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【聖杯戦争候補作】混じり気の無い、気高い青

 新宿区、東京都庁。

「……以上の件について、報告を終わります。では……」

 都庁の一室。大きく重厚な机と立派な椅子に座るのは、眉目秀麗な男性。男性官僚の報告を聞いていたその男は、差し出された書類に判を押した。

「ご苦労。下がってよろしい」
「はい。それでは、失礼致します」
 官僚は男の放つ威圧感に冷や汗をかきつつ、お辞儀し、退室した。

 男は視線を背後の窓の外に移す。記憶はあるのに記憶にない街だ。立ち並ぶ高層ビル。青い空、白い雲。治安はまだ比較的良く、大勢の善良な市民がまっとうな生活を営んでいる。かつていた混沌の都とは随分違うが……。

「……ここもまた、混沌の都か」

 不眠症を訴える者が増加しているらしい。彼らは決まって同じ夢に魘され、錯乱し、酷い場合――死に至る。

 新種の麻薬が裏で流行。独特な匂いの香水。嗅ぐだけで極楽気分(トリップ)するので、若者の間で気軽に手渡されている。

「都内の治安は急速に悪化しつつあります。早急に対処しなければ」
「外国のテロリストによる破壊工作ではないかとの噂も。迅速に対応を」
「発電所が狙われているようです。速やかに警備体制を強化して下さい」

 男は忙しく動き回り、各方面へ連絡を取り、精力的に、超人的に働き続ける。秩序を守り、平和を護るために。その姿は見る者を惹きつけ、立ち居振る舞いは見る者を畏敬させ、彼こそ英雄だと讃えさせる。

「私は、やるべきことをやっているだけです。平和な東京を取り戻し、本来あるべき形にしなければならない。薬物犯罪撲滅!組織犯罪撲滅!テロリスト撲滅!誰もが安心して暮らせる健全な社会を!」

 わかりやすく、何度も繰り返されるフレーズ。善良な市民は拍手喝采し、マスメディアも競って彼を称賛する。官公庁も大企業群も彼と手を組んだ。犯罪被害者や遺族に対する保障は手厚くされ、犯罪に対する罰則は強化される。治安維持のため各地に監視カメラの設置が義務付けられ、身分証明証の所持と提示が義務付けられていく。管理社会の到来だ。

「実際頼もしい!」「よくやっている!」「これで安心できます!」

 しゃらん。室内に涼やかな音が響き、神々しいオーラを纏った黒髪の少年が姿を現した。平安時代の狩猟装束・狩衣に身を包み、立鳥帽子を被っている。細い目は刀のように鋭く、鋼色に輝く無慈悲な瞳は恐ろしい。

「……戻ったぞ」
「ご苦労。どうだったかね」
「主従ともども、たやすく狩って参った。安泰じゃ」
「それは重畳。私が現場に出向くのは、立場上難しいからね」

 ごろん、と生首が床に放り投げられる。褐色肌の男は眉をひそめた。

「床が汚れる。投げなくてよろしい。痕跡を残さず始末したまえ」
「然様か。失礼した」

 少年は生首を拾って投げ上げ、ふわりと袖を振るう。たちまちそれは粉微塵にされ、血液ともども袖の中に吸い込まれた。そのまま少年も姿を消す。

 褐色肌の男は、窓の外の空に浮かぶ夕月を見た。懐かしい故郷を。果たしてあそこに実在するものか。それとも幻影か。どのみちあそこへ行くことは叶うまい。この戦争が続いている限りは。彼はつぶやいた。

「てんからくだる。あまくだり」

天◇下

【クラス】
セイバー

【真名】
天之尾羽張(アメノオハバリ)@日本神話(古事記)

【属性】
秩序・中庸

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具EX

【クラス別スキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術では傷をつけられない。彼は高位の神霊である。特性により火炎を無効化する。

騎乗:EX
 「乗り物」という概念に対して発揮されるスキル。セイバー自身も動くことは可能だが、マスターに振るわれることで十全な力を発揮する。

【保有スキル】
火神殺し:A
 イザナミを焼いた火神カグツチを斬り殺した逸話によるもの。神霊特攻。神霊、亡霊、神性スキルを有するサーヴァントへの攻撃にプラス補正。特に火の属性を持つ英霊や攻撃等に対しては必殺の効果を持つ。

神性:A
 神であること。彼はイザナギに創造された神々の一柱である。

【宝具】
『稜威雄走・禊祓(イツノヲバシリ・ミソギハラエ)』
ランク:EX 種別:対神/対軍宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:100
 神剣であるセイバーそのもの。剣身から高天原を流れる天之安河(あめのやすかわ)の水をほとばしらせ、あらゆる炎を瞬時に鎮火させる。また心身の穢れを祓って浄化し、呪いを解除して安らがせる。水を刃として放ち、多数の敵を一瞬で薙ぎ払うことも可能。大地に突き立てればマグマをも冷やし固め、地震すら鎮めてしまう。

