的な黄色いニンジャローブとなり、彼の肉体を覆った。それは、まるで。『俺は、ヌンジャを殺害する者。これよりサツガイ・ニンジャと名乗ろう』
「お……おお」ケイトー・ニンジャは震え、思わず跪いた。マッポーの世にさらなる混沌をもたらすべく再臨した、新たなるあるじに。
【続く】
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