【Weapon】
 自らが武器。幅広の銅剣の姿だが神通力で飛行し、人の姿をとることもできる。手足を剣に変えて戦い、回転しながら敵を斬り刻むことも可能。

【神物背景】
 日本神話における剣の神。『古事記』に登場する。別名を伊都之尾羽張(いつのおはばり)といい、日本書紀一書では稜威雄走(いつのをばしり)神と記される。イザナギが帯びていた十拳剣(とつかのつるぎ、拳を横に十並べた長さの長剣)の神霊であり、イザナミを焼いた火神カグツチを斬り殺したことで知られる。この時、剣から火神の血が岩に滴り、三柱の岩の神々、三柱の火雷神、二柱の水の女神が生じたという。このうち火雷神の一柱(ないしその子孫)が軍神タケミカヅチである。

 イザナギが黄泉国に降りた時にも十拳剣を帯びており、黄泉醜女らに追いかけられた時は後ろ手に振り回しつつ逃げたとあるが、これも天之尾羽張かと思われる。のちイザナギは近江ないし淡路に隠棲して世を去るが、天之尾羽張は高天原に昇って天之安河の上流に隠棲し、水を逆にせき上げて道を塞いでいた。そのため彼に会う神々もいなかったが、葦原中国を平定するにあたり天津神たちが協議した時、思兼(おもいかね)神に推挙され、難路を駆け抜ける天迦久(あめのかく)神(鹿の神)が使者として遣わされた。この時彼は「我が子タケミカヅチを遣わすのがよろしい」と答えたので、果たしてタケミカヅチらが葦原中国へ派遣され、見事に平定したという。

【サーヴァントとしての願い】
 なし。マスターの願いを叶える。

【方針】
 道具としてマスターに従う。

【マスター】
アガメムノン@ニンジャスレイヤー

【Weapon・能力・技能】
『ニンジャ』
 ニンジャソウル憑依者であること。古代地中海世界で崇められた神話級アーチニンジャ「ゼウス・ニンジャ」のソウルを宿す。そのアトモスフィアは常人(モータル)を畏怖させ、NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)症状を引き起こさせる。常人が彼に立ち向かうのは、竜巻やドラゴンの前に立ちはだかるにも等しい。銃弾が急所に当たれば死ぬが、平然と避けるのでまず当たらない。カラテ(戦闘力)もジツ(術)も凄まじい。

『デン・ジツ』
 電流を自在に操るジツ(術)。雷を凝縮して武器や防具にし、周囲の電力を操って吸収しパワーアップするなど応用の幅は広い。人間の神経を流れるパルスを読み取ることで、相手の心理状態を見抜くことすら出来る。電撃の威力は非常に高く、回避や防御も困難である。

【人物背景】
 小説『ニンジャスレイヤー』第三部「不滅のニンジャソウル」に登場するニンジャ。日本政府を裏から支配する悪の秘密結社「アマクダリ・セクト」の大幹部であり、事実上の首領。身長182cm。褐色の肌、後ろへ撫で付けた白髪めいた金髪、灰色の瞳を持ち、彫像めいて眉目秀麗な男。頭脳明晰で冷静沈着、文武両道にして知略縦横の完璧超人。性格は冷酷傲慢で共感性に乏しく、他者は自分にとって都合のよい状況を作り出す手駒に過ぎない。欠点を補うため名声やカリスマ性のある人物を傀儡に据えることはする。

【ロール】
 東京都知事。普段は「シバタ・ソウジロウ(柴田宗二郎)」と名乗る。

【マスターとしての願い】
 ケオスの存在しない、予測可能でフラットな秩序の世界を作る。

【方針】
 聖杯狙い。地位とニンジャ能力を利用して情報を集め、警察機関や官公庁と連携し、マスターやサーヴァントをあぶり出して、セイバーを派遣するか戦い合わせて始末する。都内の電力系統も抑えて優先的に防衛させる。

【把握手段】
 原作。

【参戦時期】
 原作終了後。

 候補作にヒノカグツチが召喚されていたので、抑止力としてアメノオハバリが顕現した。高天原に住まうため神格としては天叢雲剣より格上だ。子殺しという忌まわしい行いも、主に振るわれるならば道具として粛々と遂行する。こいつを振るうほどのマスターとなると、てんからくだるアガメムノンとなる。最初の方は天国聖杯候補作「Disposable Heroes」のセルフオマージュだ。舞台が東京23区内なので都知事がいてもいいだろう。戦えば超強いものの忙しいため自ら戦闘は難しく、都民全員に顔を知られているためウカツなことはできないが、セイバーが充分強いので戦ってもらうとしよう。

 ところで、やはりしたらばに書き込みができない。仕方ないのでここに書いて置いておく。代理で投下できればしてくれ。だめならまあいい。どうせおれの投下した候補作が採用される可能性も低かろうし、おれの所有物としてこっちでこねくり回すことにしてもいい。

https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1648303280/

【続く】

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